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27 昔(前編)

注、思い切り第三者視点で行きます。

  最初の場所は森の外の世界の町です。


口の周りにミルクを溢した赤ちゃんが、大きな声で泣いていた。

そんな声も、周りの騒音に掻き消され、誰も見向きはしない。

両親以外は、

「よーしよし、ダレン。どうしたの?」

「眠いのか?そろそろ帰るか?」

「ええ。でも、うちの方がうるさいでしょ。」

「………たしかになぁ。」

父親は困ったように頭をかいて笑った。

母親も赤ちゃんを抱き上げ、ゆっくり左右に揺らしながら、クスクス笑う。

温和な雰囲気に赤ちゃんも少しずつ泣き止んできた。

「ほんとにお前の抱っこの技術は凄いなぁ。今度調べてみるか?」

「あら、今度は擬母ロボットでも作るの?育児をしてくれるのは助かるけど、こうやってスキンシップでアタッチメントを形成することこそ、育児の必要性じゃない?」

「……違いないね。」

何というか、凄い会話だった。

それもそのはず。この夫婦は今この国を大いに潤している戦争で大活躍した戦闘用ロボットの生みの親。

つまり、この国において最も技術力、知識、権威のあるロボット技術者の2人なのである。

この母親に至っては陣痛が来るまで地面に座り込んで油にまみれて機械いじりしていたのだというのだから、驚きだ。

まさに機械オタクというこの2人から生まれたこの子、ダレンは、可笑しなことにロボットのお兄ちゃんという(着手したのはロボットが先、生まれたのはダレンが先という微妙な関係ではあるが。)ことになる。

驚きだ。

さて、戦争も終わり、この国において、これ以上急いで戦時用ロボットの開発を行わなくて良くなった2人は、結婚した頃から一度もない家族らしい時間を設け、こうして町に出たり、二人して台所に立ったり家事をしたりと、まあ楽しんでいた。

しかし、国的には、この2人には休まず研究に没頭して欲しいらしく、うるさ~いおっさんやお姉さんを送り込んでははよ作れとけんか腰に入ってくるもんだから、いっちょグーパンで伸びさせてきたと、こう言うわけであった。

2人曰く、

「もう研究なんてやってらんなーい!この子と彼女のことで俺の頭はいっぱいさ!」

「あんな油にまみれた生活の何所が良かったのかしらね。今はこの子と旦那のため、一日も早くちゃんとした妻に母にならなくちゃ。」

ということだ。

天才気質というか、集中したら倒れるまでやるが、一度集中力が切れたら見向きもしなくなる。という性格の2人を作業場につなぎ止めるのは大変で、出来たとして「時代は美少女ロボットだぁ!」「いいえ、猫型ロボットよ!」などとよく分からんことをし出すし、赤ちゃんは泣くしで、国から派遣された人々の多くが嫌になって帰って来るという。

この3人が住む家は国の職員の中で密かに「堕落の家」とよぼれている。

どんなに真面目な者でも2人もとい3人のあの性格に当てられ、仕事にも関わらず放り出してくるというまさに堕落してしまうのであった。

さて、長々と話したがつまりこの夫婦はとんでもないくせ者だった。

そんなものたちに声をかける者はおらず、気付いても「あ、博士達よ。」と小声で話してじっと見つめてくるくらいだった。

「こんにちは。」

「こ……こんにちはぁ」

そこに命知らずにもなは仕掛けてきたのは、背中に羽の生えた日傘を差した親子だった。

がたいのいいお父さんに隠れるように小さな少女がそっと覗き込む。

彼等には面識があった。

「これは、吸血伯爵殿。ついに実験対象に名乗り出てくれるのですか?」

「……それは、遠慮したい。そちらは、相変わらずのようで。」

苦笑いを浮かべた吸血鬼に、父親は胸を張る。

「相変わらず、うちの妻と息子は可愛い!」

「ああ、うちの娘もな。」

2人は互いに近くにいた愛しの家族を強く抱きしめる。

抱きしめられた方もこそばゆそうに喜んだ。

つまり、ここにいる者のすべてが、その家族を愛してやまない者達だったのだ。

平和だねぇ。

「さて、町に出てきたのは久しぶりでして、最近どうですか?」

「ええ、そうですね。最近だと………」

父親同士が話している間、母は小さな吸血鬼に自分の抱く赤ちゃんを見せていた。

「ほら、可愛いでしょ。この子がダレンよ。」

「か、可愛い。赤ちゃんは可愛いねぇ。お母さんも可愛いからきっと似たんだね。」

「あらやだ、おべっか使うのお上手ね。ありがとう、ロクシーちゃん。あ、抱いてみる?」

「い、良いの?」

恐る恐る差し出された両手にそっと赤ちゃんを乗せる。

意外な重さに驚きながらも、幼い子供特有の高い体温を感じ、ロクシーは顔をほころばせた。

「赤ちゃんって温かいね。」

「そうよね。まさか、冷たい無機物しか触ってこなかったこの手で、抱くことになるとは思わなかったわ。」

「私も……」

この世には多くの女がいるが、また彼女らのように普通の女としての幸せを掴みがたい者もいるわけだ。

数多くの生き物が存在し、そのすべてが違う生き方をすれば、例外もいるわけだ。




***

あい!こんにちは。まりりあです。

後編に続くぅ!(眠い)

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