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30 決断の意義。

たまにはと思いノックしても、相変わらず返事は返ってこない。

店主が生きているのかいないのかさえ分からないこの店では、最早誰もノックなどしない。

でも、万引きなどは起こらない。

なぜかって?

さて、ではやって見せよう。

俺はそっと店内に忍び込むと、一冊の本を持ってそのまま来た道を戻った。扉に手を掛けた途端。


ダンッ!!


と、大きな音が鳴る。

これが、万引きがない理由である。

「やあ、フィロック。万引きとはいい度胸ね。貸し出しとは言え、きちんと手続きをふんでもらわなくては。」

「ああ、ミツキ。相変わらずのいい腕前で。」

「私は手元は狂わせない。」

はい。

説明いたしましょう。

俺の扉を開けた左手の小指の二センチ左に銀のナイフ。

こ、怖い。

「ミツキ。俺だって分かってんなら、投げるなよ。」

「フィロックだったから投げたの。一緒に練習したでしょ。」

「ちっ。」

とりあえず。本を元の場所に返す。

これでやっと話が出来る。こうでもしないと彼女はおきないからな。

「今夜、ここで飲むぞ。」

「いいけどさぁ。本汚さないでよ。」

「元々埃被ってんだから、同じだろ。」

「……そう思うなら掃除しにきてよぉ。」

「おまえがやれよ。」

「え~。わたしぃ、お掃除とかできなぁい。ていうかまた立てなくなったから助けて。」

「いや、ほんと尊敬するよ。よく生きてんな。」

「えへへ~。それほどでも。」

頭を擦りながら笑うミツキ。

褒めてない。けなしてる。

そんなけなしでさえ、こいつには通じない。

全く、面白くない奴だ。

「ったく。」

とりあえず、座っている台の上から本を何冊かどかしてやる。

スカートの上、足の上に乗っていた本をどかすと、空いている本棚や、積み重なった本の上にのっけた。

「これでいいか?」

「おお~。久しぶり、我が足。」

「俺、ずっとお前のこと馬鹿だと思う。」

ガキじゃあるまいし。読書に夢中になって本に埋もれるとか、ないだろ。

昔から、どこか危なっかしくて目の離せない奴だと思ってたが、年々そうなってないか。

「ごめんねぇ。村の他の女の子達みたいに、うまく出来なくて。」

「…………別に。」

これでも負い目は感じているもんだから、強く責められない。

これも個性だと言えば、それまでだ。

少なくともこの村唯一の図書館の司書という仕事は十分以上にこなしているわけだから、文句は言えない。

「今度、ここ掃除するか。」

「え~。うん。」

あからさまに面倒くさそうな顔したなこいつ。

しかし、やると言ったらやる。

俺にも譲れないものはある。

と言うかこいつ喘息とかないのか、埃やばいぞ。

「こんなとこにいたら病気になる。」

「ん~。毎日慣らしてるから平気。」

「そんなもんか?」

「そんなものだよぉ。」

まあ、それならそれでいいのだが。

いいのか?

「で、フィロック。なんで飲み会なんか。」

「ん。まあな。決断の意義ってやつかな。」

「決断?………まぁ、いいか。」

「おう。」

こいつは頭が良いから、深く追求はしてこない。

そのほうが良いって分かってるから。

だから此方も話がしやすい。

「で、夕方までどうするの?」

「ここにいる。本なにかおすすめは?」

「………西の森の近くのおばさんの書いたデドールの日記の新刊が入ったよ。」

「あれ、前回どうなって終わった?」

「んっと、『ナメクジ塩掛けたサンドイッチ』って言う商品が大ヒットして、デドールがお金持ちになったところまで。」

「あっそう。」

渡された本を暫く読む。読書なんて久しぶりだし。何より、昔暮らしたこの家の空気が久しぶりだった。



「やぁ!フィロック来たよ。」

「お邪魔します。」

2人が来たのは日も暮れかけたころ。

本が三分の二ほど読み終わっていた。

タキミの猫がゾウに乗って町の中を徘徊する三週間の記念すべき十六日目、ピンクの靴下パイ事件の最中だった。

「ちよっとまて、今いいところだ。」

「ええ~?早く終わらせてきたのに。」

「父さん。読書を邪魔するのはいけません。支度をして待っていましょう。ミツキさん。お台所お借りしても?」

「いいよぉ~。部屋の奥からはいって廊下の右ねぇ。おかあさんいるとおもうから。」

「はい。」

ラインも上着を脱いで畳むと、本をどかして座った。

よくなれたものだ。と感心しながらも、本の続きに没頭する。

「ミツキちゃん。あいつ本とか読むの?」

「たまに。フィロックは意外と活字好きだよ。」

「ふーん。」

「でも、デドールの日記って割と癖強いから、好んで読む奴はあんまりいない。」

「ああ、役所で問題になった奴。精神異常者が現れたんだよね。」

「だろうね。書いてるおばさん狂ってるもん。」

「やっぱり。」

うん。相変わらずこの本は面白い。

ぜひこのデドールの飼っている耳が四つ魚のヒレと鳥のくちばしが付いた蛍光イエローのウサギに会ってみた。


「ふぅ…、」

「お、読み終わった?飲む?」

一区切りついつところで本を閉じると、ラインが待っていましたというようにコップを持った。

「いや、先に話すことがある。」

え~、と、言って、コップをミヤに返す。

なんだかんだ、聞く気はあるみたいだ。

「分かってるだろ。何話したいか。」

「………分かんないって、言っておこうか?」

「くえないな。」

「僕、女の子しか食べなi……」

「おい、じじい、ここで死ぬか?」

「え、待って、ミヤちゃん。何で目がまじなの?ちょ、その包丁どこから?」

……こいつ。嫌な女だと思っていたけど、本性あらいな。

ここの女ってのは、皆こうなのか?

チラとミツキを見る。

「フィロックなんか失礼なこと考えた?」

「いや。お前も分かってるだろ。ないが言いたいのか。」

「さぁーて、わかんにゃーい。」

「はいはい。」

全く、俺にちょっかい掛けてくるのは、頭良いけど可笑しい奴と、吸血鬼くらいしかいないのか?

つくづく自分の引き寄せる縁が嫌になる。

「はぁ、まあいい。お前等にいっておくべきだと思ってな。俺は、このままここでおわるきはない。」

「だろうね。さて、どっちに進むの?」

「俺は…俺の両親が作った悪夢を俺が壊す。」

「…………。ふぅん。で?」

「お前等にも協力してもらう。まずは、外の世界についてだ。」



***

こんにちはぁ。まりりあです。

最近アニメが面白い!

ところど皆さん気になっているでしょうデドールの日記について。

まあ、この話が終わった後にでも番外編でお話ししますよ。

蛍光イエローのウサギ……

誤字脱字ありましたら教えてください。

では、またの機会に。

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