表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
2/49

1出会いから

この村は、代々吸血鬼と呼ばれる妖怪が治めていた。

そのことは悪いことでは無い。

皆の考えるような血みどろの恐怖政治はもう随分と昔の話で、ここ最近はその強さを人のために遣う心優しい、と言うか、人間の存在意義をある程度認めた者が長となっている。

そのおかげで野良妖怪による事件は起こらず、野獣や悪い人間はその吸血鬼が退治してくれた。

村人は吸血鬼に信頼をおき、吸血鬼もなんだかんだ村人を愛していた。

この村は、平和そのものだった………



「っ、信じらんねえ。」

昼間のお店で1人ブツブツと小言を言っている男がいた。

彼はフィロック。村人の1人だ。

「おいおい、また吸血鬼様の悪口かい。やめとくれよ。」

苦笑いしながら店の店主は料理を運んでくる。

美味しそうに湯気を立てる料理はこの村の民族料理で、どれも見慣れているものだった。

「だってよう、吸血鬼だぜ?それも俺の両親を殺した奴だ。そんな奴を信用できるかよ。」

運ばれてきた料理の一つ。芋の子の塩ゆでをつまみながらフィロックはぼやく。

「またそんなこと言ってる。彼女がそんなことするわけ無いだろ。だいたい彼女の母親ももと人間だぞ。父親だって強力な吸血鬼だったが、人間も人下のだった奥さんのことも愛してくれていたじゃねえか。」

「それは……だけどよ、」

木製のスプーンを行儀悪く咥えたままで、不満そうな顔をする。

彼だって分かっているのだ。

たしかに今の当主の両親は人間にも友好的で、自身も積極的にいちなどに来ては、困っていることなどを村人から親身に聞いていた。

だが、そんな姿を見てもなお、彼には憎しみの対象にしか思えなかった。

「分かったろ。そんなことするわけ無いんだよ。仮にそうだとしても、一体どうするんだよ。言っとくけど、1人で倒せるとか思っちゃいけないぜ、幼い見た目でも吸血鬼、この村の十三代目守護者だからな。」

「分かってるよ。」

自分でもいやなほど分かっていた。

彼女ははっきり言って強い。

熊や狼なんかが村人にきがいをあたえそうだとはんだんしたら、1人で狩って帰ってくる。

しかも一晩で。

肩に倒した獲物をかけ、「ただいま。」と言って帰ってくる。

そうなりゃその日の晩はパーティーだ。

料理の腕もなかなかで、固い肉も柔らかく焼き上げて、臭みも無い絶品料理を作り出した。

男衆はそれで酒盛りし、

女衆は世間話に花を咲かせる。

それがこの村の恒例行事だ。

彼女に挑みでもしたら、今日のメインディッシュは自分になるだろう。

そうなることは、なんとしてでも避けたかった。

「分かってるけど……やっぱり殺してやりたい!!」

勢いよく叫んだときだった。

外から幼げな声が聞こえてきた。

「あらあら、これは物騒ですね。何かありましたの?」

微妙に上から目線の忌々しい声。

聞くだけで誰だか分かった。

「こりゃ丁度良い。ロクシー・セル・アコップ様じゃないか。」

「ロクシーでいいですわ。こんにちは、どこかの誰かさん。」

「俺の名前はフィロックだ。」

日傘の下ですら艶やかに光る金の髪。

あの日の月光の下よりも明るく輝いていた。

「こりゃあ、ロクシーのお嬢様、いらっしゃい。日中出てて大丈夫なのか?」

「こんにちは、コーヒー、一杯もらえるかしら。」

カランカランと鈴の音を慣らして店内に入ってきた。

準備をしているおじさんを横目に、こちらへ近づいてくる。

「村の中で私の悪口とは、フィロックは面白い男ですわ。」

「あ?俺の両親殺したこと、忘れてるとは言わせねえぞ。」

俺の言葉を聞くと、ロクシーは束の間ポカーンとしたとぼけた顔になった。

そして、堰を切ったように笑い出した。

「あははは、なにを、くくっ、言い出すかと思えば、あはははは、私は今まで、この手を人の血で汚したことは無いですわ、ふふふふっっ、あははもう駄目……」

先刻の深窓のお姫様っぷりから一転、お腹を抱えて笑い転げていた。

「うるせぇ、お前はたしかに俺の両親を殺したんだ!!」

だん、と机を叩き大声で叫んでしまう。

すると、彼女はピタッと笑いを止めた。

「欵、さっきの言い方には語弊がありますね。詳しくは……魔物や人殺しの血、以外で汚したことはない。ですわね。」

冷たい瞳と不敵な笑顔に戻った彼女の前で、俺は言葉を発せずにいた。


そこへ、店主がコーヒーを運んでくる。

「はい。またせたね。これ、おまけのクッキー。家の娘が作ったんだよ。」

「あら、美味しそう。家にも作りに来て欲しいくらいですわね。」

だろ、と自慢げに胸を張る店主と美味しそうにクッキーをかじるロクシーを俺は黙ってみていた。

「……ちょっと、なにを茫洋となさってるのかしら。そんなことでは、私を殺すのは夢のまた夢ですわよ。」

「うるせぇ、俺に掛かればお前なんて。」

「あら、あなたごときに私を殺せるとお思いで。笑止。何世紀もの夜を生きてきた私を殺すなんて戯れ言良く言えたものですわね。」

「お前が何歳だろうと関係ねぇ、絶対俺が殺してやる。」

「一度ならず二度までも。いい度胸です。気に入りましたわ。あなた、どこに住んでいらっしゃるの?」

ロクシーの質問にうっ……と小さく唸った。

啖呵を切ったから、なんだか恥ずかしかったのだ。

「この家の……二階に居候してる。」

家すら持たないのに、よく大口がたたけたな。と言われればそれまでた。

「なら、丁度良いですわ。あなた、私の家に来なさい。」

「んぁ?」

「そして、いつでも掛かってらっしゃい。」

「いいのか?乗ったぜ。」

こうして、吸血鬼と人間のワクワクドキドキ復習生活が始まった。



そして俺は、暖かいベットを手に入れた!!


***

はい。一話でした。

吸血鬼さんと人間さん、これからどうなっちゃうの~!と思っているそこの君、もう一度よく読んで、誤字脱字を探して報告してください。

それでは、またの機会に。

全然書くのが進まないこの問題作、どうにか続けます

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ