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23 殺したら死ぬ生き物です

今日一つ、罠を仕掛けた。

扉が開いたらナイフが飛んでいく。

足下の野性動物用の罠がある。

それらにはまったところで源の弾丸で撃ち抜いてやろうと思っていた。


結論を言おう。

失敗した。


「くっそ、なんでだよ。お前どう見ても油断してるのに。」

「おらあら、何所をどう見たら油断してますの?私ほど慎重な女はあまりいないと思いますわ。」

「慎重な女はクッキーで火傷したりしない。」

「う、うるさいですわ!!すぐ治りますもの問題ないのです。」


焼きたてのクッキーを急いで掴もうとして火傷するとか、今時子供でもしない失敗。

わりと彼女はそう言ったうっかりミスを頻繁にしでかす。

壁、柱にぶつかるのは日常茶飯事だ。

まあ、それで傷付くのはだいたい壁や柱の方だが。

しかし、そんなおっちょこちょいなので、意外と簡単な罠の方が良いのでは、と、考えて作っているのだが今も昔も俺の罠にロクシーが掴まる、傷付くどころか擦ることさえなかった。

俺は机に突っ伏してうだうだと文句を言う。

差し出された紅茶のカップを低い位置から見上げた。


「お前さぁ、たまには当たれよ。気づいているなら自ら当たりに行くくらいの余裕見せてくださいよ、天下の吸血鬼さまぁ」

もうこの際その方が楽だった。

ある人は言った

 『魚は、自ら捕まりに来るのだ。自分たちの数を調節し、生態系を守るために……』

それは素晴らしいことだ。

是非、そうしていただきたい。

と言うか、そろそろやる気も失せてくる。


「フィロック。貴方馬鹿になりましたの?そんなことするわけないでしょ。痛いですもの。」

「痛くてもすぐ治るだろ。」

「私だって生き物ですわ。化け物と思われがちですけど、殺されたら死んでしまいます。まだ、死ぬわけには生きませんもの。」

森の中で見たロクシーの赤い血を思い出した。

館に帰ってきたら、もう擦り傷切り傷は治っており、腹部の損傷くらいなものになっていた。

死かしたしかにあれは、『殺したら死ぬ生き物である』と言う証明にはなっていた。

吸血鬼であって不老不死でない。

そういうことだ。


こうなったらと、次の作戦を考える。

下手な鉄砲数打ちゃ当たる。やってやってやりまくるしか馬鹿な俺にはないのだ。

両親の敵でもなくなった彼女にまだ攻撃し続けるのは、何となく悔しいからと、これが無くなると俺がここにいる理由が無くなってしまう気がしたから。

そのために動かない頭をフル回転させた。


まあ、無理なんですが。


10分後、机の上に思考が停止した俺の頭があった。

ふっしゅぅと煙が上がりそうなほど暖まった頭はズキズキと痛み始めてさえいた。

そんな俺を眺めながらロクシーは優雅にお茶を飲んでいた。

………。

悔しい。

こいつに驚いた顔をさせてやりたい。

出来るのか?

弱気な考えも抱えながら、俺は上目でロクシーを睨んだ。

ロクシーも視線に気付いたのか、チラとこちらを見ると、

鼻で笑った。


「何が面白い!!」

「いえ、分かりやすく行き詰まってますわね。愉快ですわ。」

「趣味悪いなぁ。俺の周りの女どもはこんなんばっかかよ。」

「まあ失礼。折角助言してあげようと思いましたのに。」

「……………。何?」


がばっと上体を起こした。

敵に塩を送るならぬ敵から塩を送られるだが、プライドとかそう言うの抜きにしてそれは有り難い。

プライドで吸血鬼が殺せるかよぉ!!

今すぐその首に抱きついて早く教えろぉ~!!と言いたいくらいだ。

爛爛と目を輝かせた俺にニヤニヤと笑ったロクシー。

面白そうに見ている。

利害が一致したようだ。


「そもそも私がなぜ貴方の罠に気づけると思いますの?」

「………。感性?」

「まあ、それもありますけど、それだけだとしたら私は不様に壁にぶつかりませんわ。」

「それはお前が馬鹿だかr………ってぇ!…」


頭を叩かれた。しかもグーで。

ロクシーは、ふん!と鼻息をはく。


「黙って聞きなさい。わざわざ口を挟むから話が進まないのです。」

「だからって叩かなくても………わかった、分かったからそんな目でこっちを見るな。」


ゴミを見る目……。と言ったら良いか、とりあえず大人しく口を閉じることにした。


「続けますわよ。私は敵意や不安を感じ取るのです。たとえば貴方の仕掛けた罠からは少なからず敵意を感じますだから、分かるし、避けられるのですわ。」

「敵意だぁ?んなもの分かるもんか?」

「分かるものには分かるのです。壁とか柱って敵意ないでしょ。だからよく分かんないのですわ。」

「そりぁ、お前がぶつかりに言ってるだけ……って、おい。拳を握るな。どうしたんだよ今日。イライラして貧血か?」


少ししゃれを言っただけでいつも以上に怒ってくるロクシー。

よく見ればいつも白い肌が、今日はより青白く見えた。

ピクッ、と肩をふるわせると、ロクシーは頭を抱えた。


「ええ、おかげさまで二日経っても貧血ですわ。血の滴る肉が食べたい……」

「うへ………俺の前で食事するなよ。」


血の滴る生き物の腕を少女が嬉々としてむさぼる映像を考えてみてくれ。

何となく気持ち悪いだろう?

まあ、そう言うのが好きな奴もいるだろうが、少なくとも俺はそうでは無かった。

肉はじっくり焼いてくれ。


「ああもう!貴方と話すと話がぜんぜんすすみませんわ。とにかく、敵意のない攻撃を仕掛ければ私も分かりませんの。」

「ばぁか、お前。敵意のない攻撃なんてあるかよ!」

「ありますわ!少なくとも私の母はそれを使いこなしましたもの。」

「はあ?お前の母親ぁ?」

「ええ。父が村の女性にデレデレしたときなどはやっておりました。」

「お前の両親も変だな。………まあ、俺のほんとの両親なんてどこにいるかも分かんないけどな。」

「あら、私知ってますわよ。」


…。

……。

…………。


はぁ?



***

こんにちは。まりりあです。

久しぶりに体を動かしたら体が痛い。特に親指が!

皆さんは急に体を動かすときは準備運動しっかりしたほうが良いですよ。

そして誤字脱字ありましたら、お知らせください。

それではまたの機会に。

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