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もうどれ位の時間が経っていて、何度目の行為なのかも分からなくなった頃。
部屋の外が賑やかになった。
バタバタと走り回る音、それを追いかけているのか、叫び走る音。
何度も扉の開閉の音が響き、突然私のいる部屋の扉も開かれた。
「何やねん!!」
もう一度、私を押し倒していた男は、振り向きながら怒鳴った。
視線の先には男が一人、高級そうなスーツに身を包み、サングラスを嫌味無くかけた男が、遠慮無く私から男を引き剥がした。
「お前誰やっ!! 何すんねんっ!!」
「黙れ、女遊びは辞めろと、言っただろう。しかもお前、誰を相手にしてんのか分かってんのか」
腹の底に響く声が、男の手を止め、動きを止めた。
側にあったタオルを投げられ、服を着ろと静かに言う。
何処かで聞いたその声に息を飲みつつ、すでに服の形を成さないそれに手をやりかけて、オーナーが飛び込んで来た。
「お客さん!! 警察呼びますよ!!」
「呼べるもんやったら呼んでみぃな、お前の職も失うことになるで」
「組長!?」
その男へ、拳をぶつけたオーナーは、男の顔からサングラスを飛ばした。現れた顔を確認した、つい今まで私を弄んでいた男は震えていて、オーナーは、蒼白の表情を浮かべている。
背中になって見えない男は、どこかで見た事のある雰囲気。だけど、絶対有り得ないと、頭がその答えを認めない。
「愛来、服着たんか」
「服……無い」
「は? 破かれたんか」
振り返った顔は、怒りにも似た表情。
だけどそれは私に向けられていない。
視界に映る男へ向けれた、軽蔑にも似た怒りだった。
「お前はまた、こんな事を」
「だって、兄貴が」
「アイツもまだここに通ってるんか」
「その紹介で」
「お前達は、俺の話を聞いてなかったんか」
「いえその、あの……」
一切話さないオーナーは、さっさと私へ簡易服を渡して来る。
彰宏は手早く私からそれを奪い取ると、慣れた手つきで着せてくれた。