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11 硬い痛み

空を切る音がする。

呻き声がする。

あ、今、敵が倒れた。

そんな感じだ、私の仕事は。

戦ってる時間より、その他処理をしている時間の方が長い。

「ふぅ、全く。何年やっても慣れませんわ。ごめんなさいね。」

私の仕事は、罪のない生き物を殺すことだ。

人の見た生き物を殺すことだ。

たとえ、それが本当に見られたもので無くても。

今回は、熊だった。だから殺した。

この熊は何の罪も犯してないし、ただ、私に一番最初に見つかった熊だからと言う理由だけで殺された。

もし、私がこの熊なら、嫌だろう。

そして、相手にとって嫌なことをする仕事は私にとっても嫌だった。

「でも、これも信用のため、ですか……。」

嘲笑が漏れる。

一体いつから私達はこんなことをしているのだろう。

それもこれも、すべてこの森の侵入者のせいだった。

「ねえ、分かってますわよね。私が怒っていること。貴方たちは、馬鹿ではないのですもの。」

「…………。」

「あら、だんまりですの?それともフレーム曲げられて声も出ませんの?」

背後の鉄の塊に話し掛ける。

この森の侵入者、そして、人がよく見ているのは動物などではない。

そもそも動物は何の考えも無しに人の前に安易に出てきたりはしない。

彼らだって死にたくないのだ。

でも、こいつらは違う。

そして、こいつらのせいで私はまた動物を殺す。

それで村人が落ち着くから。

かつての呪いに掛けられたまま、何年でもこの村を襲い続ける。

森の奥、外との境界には、鉄の柵がある。

高くて頑丈なものだ。

でもこいつらは時々それをも通り抜けてくる。

そこまでしてここの人を殺したいのだ。

「ねえ、教えてくださいませ。主もいなくなった今、何故貴方たちは戦いますの?自分たちの腹を肥やすため?だとしても、貴方たちに無理に戦い食事をする必要は無いでしょう。わざわざ壊されにでも来てるのですか?」

「………。それを望まれる方が居るからだ。」

「あら、それでしたら、その方はとっくに私達が手に掛けてますわ。我が父の母の命を引き換えに。それでもまだ縛られ続けていると。どんな気持ちです?屍にリードを握られる気分は。」

「…………。」

困ったらだんまりを決め込む。

こいつらは面白くない。

フィロックのように言い返すくらいの愚かさがあった方が面白いのに。

まあ、いい。

こいつらはそんな精巧な作りにはなっていないのだ。

チラと空をみる。

まだ夜明けには遠い。

だが、月と星が見えない曇り空。

雨が降やも分からない。

早めに帰るに越したことは無いだろう。

「ああ、核を壊さなくては。貴方たちでは相変わらず話し相手にはなりませんわね。延命する意味も無い。もう、終わって良いですわよ。」

「まっ…………、」


今一瞬。

ロボットのくせに焦った顔をした。

いや、目だ。

こいつらは時々、そう言う顔を見せる。

そうか………

「長らく、戦ってきましたものね。成長は私だけではない。彼らもまた……と言うことでしょうか。」

奴らは機能的には向上しない。

しかし、精神的には向上する可能性を持っている。

学習することは出来る。私と戦うことで。私と話すことで。

それに気付いても尚、この勝敗がきっした後のお話をやめられないのは、私の駄目な癖でしょうか。

「でも、彼らくらいなのですよ。夜に話してくれるのは。」

真っ暗、張り詰めた寒さが肌を刺す夜。

こんな世界でお話をしてくれるのは、たとえ嫌みや無視であっても彼らだけなのだ。

昔は、お父様やお母様と話したのに。

もう、2人は居ないのだ。

人々の眠る夜。

1人のちっぽけな吸血鬼は、孤独になった。


人の子等が幸せな夢を見ることを許された時間

大人達が日々の疲れを癒すことを許された時間

吸血鬼の少女には血に濡れることを強いた時間


「おかしいかしら。でも、仕方ないのよね。吸血鬼ですもの。力を持つとは孤独なこと……なのよね………」

吸血鬼は今日も1人ごちる。

返すものの居ない呟きを、こんなにも悲しく感じたのはいつからか。

長い夜をこんなにも嫌いになったのはいつからか。

自分の壊れる音を聞きながら、敵に対して無情になれたのはいつからか。

吸血鬼としてそう持って生まれたことを、ただ受け入れるしか無いと諦めたのはいつからか。

でも今は、そうしか無いのだ。


「さて、帰りましょうか。ホットミルクでも飲んで、無意味にベットに潜り込んで、ああ、熊の血抜きもしなくては。」

左肩に熊、右手でもう動かなくなった鉄の機械の四肢の一つを掴む。

だっと地を蹴ると、空へ飛び上がった。

金の髪が風を孕む。

赤い瞳が闇に紛れる。

この瞬間はどうしても嫌いになれない。

始めて飛んだあの時の、母の顔を思い出すから。

父とよく似た金髪に父の影を見るから。




***

ハイ。こんにちは。まりりあです。

なんと、誕生日だったんですよ。自分で気づかなかったけど。

これを書いてる3月6日現在、私はまた年老いるのか、と、母は頑張って産んでくれたのだなぁ、と、思うわけであります。

さて、親に産んでくれてありがとうの一言でも言ってみましょう。

いつもは照れくさい?なら、特別な記念日に。

こうして、文章を書いていると、自分が生み出したキャラクターにほんの少し、愛着が湧いてきて、産んでくれてありがとう!何て、言ってくれないかなぁ、と、思うわけであります笑

さあ、これからもどんどん育てていきましょう。

お腹を痛めて産むことは出来ないので、時間と頭で産み出しましょう。

がんばりまっせ!!誤字脱字チェックお願いします。

それでは、またの機会に。

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