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ゼロの仮面  作者: 赤羽景
第二章
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2話 眠りの森公園

 奇術師の再襲撃に備えて、美咲に連れられて零がやってきたのは眠りの森公園。

 市内で一番大きな公園で遊具や建物があるエリアが広大な森林で取り囲まれている自然豊かな公園である。

 他の公園と比べて大型遊具が充実しているため、放課後のこの時間帯は多くの小学生たちで賑わっている。

 大型遊具のエリアから少し離れた場所に幼児向けの遊具も設置されているため、まだ小学校に上がる前の小さな子を連れた保護者も多く訪れている。

 また夏のこの暑い時期は噴水広場が人気で水遊びをしている子供が特に多い。


「あの、美咲さんほんとにここで特訓するんですか?」


 零は人ごみと子供が苦手なためここで特訓するというのは少し乗り気でない。

 そもそもこんな人目につく場所で仮面能力者の特訓をしていいのかという疑問もある。


「うん。どうして?」


「危なくないですか? いろいろ」


「今日は危ないことはしないから大丈夫よ。リキさんももう来てるみたいだから急ぎましょ」


 美咲についていき遊具エリアを通り抜ける。

 その先にあったのは、とんがり屋根が特徴の建物が並ぶ館エリアだった。

 なかでも人気なのは工房の館と本の館。

 工房の館では木の工作、陶芸、料理体験などができる工房施設が充実しているため週末にはさまざまな体験イベントが開催されている。

 本の館には絵本、紙芝居、動物や植物の図鑑、児童書といった小学生以下が対象の本が数百冊置かれている。


「あそこよ」


 美咲が指を差したのは憩いの館。公園で遊び疲れた際に休息するための館である。

 美咲が先に扉を開け中に入り零もその後に続いた。

 中は冷房がよく効いていて心地よかった。

 憩いの館は子供よりも大人の割合が多い。

 ここはどちらかというと子供のためではなく子供の相手に疲れた親のための施設なのだろう。

 憩いの館の中には喫茶店と雑貨屋が併設されており、喫茶店ではママ友たちが世間話に花を咲かせている。

 二人の探し人の鳴海はその喫茶店の奥でコーヒーを飲んでくつろいでいた。

 体が大きいのと派手な外見のため異様に目立っている。

 鳴海の座っているテーブルだけやけに小さく見えた。

 美咲たちに気付いた鳴海は手を挙げこっちに来いと合図した。


「よう、逃げずにちゃんと来たな、零」


「えっと、今日はよろしくお願いします」


 零はペコリと頭を下げた。


「ハハッ、そんな畏まらなくていいって、外スゲー暑かったろ? なにか頼むか?」


「えっと……」


「リキさん私ソフトクリーム食べたい、零くんも欲しいよね?」


 遠慮している零を見かねたのか美咲が助け舟をだした。


「あ、はい。食べたい……です」


 二人は鳴海のおごりでソフトクリームを注文。

 美咲がイチゴで零はバニラを選択した。

 少量を口に運んだだけでも口の中いっぱいに甘さが広がるほど濃厚。だが後味は意外にさっぱりとしていて飽きが来ない。


「ねぇ零くんのバニラ少しもらってもいい?」


「はい。どうぞ」


 零は美咲にソフトクリームは差し出した。彼女は「ありがと」とお礼を言ってから零のバニラを一口食べる。


「うーん! おいしい! はいじゃあ、お返し」


 零も美咲からお返しでイチゴソフトをもらった。

 祭りのときにさんざんクラスの女子グループと同じような経験をしたが今回はその時と比べものにならないほど緊張していた。

 意識していることを悟られないように気を付けて美咲のソフトを口に運んだ。ほのかに酸味があり、すっきりとした味わいだった。


「美咲、俺にも一口くれ」


「リキさんにはあげなーい」


 美咲はいたずらっぽく笑って拒否した


「一応俺の金だぞ」


 鳴海は少し呆れた表情をして見せた。


「あの……僕ので良ければ……」


「おう、さんきゅ。さすが俺の弟子」


 零が差し出したソフトクリームに鳴海は豪快にかぶりついた。


「リキさんにソフトクリームて似合わないね」


「うるせー。ほっとけ」


「あの……チカラさん、今日って何するんですか?」

 

 話の流れを断ち切るように零はずっと気になっていたことを質問した。

 正直ここでゆっくりとお茶をしている余裕はない。

 少しでも早く強くならなければという想いが零を少なからず焦らせていた。


「ん? ああ。じゃあそろそろ本題に入るか」


「はい、お願いします」


「まず初めにいろいろ確認しておきたいことがあるんだがいいか?」


「はい」


「お前はいま他の人格と意思疎通できるか?」


「いえ、できません。自分が多重人格ということもまだ実感がなくて……」


 他の人格が出てくるとき、零は完全に意識がない。どうやったら彼らと話ができるのか、そもそもそれが可能かどうかもわからない。


「美咲の話だとお前の他に確認されてる人格は二人。最初に出てきたのが信五、次が三香ってやつだ」


「信五くんが『逃避の仮面能力者』仮面能力は【加速】自身の速度を上げる能力。速度は最速で5速まで上げることが可能。三香さんが『艶羨(えんせん)の仮面能力者』仮面能力は【変化】姿を変化させる能力。変化できる姿は直接触れたことのある人物のみ。他人の姿を変えることも可能」


 鳴海の説明に美咲がそう付け加えた。


「お前の中にあと何人いるか知らねぇが、そいつらを利用しない手はねぇ。意識を保ったまま他の人格と連携し、状況に応じて仮面を切り替えて戦う、それがお前の理想形だ」


「僕の理想形……」


「ああ。基本的に仮面は一人一つ。複数の仮面を使えるってのは、お前の一番の持ち味だ。だから他の人格と対話して意思疎通ができるようになることがやるべきことの一つだ」


「じゃあ今日やることって他の人格との対話ですか?」


「いや、正直その辺はさすがに俺たちが協力できることがあんまりねぇからな。お前でなんとかしてもらうしかねぇ。それでもう一つ確認しておきたいんだが、お前は自分の意志で仮面は出せるのか?」


「いえ。出せません」


「やっぱ出せねぇか……。仮面を初めて発現させた際、コントロールできれば仮面能力者になり、できなければ仮面凶蝕者に落ちる。大抵は一度、仮面能力者になれば自然に自分の意志で出せるようになるもんなんだがな。まぁお前の場合、半覚醒の状態だからな。ならお前自身の仮面を完全覚醒させて、自由に仮面を出せるようになるのがやるべきことの二つ目だな」


「じゃあ、やっぱり今日やるのは僕の仮面を完全覚醒させることですか?」


 仮面が出せなければ戦うこともできないので、まず仮面を発現させるための特訓をするだろうと零はここに来る前から予想していた。

 しかし続く鳴海の言葉でそれはすぐに否定されることになる。


「仮面の発現は後回しだ。その前にやることがある。仮面が出せないのはある意味好都合だ」


「好都合?」


 首を傾げる零を見て鳴海はニッと笑って答えた。


「ああ、お前のやるべきことの三つ目、今日の特訓は生命の波動のコントロールだ」

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