19 助け。
続きです
「ロクシー!!」
叫んだ俺は、彼女の背後まで迫っていた男の頭を思い切り蹴る。
顔から倒れたそいつは、とりあえず気絶しているみたいだった。
周りに暇だ敵がいる。
いつ襲ってくるかも分からなかった。
「……フィロック、なぜここにいるのですか。」
「うるせえ。お前を追ってきたんだよ。まだ、お前には聞かなきゃいけないことも吐かせなきゃいけないこともあるからな。」
「あら、怖い………くっ……」
軽口を叩きながらも、ロクシーは傷口に手を当てて顔をしかめる。
吸血鬼の回復力で治ってきてはいるものの、まだまだ、完治にはほど遠い。
どうする……
俺では、あいつらとは戦えない。
見た目、ただの人だが、ロクシーがここまで苦戦しているところを見るとおおよそただの人ではないことが安易に想像できた。
妖怪か……。
怪物か……。
どちらも、物語の中の空想上のものだが、そうだとしか思えなかった。
それ位、異常なことなのだ。
「ロクシー、此奴らは何なんだよ。」
「…………、私の部屋、見ませんでしたの。」
「見た、見たけど、分かんねぇよ。」
「そうですの。まあ、分からないのであれば、そのまま分からずにいたほうが幸せですわ。」
「はぁ?なんだよそれ。」
こんな時まで一々癪に障ることを言ってくる。
俺を守ろうとしてるのか、無知のままでいさせようとしているのか。分からないが。
どうやら今は、すべてを話すつもりはないらしい。
「ちっ………、」
俺は、馬鹿で力もなくて、弱い人間だけど。
どうやらプライドだけは人一倍あるみたいだ。
やれることも、期待されてることもないけれど、何かやろうとしている。
俺は、非力な人間でいてはいけないんだ。
咄嗟に着ていた服を脱ぐと、破って帯状にした。
ロクシーは何をしだしたのかと顔をしかめながらこちらを見ている。
「ロクシー、傷見せろ。とりあえず止血だ。」
服なんて余り持ってないから、ロクシーの服から比べれば汚いお粗末な服ではあるが、止血帯として位は使えるだろう。
「止血……ですの?」
「ああ、血が流れっぱなしだろ。」
失血状態なのか、ぼんやりしている。
それでも近付いていく此方に警戒してか、俺が一歩進む度に少し後ろに引いている。
当たり前だ、俺の背後にいるあいつらと同じように、彼女からしたら俺も敵の1人であるのだ。
「大丈夫だ、傷付ける気は無い。」
「そんな小動物をあやすように言わないでくださいまし。地下室も見たのでしょう。あなたの父と母にも会えたでしょう。」
「ああ、でも、違った。あいつらは父と母の皮を被ったナニかだ。」
「でしたら、私が戦っているこれらもまたあなたの言うナニかですわ。怖くは、ありませんの。」
「怖いとか、怖くないとか、そういう問題じゃないだろ。」
「…………、さて、私には分かりませんわ。」
ロクシーは近くにあった敵の残骸を手に取ると、それを杖のようにして体を起こす。
力が入らないのか、暫く棒に体を預けていたが、やがてすっと立つと、棒を投げ捨てた。
「ロクシー……。お前、そんな怪我で。」
「血なんてもう止まりました。ちょっぴり、油断いたしましたわ。これだから、敵は侮ってはいけないのですね………けほっ、ごほっ……」
弱々しい笑みを浮かべ、悪態をつく彼女は、咳き込んだかと思うと地面に真っ赤な血を吐いた。
俺の前に飛び散ったそれを、居れば呆然と見ていた。
これは……誰の血だ。
そうだ、俺が化け物だと行っていたものの血だ。
毎日毎日飽きもせずに追いかけ回して、結局か擦り傷も付けられなかった吸血鬼の血だ。
何だ………こいつの血も赤い。
父や母、俺と同じように。
「ロクシー、俺は、お前を殺したかった。」
「ふん。この程度では死にませんわ。しかし、て他会派また今度にしてくれません?今は、手一杯ですの。」
右手で口元の血を拭いながら、少女は笑った。
左手は、鋭く光る爪が見えた。
これで戦ってきたのだろう。俺には動物なのか人なのか分からないあいつらと。
「ロクシー、帰ってきたら、全部教えろ。」
「…………、え~。嫌ですわぁ~。」
「はぁ?!」
「ふふっ、お前は一生無知でいれば良いのですわぁ。」
涼やかな笑い声とともに一瞬で姿が見えなくなる。
敵もそれに気付いたのか、一気に無防備になった俺の方に、一斉にとびかかってきた。
「うぇ…………!!」
怖い。
そう思ったら、体が動かなかった。
見た目は人間なのに、違う。
目が口が顔全体が、死んでいる。
「あはっ!やっぱり、貴方がおとりになると、敵の動きが読めていいですわぁ。」
「おま、はなっからそのつもりかよ。ほんとに性格悪いな!!」
「うるさいですわ!恋と戦争はすべてのことが正当化されるのです!!」
「今のこの状況恋に例えると、お前、彼氏を人質にしてるからな!!」
べらべらと喋りながらも、そこら中にたつ木を遣って、一体、また一体と敵を倒していく。
頭がら流れた血も、腕や足の傷も、ボロボロに切り裂かれたドレスも、すべてを酷使して痛めて、それでも止まれなくて。
ここは戦場。
かつての大戦を知らない者達を守るための戦場。
私はここのてった1人の主役で、たった1人の正義だ!
「あっははは!!さあおいで、何人でも弱者は弱者ですわねぇ!」
「はっ、彼奴はやっぱり化け物だったか、」
敵の砲口が聞こえる。
守るべき者の声がする。
此奴らに恩はない。
ただ守りたいから守るだけ。父と母の守った者を守るため。
そして、私の大切な仲間達を守るため。
もう一つ、深く息を吸った。
***
はい。こんにちは。まりりあです。
う~ん。出来れば九時や十時暗いに投稿したいのですが、最近、余り筆が進まない。1話につき400字詰め6枚づつくらい書いてるのですが、難しいですね。
ところで、破ったフィロックの服が使われてないね。優しく巻いてあげろよ!!
さて、誤字脱字ありましたら、お知らせください。
では、またの機会に。
続きます。