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43 罪と思い出

罪を犯したら償う。

それはどれだけ当たり前であるか。

法というものは人を縛り、その上での平等を保障する。

一が百を縛るのも、百が一を縛るのも法である。

この上ではパワーバランスさえもあやふやで、ただ人の知性と感性と欲と善によって形作られた、偶像的なものである。


「…………。ふぅ。」

開いていた本を閉じたミツキは深くため息をついた。

なんだか、とても肩がこっている。

面チカチカするし、体調もいいとは言えない。

でも、まあ。

目の前にいるこいつよりは幾分ましだろう。

「……ぁ……う………た、たす……助け……て……」

「ほら、村長さん。こんなところで油売ってていいの?」

「だ………め………」

「んなら、仕事に戻りなよ。」

「………うぁ……」

「はぁー。」

どうにかして立ち上がろうとするラインは途中で力が抜けたように再びへたり込んだ。

ここ二日ほどこの様子である。

勿論、これで仕事が出来るわけもなく、毎朝一応顔を出す役所の書斎の上には、捌ききれないしょるいのやまができあがっていた。

それを見たら、よりやる気を無くすものだ。

そんなこんなで現実逃避兼、仕事をしろと迫ってくる部下から逃れると言う目的でこの本屋に居座っていた。

「ミツキ君………、仕事変わりにやって?」

「嫌だ。」

「大丈夫、君なら出来る。」

「仮に出来たとして仕事なんてしたくない。私は、本を読むだけのこの仕事以外しないと両親に誓ったんだ。」

「えぇ~。」

再び本に突っ伏するようよからだの力を抜く。

その様子にミツキはわざと大きくため息をついた。

「はぁ、だから無理しないほうが良いんだよ。ほんとは心配なんでしょ、ミヤちゃんのことが、だってねえ。」

「…………外の法律では、完璧な国家反逆罪だ。死刑が当たり前。いくら代表者の中に外の法律に明るい人がいないとはいえ、どう切り抜けたものか。」

「……まあねぇ。壁の外のロボット操ってこの村の住民殺そうとしてたし。言い逃れは出来ないよね。」

「「はぁ………。」」

思い空気が一体を満たす。

出来れば改心しているわけだから認めてあげたいが、過去に起こした事件は無くすことが出来ない。

裁判とは飽くまで過去を判断するものなのだ。

これからのことを視野に入れるとは言え、頭の固い奴らばかりにどこまで通用するか。

「…………しゃあない。いっちょやるか。」

「何を?」

「ん?先代の司書がやってた技。」

「なにそれ?」

「必殺だよ。」

「つまり?」

「つまり………」



窓から日いる明かりの下、白い肌が青白く見えた。

実際青白い。

やつれているようにも思える。

こんこんと扉が叩かれる音がして、ミヤは振り返った。

「姉さん。今日もか。」

「おはようございます、フィロック。いい朝ね。」

「そろそろ寝ろよ。一睡もしてないんだろ。」

「いいのよ。寝なくて。死んだら沢山寝れるでしょ?」

「……なんだよそれ。」

まるで今から死んで当たり前のように言う。

いまもこうして、何をするでもなく、ただイスに座っているばかりだ。

「……何か。本読みたかったら持ってくるぞ?」

「結構です。字を読むのはもう沢山です。ニンニク臭いですし。」

「ニンニクは俺のせいだ。」

「ふふ。」

笑った顔もぎこちなくて、元気が無いのか、今更前を向くことを無意味に思っているのか、完全に把握は出来ないけど、そんな感じであろうと思う。

反省から、だろう。

彼女の本質は悪ではないのだ。

魔が差した、と言うには些か無責任だが、憎しみは人を変えるのだろうか?

「なんかあったら、言ってくれ、姉さん。」

「……そうですね、ちょっとお話しをしても?」

「話?」

「ええ、昔の話。」

「昔。」


語られたのは思い出だった。


「あっ、ねえ、ミサヤお姉ちゃん!サヨリお姉ちゃん!赤ちゃん笑ったよ!」

小さいベットの上でもモソモソと動く小さな弟の可愛らしさに、少女はキャッキャと笑った。

呼ばれた姉二人は、その二人の可愛らしさに、思わず、うっ、とつまる。

ヤバい。可愛い。

二人は、互いにうなずき合った。

「そうですねぇ。ミヤお姉さんのことが大好きなんですよぉ。」

「優しく頭でも撫でてあげなよぉ~。蛇の赤ちゃん可愛がるみたいに。」

「ミサヤお姉さん。蛇は今関係ないですょぉ。」

「ん?」

ミサヤの首筋から蛇が顔を出す。

ひっ、とサヨリは悲鳴を上げた。

「赤ちゃん。私のこと好きなの?」

こそっと聞く声が耳にくすぐったいのか、手を振り回してうー、と唸る。

それを肯定に取ったのか、ミヤは嬉しそうに目を輝かせた。

「やったあ!私も赤ちゃんだぁ~いすき。」

子供用のベッドの柵を握りしめ、少しでも赤ちゃんに近づこうと身を乗り出すミヤ、しかし、その身長はまだまだ小さくて、柵に頭がぶつかっている。

ミサヤは、くっ、と笑うと、妹の脇の下を手を入れて、その小さな体を持ち上げた。

「ほら、よく見える?」

「うん。」

「ミサヤ姉さん。大丈夫ですか?」

心配そうな面様で尋ねてきたサヨリにミヤ達を見たままに返答する。

「ん?まあね。私はほらお姉ちゃんだから。。」

「私と一歳しか変わりません。」

「それでも姉は姉だよ。下の子は、すべからず可愛い。」

「……そうですか。そうですね。」

話していたミサヤをミヤが見上げる。

くいっと袖を引っ張ると、どうした?と言う落ち着いた声が帰ってきた。

「今夜、ここで寝たらだめ?」

「………まあ、いいか。」

「いいの?」

「うん。明日からは、私達遊んであげられないし、今夜は皆でここで寝るか。」

「ミサヤお姉ちゃんとサヨリお姉ちゃんも?!」

「うん。いやか?」

「うっれしい~!」

よかったね!と赤ちゃんに話し掛ける妹にふっと笑みを浮かべた。




***

こんにちは。まりりあです。

今回は題名の通り二部構成となっています。

過去の話はここで終わりですが、また、書けたらいいな。

いつかフルバージョンで。

過去の話は楽しいんですよ。書くのが。

ミサヤ、サオリの過去編もいつか…!

ラインは……どうでしょう。あんまりかんがえてなかった。

でもまあ、やる気があれば。

それでは、またの機会に。

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