21 真実はすでに
「見たなら分かるでしょう。貴方の親は、たしかに死んでいましたでしょう。いや、私がいつか、殺したのですが、」
「なぜ、うちの親だけあそこに寝ているんだ。他の敵は森の中に捨ててくるくせに。」
「それは……」
言い辛そうに口籠もる。
手持ち無沙汰にティーカップを爪ではじいた。
カンッ、と、音が鳴る。
言わなきゃ駄目?という感じで見つめてくるが、断固として譲る気は此方もない。
謎は謎のままに、寝た子は起こすなと言う考えは、一番納得できないものだった。
はぁ、と、ため息をつくと、観念したようにポツポツ語り出した。
「そもそも、貴方が問題なんです。あの時は、私も両親を失ったばかりで動揺していましたが、まさか、仕事にまで振り回されるとは思いませんでした。」
「俺?俺の何が問題だったんだ。」
「そうですわねぇ。存在が。ですかね。」
「……はぁ?」
「私がお父様から仕事を引き継いで、唯一の失敗ですもの。」
「……まじか……。」
ほんとは、俺も殺されるところだったのか。
シュンとした俺に何かを感じたのかあわあわと言いつくろう。
「あ、あ。別に貴方がいけない存在だったわけじゃないのですよ。どちらかというと貴方は……そう、巻き込まれたって感じですの。貴方も被害者ですの!」
「巻き込まれた?」
「ええ、おそらく知らないと思いますが、その……」
困ったように腕を組む。
いいずらそうにもぞもぞしながら小声で呟いた。
「貴方の……父親、母親と思っているあの人達も私の敵でしたので。と言うか、アレは人ではなかった。」
…………。
薄々、感づいては居た。
地下の死体を見たとき、おかしいとは思った。
どれだけ保存状態が良くても、死んでからもう十余年。
ロクシーの魔法的な何かかとも思ったが……。
「じゃあ、俺の親は何だったんだ?」
「アレは……残骸ですよ。かつての。」
「残骸?」
「ええ。アレは作り出されたモノです。少々難しい話になりますよ。」
口を開いたロクシーの話は、俺を驚愕させるに充分だった。
と言うか、始めて聞いたことが多すぎて、おおよそ信じられるモノでは無かった。
曰く、
この村の外にはもっと大きな世界が広がっている。らしい。
かつての大国の一部。
吸血鬼による自治が認められた範囲。
これがこの村らしい。
その大国は隣国との戦争の際、大きな人的損害を被ったらしい。
それから戦争に消極的になった人々のために作られたのがアレ等らしい。
ただ、人を殺すためだけに作られた機械。
其れも何だか怖いそうな話だ。
「ちょっと待て、じゃあなんでお前と戦ってるんだ?お前、まさか、外の国といざこざでも。」
「まさか。いくら人間が驕った生き物でも私は怒って引き裂いたりしませんもの。アレ等は今、暴走状態ですのよ。もう少し話を続けましょう。あれは、左隣の大帝国との戦いが終わった頃ですわ。」
いつも通り機械によって大勝をもたらされたこの国は戦時の軍需経済で経済が芳醇であったその時は、この村を出て、ロクシーも市場に商売をしていたらしい。
それは、ただの事故であった。
人を殺すように設定された機械による殺人であったのだから、ある意味必然であった。
そして、ロクシーにとって始めて目の前で人が殺された瞬間であった。
機械の中にだけ存在するネットワーク。
それによってうたわれた情報。
困ったことにそれらの主とした食事は戦場なら何所にでもあるモノ。
死体だった。
機械に与えられた命令は、二つ。
敵を殺して死体を持ってくること。この時、必要に応じて捕食は許す。
自国の人々は捕食対象でないこと。
誰が何を考えてこんな命令にしたか分かんないが、こうなることを見越して考えた馬鹿いるのかも知れない。
つまるところ、死体ならどうしてもいいと。
そんな屁理屈にもにた正論を掲げて。
死体はモノなのか人なのか。
ここは考えようだろう。
しかし、機械からしたら呼吸をしなくなり、喋らなくなった物体は、やはりモノでしかないのだろう。
自分たちは食事もするし動きもするのにモノとして扱われているのだから。
そんな正論がまかり通るはずもないのだが、押し通せたのは一重に彼らが強かったからだろう。
反対意見を言う奴らを片っ端から潰していったからだろう。
そして、人々が殺されていく中でそれを肯定する者はいないわけで。
「今。外に人なんかいないのです。他の国はいざ知らず、この国の人々は粗方殺されてしまったから。そして最後に残った人間。国王を殺したのは我が父と母でした。」
カップを置いた。
外の世界。
機械。
ああ、眠いなぁ。
***
こんにちは。まりりあです。
眠いですねぇ。
お昼寝しだしたら二時間くらい寝ちゃうんですよね。
ぬくぬく炬燵で。
誤字脱字ありましたら、お知らせください。
それではまたの機会に。