表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
44/49

41 私的な

「この………馬鹿ども!!」

「うわ、ミツキ、おこるな!」

「本が汚れる!!汚い!風呂に入れぇ!!」

そう言ってタオルを此方に投げつけてきた。


ミツキの本屋さんに集まった面々は、戦いで血と泥に汚れた二人

と、血をはった蛇がからだに巻き付き、その道筋どおりに泥が付く一人、それに両膝が汚れたものが一人と、散々だった。

そのからだで、近くの本に触ろうものなら、本が飛んでくる。

本を投げるくせにそう言うか。

「ったく、女二人、あんたら先風呂に入りな。」

「はぁ?この女と一緒に入れと?嫌ですわ。」

「私も、出来れば御免被りたい。」

「あ“?なんか言った?」

「「ひっ……」」

「あー、二人とも、素直に入ってきたほうが良いよ。ミツキ怖いから。」

口答えする二人を睨み付けるミツキ、

その眼光の鋭さに二人は揃って悲鳴を上げた。

いつもは大人しくて、ほんと睡眠をこよなく愛するこの子が、そんな顔をするとは、恐ろしいものだ。

人には、絶対に触れられたくない琴線があると言うが、今自分たちはそれに擦っているらしい。

見かねたフィロックが二人に助言する。

それすら気に入らないようにミツキはフィロックにも冷たい声を飛ばした。

「おい、フィロック。お前後で天上からぶら下がり健康器の刑な。」

「……ちなみに、どれくらいの時間?」

「三時間。」

「三時間!?」

飛んだ飛び火だ!と、嘆くフィロックのかたを、ぽん、とラインが叩いた。


「んで、何でうちに連れてきたのよ。」

「ここなら、話せると思って。」

「他当たりなさいよ。」

お風呂に行ったのを見届け、ついでにお茶を持ってミツキは店の方に戻ってきた。

適当に座る場所を確保して(お掃除大作戦のおかげで、イスが何脚か設置できていた。)いたフィロックとラインにカップを渡す。

本題を切り出すのは、今がいいような気がした。

「私に、言いたいことでも?」

「うん。と言うより、相談だね。」

「へえ。」

「この村の知識に相談だ。乗ってくれるかい?」

「この店を受け継いできた先代は、それも生業としていた。私の知識でどうにか出来ることなら、力はかすよ。」

「ああ、じつはなぁ………。」

いつになく真剣な顔のラインとミツキにフィロックはつばを飲み込んだ。


ところ変わってお風呂場では、

「ちょっと、もっと詰めてくださいませ。」

「これ以上は無理です。貴方の方が体小さいのだから、我慢してください。」

「痛い痛い、翼に当たってますの。」

「邪魔です。その羽締まってください。」

「翼ですの!貴方のと違ってこれは収納不可能ですの。」

「使い勝手が悪い。」

「はあ“?」

二人は言い争いながらも、ぎゅうぎゅうと湯船に浸かっていた。

互いに誰かと風呂に入るのなんて初めてで、同性なのに少し恥ずかしくて目線を泳がせている。 

温泉や共同浴場はあるものの、この二人には無縁の場所だった。

「だいたい、私がどなたかと入浴をともにするなど……」

「それはこっちの台詞です。」

ツンツンと雰囲気を尖らせながら言い合う。

先ほどのように掴みかかって喧嘩はしないが、今にも始まりそうな雰囲気ではある。

ふと、ミヤがあることに気付く。

何か、視界が白いような………

「って、ロクシー嬢、背中!」

「ん?あ、ああ。流水の副作用ですわ。お気になさらず。」

「気にしますよ。大丈夫なんですか?」

「何時ものことですわ。」

そう。吸血鬼であるロクシーにとって流水は毒。

入浴をするのは、お湯であり、水、と言うわけではないが、例えば肌に付いたお湯が外気で冷えて流れれば、それは間違いなく水なわけであって。

入浴とは、自分の弱点の一つを直接教えるような行為なのである

だからこそ、絶対に誰かと一緒になんて入りたくなかったのに。

焼け爛れるように傷む肌を他人に見せたくはなかったのだ。

「へぇ……。」

「ちっ……あがりましょ。」


二人が風呂にいる間、粗方概要を聞いたミツキはふぅ、と息をついた。

疲れたように顔をしかめて頭をかく。

「んで、ラインはどうするつもりなの。」

「出来れば、無事であって欲しい。これからも、今までのように、とはいかないが。」

「今回は何も被害はなかったが、これは問題だよ。村長さま。とりあえず、フィロックの言うように外の奴らが止まるなら、三人にどうにかしてもらって、問題はミヤの扱いでしょ。」

「そうなんだよ。」

ふむ……と悩み込む二人をフィロックは不思議そうに見つめた。

その視線に気付き、ミツキがくびをかしげる。

「どうしたの、フィロック。」

「あ、いや……」

フィロックはいいずらそうに一呼吸置いた。

そして満を持したように聞く。

「さっきから気になってたんだけど、二人とも外の世界について驚かないな。………もしかして…」

「「うん。知ってた。」」

「あ……やっぱり?」

フィロックとて、そんな気はしていたのである。

ただ。

「うん……教えてよ。」

「いや、だって教えたらねぇ。」

「うん。困ってるフィロック見るのが楽しいんだもん!」

「………はい。」

そうでした。此奴らそう言う奴らでした。




***

こんにちは。まりりあです。

皆さん。ロクシーが吸血鬼だって忘れてませんか?

自分は、忘れかけてました。あっぶねぇ……

ストーリーをどうにかしようと思うあまり、キャラクターが疎かになってはいけませんね。

気をつけたいと思います。

それでは、またの機会に。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ