番外編 図書館のお掃除大作戦 前編
注 此方の番外編は、本筋のストーリーには全く関係なく、いわばアナザーストーリー的な奴なので、見たくなかったら見なくて大丈夫です。
しばし、作者の創作欲を抑えるため、お付き合いください。
「本日興しの皆々様におかれましては~、お忙しいところご足労いただき~、誠に~誠に~」
「長い!早くやるぞ。」
「ねえ、フィロック。なぜ吸血鬼の私が昼間っから他人の家のお掃除なんか。」
「私、仕事があるのですが、珍しく真面目な父に言われてきてみれば、どういうことですか?」
薄暗い部屋の中で四人は様々なたいどでいた。
一人はそこから立ち上がろうともせず頭を下げ。
一人はさあやろうと両手に雑巾を持ち。
一人は黒いフードを頭まで被り。
一人は腕の時計を見てイライラしていて。
「早速やるぞ。とりあえず、ここにある本全部外に出すぞ。ロクシー、お前はここに居ろ。ミツキ大っきな布あるか?ミヤ、お前は、床に散らばった本重ねて台車に乗せる。」
テキパキと指示を出しながら、自分はすでにどこかから持ってきた台車を押し、その上に床に散らばった本を次々と乗せていく。
「風呂敷、風呂敷って、フィロック~、本外に出したら紙焼けちゃうよぉ……。」
「なぜわたしがこんなこと。」
「まあ、この私が雑用などするはずもありませんものね。ほらほら、村長娘、頑張りなさいよ。」
「ロクシー嬢、喧嘩うってます?」
女三人寄ったら姦しい(かしましい)だったか。
たしかに、そうだと思った。
よくこんな埃だらけのところで話せるなって位、饒舌に言い合いをしていた。
ロクシー、ミヤ、止めろ。
「フィロック~。風呂敷あったぁ~。」
「おう。じゃあ、それ引いてこい。いや、一緒に行って本並べるの手伝え。」
「分かったぁ~。って、だから、紙がぁ」
「ちょっとは、風通さないと虫が湧く。日陰にならベるから気にするな。」
「うん。」
「……並べ終わったら見張りとしてそこで寝てていいから。」
「フィロック君。それを先に言いなさい。さっ、やりますよぉ!」
何か、腑に落ちないと行った顔をしていたので、此方が折れると、意気揚々とし始めた。
それでいいのか、図書館司書。
「ちょっと、その子だけずる休みですの?」
「お前今ずる休みしてるだろ。」
「私はしてません。」
「お前は、会社ずる休みしてるだろ。」
文句を並べてきた二人も適当にありらったらすんなり言うこと聞いた。
ちょろいな。
そこからは、とにかく本を積んで運んで並べての繰り返し。
ミヤは仕事早いし、ロクシーも日が当たらないように注意しながら手伝ってくれたし、三十分くらいですべての本を出し切れた。
「よし。こんなもんか。」
「いやぁ~。意外と沢山あったねぇ、この店。」
「当たり前です。ここは村立図書館いわば村の頭脳。」
「うちの方が多いですわ。つまり、うちは、この村一個よりも頭が良いと。」
「…………モグラが何か話してますね。」
「誰がモグラですの?」
おねがいだから喧嘩しないでくれ。
ほんとに。
終わったから早速ミツキは寝始めるし、一人でこの二人に挟まれるの苦痛なんですけど。
嫌なんですけど。
「喧嘩するな。ほら、次は掃き掃除」
この店は、8畳くらいのスペースに本棚が所狭しと並べられ、出入り口から一直線に店番兼司書であるミツキがいつも座っている半畳くらいの大きさの台が置いてある。
台の表面にクッションが敷かれ、ミツキはそこに座っている。
足が痛くないかって?
実際あいつは足を伸ばして座っている。
『半畳+読んでそこに置きっぱなしにしている本が作った台』分の大きさがあれば小柄な彼女なら足を伸ばして座れる。
そしてそのまま本に埋もれているわけだが、
閑話休題
そのスペースを掃く。
まず叩きで本棚の上の埃を落とす。
「フィロック、けほっ、目に入りましたわ。変わりなさい。」
「でもお前背低くて届かないだろ。」
「背が足りないなら飛べばいいですわ。」
「あらあら、小さい体で一所懸命にお浮きになって。可愛らしい。」
「あんたは黙って雑巾がけしてなさい。」
………。お願いだから喧嘩しないでください。
雑巾は俺がやるんで勘弁してください。
1時間ほど経った頃か。
二人もかなり集中して、無駄に話すことも無くなっていた。
ぱたぱたと叩きで本棚を叩いていたロクシーがあるモノに気付く。
「ねえ、この箱何かしら。」
「ん?なんだ?」
「そんなモノ。あったかしら。」
本を運んでいるときは誰も気付かなかった。
「ああ、それね。先代のものだよ。」
眠りから覚めたミツキが入ってくる。
綺麗にはかれふかれた室内を見て、感嘆の声を上げている。
「すっごい!久しぶりにこんな部屋見た。そうそう、その先代の時代は綺麗だったらしい。優しそうなおばあさんで、私が引き継ぐ十年も前に亡くなってて、私は知らないけど、ロクシーちゃんは知らない?」
「………さあ。どうだったか。」
「まあ、とにかくね。そのおばあさんってのが、凄い人でさ、手記とか残ってるから、後で読む?一応貴重書類として奥の棚になるけど。その箱も、開けない方がいいよ。何が起こるか」
「あっ、すまん。開けちゃった。」
「そっかぁ、開けちゃったか。この前は開けたこそ泥が三日後に全身傷だらけで出てきたけど、あんたらなら大丈夫か。あははは!」
「はい?え、ちょっとまっ………」
そこまでしか聞こえなかった。
そこにあった三人の姿が忽然と消えていたから。
ぱさっと床に堕ちる本。
ハードカバーの厚い本は何もなかったように、いや、ページが1枚折れていた。
「あーー、またページが折れた。ま、いっか。」
ミツキは本を拾うと、んー、とのびをして、本を台の上に置いた。
「日が暮れる前に本戻さないと。母さんと父さん呼ぼ~。」
たった、と、店の奥に入っていった。
***
こんにちは。まりりあです。
じつは書きたかった番外編。ここで書けて幸せです。
ミツキちゃんの持つ本と、消えた三人にはどんな関係が?
次回も読んでね~!
じゃーんけん ぽん!
あはははは!