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40 過去の乗り越え方

キラリと閃いたそれがいったいなんなのか、俺は分からなかった。

嫌な予感がぞわりと背中を駆け上がり、叫んでいた。

「だめだ!!」

「………もう、遅い……」

振り下ろされた手を止めたのは、俺でも、ロクシーでもなかった。

俺では速度が遅すぎて、ロクシーは一切関与してこなかったから。

では、誰が止めたのか。

その本人を見て、ミヤも思わす目を見開いていた。


「な………何で……?」

「不思議に思うかい?そうだろうね。僕も、なぜここに来ているのか。」

「と、父さん………」

「やあ。娘よ。随分と、暴れ回ったみたいだね。ロクシー嬢とフィロックに迷惑かけたらだめじゃないか。」

村長。いや、ここではミヤの今の父親。

ラインだった。

片手にハードカバーの本を持ち、所々しわの付いたスーツでたっている。

ここに似つかわしくない緊張感のなさは、彼の作り上げられた演技の一部で、今まで血で血を洗う戦いと何人もの人生を変える事件が起きていたとは思えないほどだった。

「村長、娘のリードはちゃんと握っておきなさい。」

「ロクシー嬢、お言葉だね。でも、僕は子供は伸び伸びと育てる主義なんだ。」

「それで、問題でも起こしたらどうする気?」

「こうして、責任を取りに来た。」

不躾で感じの悪いロクシーの言葉に、これも父親の仕事だから、とラインは笑う。

村長としても父親としても、なんとも頼りなさげに見えるラインだが、ここに居る三人は知っている。

彼の瞳の奥に灯るたしかな光を。決意と誠意を持った大人な彼の一面を。

この男は、出来る奴だ。

責任を取りたがらない責任者たちと違い、彼は自分の意見を持ち、それを反映させ、失敗したら償いはする。

どこまでも平等と公正を尊ぶ奴だった。

だから。

「…………。」

ロクシーは何も言えなかった。


「さて、ミヤ。残念ながら、父親として君を叱責しなくてはいけないみたいだ。」

「……父さん………」

ラインは背後から握り込まれたミヤの手をそっと解いて、その手に握られた凶器を、銀に光るナイフを投げ捨てた。

あっ……と小さく呟く。

その様子を、ラインは無表情で見ていた。

「まず、聞こうか。何を、する気だった?」

「………死のうと…」

「そうかい……。じゃあ、何で死のうと?」

「私は……親を殺したから。人の命を奪ったら、命を持って償うべきでしょ。」

「それは、君の意見かい?」

「はい。」

「そうか。」

うんうん、とラインは頷く。

そして腕を握る方とは逆の手で、ミヤの頭をそっと撫でた。

「偉い。よく考えられてるね。」

「……っ、子供扱いしないでください。私は子供じゃない。貴方の本当の子供じゃないんです。」

嫌そうにその手を振り払うミヤ。

ラインはえ~。と、残念そうな声出した。

「僕は、君のお父さんだよ?」

「違う。血のつながりだってないんだし。」

「それでも、君の父さんだ。えっへん。」

「くどい。」

のらりくらりした受け答えにイライラしたのか、ミヤがラインを押す。デスクワークが主で、もう若くないのにラインの体は意外とがっしりしている。

そのおかげか、倒れることはおろか、よろめきもしなかった。

「人殺しの親なんかに、なりたくないでしょ?」

「おや、僕はそんなこといっていないよ。」

「それは……そうだけど。」

ふぅ…と、息を吐く。

困ったような優しさのこもった笑みでミヤの顔が見えるように前に出てしゃがみ込むライン。

膝が汚れることも気にせず、俯いたミヤの目を覗き込む。

「君にそう言われると、僕はとても悲しいな。」

「………。」

「僕は、死ぬまで君の親でいようと決めた。でも、最後に僕を親たらしめてくれたのは、君だよ。ミヤ。」

「は?」

「いいかい。よく僕の言うことを聞きなさい。」

優しげな笑みをそのままに、声に緊張というか、真面目な音が混ざる。

「人は、なりたくて親になれるわけじゃない。なりたくてもなれないこともある。何かはが一つでも足りなかったら、親にはなれないんだよ。何か分かるかい?」

ラインの問いかけにミヤは、そっと頭を振る。

しかられていることが分かるからか、しおらしく大人しい彼女は、いつもより幾分も子供に見えた。

「分からないか。いい、親はね。子供に親にしてもらってるんだよ。」

「……、まあ。」

「分かるね。僕が村民から村長に任命されたように、ロクシー嬢が先代から村の守り役を継ぐ役を任されたように、君は僕を親として任命してくれたんだ。だから僕は、君がいらないというその日まで。親としてすべての責任を取り、使命を遂行する。それが親にしてくれた君へのお返しだ。」

親の心子知らず。

なんて、上手く言ったものだ。

いつもおしゃべりのラインも、ミヤに心の内を漏らすことはなかったのか、初めて聞く継父の思いに言葉を出せずに居た。

「君は、僕をクビに出来るんだ。それを止めようとはしない。でも、僕も心ある人として、寂しい……かな。」

変わらない笑顔の中の寂しさに、ミヤの頬に暖かいしずくが流れる。

なんのための涙か、誰にも分からなかった。




***

こんにちは。まりりあです。

うん、ラインさん。いい人。人の親になったことはないですが、書くキャラクター達にはそれなりの愛着を持っていますので、幸せになって欲しいなぁ~。と思うわけです。

まあ、これからどうなるかなんて私の思い次第なんですが。

親と子が仲睦まじくあること。

大切なことと、自分は思うわけです。

皆さんも、家族を大切に!

んでは、またの機会に。

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