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9夢と現

足が冷たかった。

靴の隙間から入ってくる泥の水分が冷たい夜の空気に冷やされて、薄い足を襲った。

フィロックは小さな拳を握って無言で両親の後を付いて歩いた。

もう、歩きたくない。と言いたかったが、声を掛けられる雰囲気では無くて、幼いフィロックにもそれが分かった。

声が漏れそうになるくちびるをしっかり閉じて、懸命に足を進ませ続けた。



ああ、これは夢ですわ。

あの時の。

私が彼に憎まれる原因になったときの。

そう……彼はこんなにもまだ小さくて……



『フィロック、まだ歩ける?大丈夫?』

母親が聞いてくる。その顔には母親の笑み。

優しげな無の笑み。

いつから、こんな母の顔に気付いただろうか。

『まだ歩けるよ。大丈夫。』

だいぶ無理していると分かっているけど、母に心配かけたくないという思いから、強がってしまう。

『そう。』

返事を聞いた母はそのまま前に振り返る。

頭でも撫でてもらえるかと思ったが、過剰な期待は心を痛めるだけだった。

『ほら、もう直ぐ森も抜ける。もう少し、もう少し……』

前を行く父の声が聞こえる。

アレ……こんな声だったっけ………



ああ、これは夢だ。

父と母が

殺されたときの。そしてロクシーと出会ったときの。

最近夢見がよくないと思っていたら、まさかここまで……

でも……もう少しみていたい。

父と母とともにあるかつての自分を。



『森を抜けたら、皆で仲良く夜食でも食べよう。母さん、持ってきてくれただろう。』

『ええ、頑張ったのだから。』

『ほぉ、それはたのしみだ。』

俄然うきうきとした声を出す父。

それとともに歩くスピードが速くなった。

あ、ついて行けない。

置いて行かれてしまう。

『待ちなさい。そこの。ここは立ち入り禁止よ。そとからもうちからもね。』

頭の上から声が聞こえる。

木の枝のうえに何かいる。

月は下弦の半月、決して見えやすい状況では無かったが、分かる。

その光を集める金色の髪、赤い目。

吸血鬼様だ。

『………これは、ロクシーのお嬢様。夜分遅くにどうも。』

『ええ、今晩は、よい月ですわね。心配なさらないで、夜が本来の活動時間ですのよ。』

鈴を鳴らすような笑い声の後、すたっと音がして、目の前にロクシーが舞い降りた。

何故か、両親と俺の間に、

『さて、貴方たちは、内からの人ですの?それとも外からの人?』

『………………。』

返答が無い。

これは、久しぶりに厄介なことになりそうだ。

まさかここまで入り込んでいたとは。

『おじょうさま、ぼくたち、いえからきたの。』

クイ、と、スカートの裾が引っ張られ、幼い声が聞こえる。

不安そうでも無く、ただ、自分の意見を言っている。

この子は、関係ないのかも知れない。

もしくは、この子も被害者か。

まだ、それに気付いていないだけで、

『****!!その人に触らないで!』

叫ぶように母の声が聞こえる。

見えないけど、不安そうだ。

でも、不安になることが見つからない。

『おかあさん?だいじょうぶだよ。』

『そんなのに触ったら穢れが、』

『こら!口が過ぎるぞおまえは。』

『え、あっ、』

穢れ

穢れですの。

まあ、確かに汚れてはいますわぁ。

だって数多の人、いえ、人型の者達を倒してきたのですもの。

そして、あなた方も、その一員となるのです。

『さて、お話は以上ですの?私の守るこの村では、守りは堅く、外には逃がさずがモットーですの。大人しく殺されてくれませんか?』

『……流石にお嬢でも聞けない願いだなぁ。』

『そうね。私達はここで死ねないの。仲間が待ってるから。』

仲間……、誰だろう。森の外には、僕の知らないお父さんとお母さんのお友達がいるのかなぁ。

そしたら、僕にも友達が出来るかなぁ。

あんまり、村での友達はいなかったから、新しい友達が出来るのか、と、当てもなく楽しみになっていた。

だったら、棒もお父さん達のとこへ……

『止まりなさい少年。あなたはそこにいなさい。』

『……え?』

前に出たら、吸血鬼に制された。

驚いて見上げると、真面目な顔の少女。いつも村に居るときはおちゃらけたお嬢様って感じだけど、この夜の彼女の目は、本気の化け物の目で……

目の前のお父さんとお母さんを睨んでいる。

『チッ………吸血鬼、知ってたのか?』

『ええ、これが私の仕事ですもの。お仕事は真面目にしなければ、父に怒られますわ。』

『そうか、しかし、此方も任務だ。ここでお前にやられるわけには行かない。』

『あら、残念ですわ。平和な解決は無理そう。』

勝敗が決するのは一瞬で、

気が付いたら、両手が赤く染まってた。

全く、この仕事は楽じゃ無い。

これだけ穢れ仕事をしているのだから、穢れていると言われても全くその通りだと思う。

しかし、やらなくてはいけないのだ。

それが代々引き受けてきた仕事だから。

『………ああ、残念だわ。愚かなる人間。またこうして私の手を汚すのですね。』

『おと……うさん……?おかあ……さん?』

後ろに居た少年ご肉塊と化した二つに近づく。

まあ、もうしばらくは動くまい。

見たところ、この少年は人間だ。

村に返してやらねば。

『あら、まだいたの……あなたは村に帰らなければ、またね…しなさいな。父と母とに。』

赤い翼をした彼女を僕は睨み付けた。

目玉が飛び出るんじゃないかという位力を籠める。

感じたことの無い怒りで、体温がじわじわ上がっている気がした。

『…………、吸血鬼……』

『ん?なんですの?』

『いつか、ぼくがつよくなって、おまえなんかころしてやる!ぜったい、ぜったいだ!待ってろ………』

ポトリとその場に倒れ込んだ少年。

気の張りすぎか、

抱き上げると、荒い息が聞こえる。

『………全く、人の子は柔いですわね。村で、どうにか生きていけるかしら。まあでも……』

最後に睨み付けてきたときの、あのわき上がる憎悪の強さを思い出す。

アレは……

『大丈夫ね。この子なら。』



「っ、はぁ!!」

目が覚めた。

嫌な夢を見ていた。両親が殺される夢。

この舘で一緒に住むあの女、ロクシーの手によって。

「っ、くそっ……」

まだくらい。

今下手に手出ししたらあちらの方が有利だ。

闇討ちが有効なのは、人間同士だから、向こうは闇討ち何てしても、こちらの姿は丸見えだ。だから、

「明日………明日こそ……」

夢の続きか、煮え立った血液は興奮をおさめることを知らない。

このままでは眠れそうに無い。

ベットのうえ、枕の下から銃火器や剣を取り出す。

ここに来るにあたり、多くの武器を持ってきた。

今夜はこれらを磨いて、落ち着くこととする。




『………、その子をどうする気だ。横槍、許さないぞ。』

『あら、もうお目覚め、嫌ですわ、無駄に体力ある奴は。』

『………。返せ、俺達の獲物だ。』

『渡しませんわ。この村に住む人々は、最後の希望。決して絶やしはしませんの。これが、私たち一家の与えられた使命。たとえ、仲間討ちになっても。』




***

こんちは。まりりあです。

最近食欲が無くて、一日に二食しか食べないんですよね。

まあ、たべてるだけましか……。

皆さん、お体には気をつけて。

それでは、またの機会に。

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