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35 血に濡れた天使

「……my mother……has…killed…me……」

暗い森の中で溢した歌声は、誰の耳にも届くこと無く、ただ、静寂に溶けていく。

「my…father…is……eating me♪」

いつ歌ってもよく分からない歌だ。

でも……

「mybrothers…and……sisters…sit…under…thetable,ふっ……pickup…bury……えっと……あと何だったかしら。」

この不思議な音程と歌詞がなぜか好きだ。


私自身。

父と母に殺され、食われたようなものだから?

自分たちの実験のためのモルモットにされたから?

こんな歌に同感できるのは、やっぱりおかしいだろうか?


「pickup bury them under the cold marble Stonesですわ。マザーグースとは、いい趣味してますわね。」


背後から声がして、ゆっくりと振り返った。

声を聞いて、誰だか分かったから。

と言うか、気配は分かっていた。


「ロクシー嬢。後をつけるのははしたないですよ。」

「貴方に言われたくないわ。」

「ふふっ……どういうことですか?」

「自分の両親殺して、血肉啜ったようなつまみ食い娘に言われる筋合いは無い。と、そう言ったのですわ。」

「あらあら、相変わらず私と貴方とでは、馬が合いそうにありませんね。」

「あら、同感ですわ。奇遇ね。」

「ええ。」 


気が合いますね。と、互いに笑みを交わす。

こんなにも冷たい空間を久しぶりに感じた。

姉を怒らせたとき依頼だ。

肌がピリピリと痛む。

この感覚は、長くは感じていたくない。


「村長の娘さんなら分かるはずですわよ。ここは立ち入り禁止区域。人が安易に立ち入ってはいけませんの。」

「あらいやだ。私がルールを破るとでも?そんなわけ無いでは無いですか?」

「では、貴方はなぜここに?」

「そんなの……」


仕事時に着ていたスーツの上着を脱ぐ。

スーツを着崩すのは本意では無いが、仕方がない。

そうでもしないと、破れてしまう。

私の体に埋め込まれた、特別版の私だけの武器に引き裂かれて。


「私が、もう、人ではないからです。それなら、問題ありませんよね?」


肩甲骨の間。背中から、白い羽が飛び足す。

これが私の武器。

戦場で多くの敵兵をいたぶり、父と母の血を吸った、私の唯一信じられるもの。


「そうですわね。それならたしかに問題ありませんわ。」

「では、見逃してくださいますか?」

「いいえ。それだと貴方は私の村の民ではない。ということになりますわ。つまり、攻撃対象です。」

「あら、貴方は本当にこの村が好きなのですね。その一途さには脱帽です。」

「ありがとう。」


ガシャッ と大きな音をたてて、ミヤの背中の羽が広がる。

ロクシーの翼もゆっくりと開かれた。

白い羽を携えた少女と、

黒い翼を携えた少女が対峙する。

暗い森の中で、ギラギラと光る目が、恐怖を煽った。


「お手柔らかに、夜の女王様。」

「さて。どうしましょうか?」


振りかぶった打開の拳が交差した。



「へえ……綺麗になったね。」

「でしょ。フィロックたちのおかげ。店の片付けなんて一人じゃ絶対しないし。」

「よかったじゃないか。」

「おかげで夜中呼吸が出来なくなって跳び起きることが無くなったよ。」

「そんなことが起きていたなら、もう少し早く掃除しなよ。」

あははは、と笑い声が、せまいくうかんにこだまする。

年の差が一回りあるはずのミツキとラインは、それでも仲良しだった。

と言うか、気の合う同類って感じだ。

「でぇ、どうしたのさ。」

「いや、ロクシー嬢とミヤが戦かってるから。」

「そうなの?見てきたの?」

「うん。」

「よく帰って来れたねぇ~。私だったら絶対死んでるから。」

「正直。死ぬかと思ったね。」

二人とも手元にあった本の表紙を叩いて、笑う。

ミツキに至っては笑い転げていた。

笑い事では無いような気がするが。

「しかし、ラインさぁ、村民を殺そうとしている女を娘にするとは、よくやるよね。」

「え~。だって可愛かったんだもん。こっちには隠してるつもり取ろうけど、もうバレバレ。そんなところも可愛い。」

「あんたは変態だねぇ。」

「よく言われる。」

立ち番年齢も違うのに二人はよく気があっていた。

同じようによく回る頭を持っていたからか、

同じように面白いものに貪欲だったからか。

少なくとも互いが相手のことを面白いと思っているから、よくつるんでいた。

「いや、でもさ。これ下手したらあんた村長クビよ?」

「うん。まあでも、もういいかなって。長いことしてきたしね。」

「誰に引き継ぐつもり?」

「君。」

「冗談。」

「そんなこと無いよ。君なら立派に出来ると思う。」

口では言うが二人とも面白そうに笑っているところ、本気ではないのだろう。

「私はねぇ。この店から出たくないんだよ。」

「知ってる。まあ、君には次代のもお世話になるよ。この店はこの村の知識だから。」

「はいはい。お世話しますよ~。本を大切にする奴にしてね。」

「さて、どうだろうか。」

紅茶を啜る。

もう、とっくに冷めてしまったそれを一気に飲むと、ラインは立ち上がった。

よれたジャケットの襟を直す。

手元の本を一つ手に取ると、立ち上がった。

「仕事の時間だ。これ、借りてくよ。」

「いいよ。それ、二十七ページ目と、四十三ページ目が破れそうだから気をつけて。」

「ああ。」



***

こんにちは。まりりあです。昨日は暖かくて、桜が咲いていました!花見に行っていたら、足が痛くなって、今日は一日寝転がっていようと思います。

最初にミヤさんがうたってた曲ありますよね。

あれ、英語だから大変だったんですよ?

英語怖い。歌詞も怖いので日本語訳を調べてみてくださいね。

それでは、またの機会に。

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