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4 朝日の中で

ふっと目が覚める。

だいたい朝は寒くて目が覚めるか、くしゃみで目が覚めるかなので、ここまで穏やかな目覚めは久しぶりだった。

一瞬、ここがどこだか分からなくなる。

そして、昨日の地獄のお散歩を思い出した。

静かに舌打ちすると、上半身を上げようとして、

「っ……、いてぇ」

力を籠めた下半身に鈍い痛みが走った。

所謂筋肉痛だ。

半日も歩き続けたら、そりゃあなるだろう。

仕方なく、些か見苦しいが生まれたての子鹿のようにゆっくりと起き上がるとぺっぴり腰で立ち上がった。

「よし………いっち、にぃ、」

きしむ体をどうにか操りながら小さくジャンプを始める。

体が筋肉痛なら、無理矢理伸ばす!

そんな残念な、脳まで筋肉少年、略して脳筋少年は今、


吸血鬼の屋敷に居候していた。



こんこんとノックの音、はい、と返事をすると「お邪魔しますわ、」と、女が入ってきた。

こいつがここの主ロクシーだ。そして、

「お、は、よぅっ!!」

礼儀正しい朝の挨拶、もとい、朝1発目の暗殺だ。

「ええ、よっ、おはようございますですわ。」

すんなり躱されたが。

彼女の方に投げた銀製のナイフはがっちりと壁に刺さった。

「ちっ、避けんなよ。」

「遠慮いたしますわ。さて、朝食ですけど、食べません?」

「いいのかよ?」

「ええ、毒が入っていないことを保証しますわ。」

「俺が入れてやろうか。」

「重ね重ね遠慮いたします。私、毒のお味は好みませんの。」

「あっそ。」

さあ、行きましょうと彼女の歩く後に大人しくついて行く



訳もなく、後ろから試しに一発撃ってみた。

パン!!と大きな音がして、彼女に真っ直ぐ向かっていく。

背中を見せている彼女、タマが当たるまで後0.02秒。勝てる!


と思ったことが私にもありました。


「煩いですわ!」

と言っていて振り返る。

その時丁寧にもタマを一避け。

そのまま何の障害物にも当たることの無いタマは陶器の花瓶にあたり、ガッシャーン!と大きな音がした。


「ちっ……」

「舌打ちしましたわね。あとで花瓶直しておいてくださいませね。」

「片付けとく」

「ええ、よろしくお願いしますわ。」


すました顔で躱しやがって。

たまには怖がってみてm

「………。」

「ん、どうした。」

前を歩いていたロクシーが急に立ち止まる。

危うくぶつかりそうになった。


「おい、朝飯じゃねえのかよ。」

「………。」

「なんだ?ゴキブリか……って、お前、顔真っ青じゃねえか。」

「う……煩いですわよ。ただその……ほら……」

ロクシーは前方を指差す。

前には廊下が続く。

「廊下か?何もねえじゃねえか?」

「違いますわよ。光が」

たしかに太陽の光が窓から差し込んでいる。

この舘は窓が少ないから貴重な……って、こいつ吸血鬼じゃん。

日光浴びたら死ぬじゃん。

どうりで。

窓枠から外れつつカーテンの生地は床に落ちている。

まだ朝で太陽の位置が低いため、廊下の端まで日光が差し込んでおり、回避は難しそうだ。

「お前、日光無理だっけ。」

「ええ、苦手としてますわね。」

「じゃあ、俺が今あそこにお前を引きずり込んだらどうなる?」

「そうですね、灰になりますわ。」

「綺麗さっぱり?」

「ええ。」

「よし、やろう。」

「…………。」

俺はロクシーの腕を掴むとそこめがけて強く引いた。

さあ、一緒に太陽の下へ!!

「…ロ、ロクシーさん、力強く無いっすか。」

結果。

びくともしませんでした。

流石吸血鬼。

女と言え、人間の力ではどうにも不利だ。

だったら、

「動けないってことは……撃ち放題だな、」

腕を掴んだ方とは逆の手で、頭に銃を突きつける。

「………」

なお彼女は何も言わない。

避けようともしない。

なんだかこれは……。

こっちが一方的にいじめてる見たいじゃ無いか。

そう思うと、銃の引き金も嫌に重く感じた。

父と母を無差別に殺したこいつを断罪するには正当な一対一がいい。

そうしないと、両親に顔向けできない。

いつでも対等、平等、信頼を問い続けてきた彼らに。

「クソッ……やーめた!」

銃を懐に突っ込むと手を離してカーテンを窓枠に装着し直す。

ようやく日光が遮られてか、彼女の方から深い安堵のため息が聞こえた。

「全くよ。昨日なんか、日光の中歩いて託せに。」

「昨日の今日では体力が持ちませんの。週一回しかあなたたちの村には行けませんもの。お父様は日光なんか大丈夫でしたのに。」

思い出すように、語る。

さて、時を取り直したようにかけ声をかけると、ロクシーは再び歩き出した。

「直していただきありがとうございましたわ。」

「別に、お前のこと殺すなら、ちゃんと殺したくなっただけ。親のためにも。」

「あらあら、お父様とお母様の?ふふ、」

「何が面白い?」

口元を隠し、小さく笑うロクシー。

青ざめていた顔色はだいぶ元の(と言っても元々白いためよく分からないが、)に戻っていった。

「あなたも私も、親にしばられてますのね。と思って。」

「………。親を殺したのはお前だ。返せよ。」

「私じゃないと何度も。」

「たしかにお前だ、だって俺は見たからお前のその羽を。」

「そう……お話は食堂でいたしましょう。」

「ああ、絶対に認めさせてやる。」


日が差し込む好き間もない舘に、ほんと少し悪雲が立ちこめた。




***

まりりあです。

足が寒くて眠れない日は眠らない派の人間です。

では、また次の機会に。


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