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TAG~チートだらけの異世界で~  作者: 橘ゆき
第一章・最悪な伝説の始まり
7/33

6、魔王城、改装中にて

 

 

 ーーさぁて諸君。状況を整理しようか。


 我が家の裏口は、浴室とか物置用の部屋がある廊下に繋がっている。

 ダイニングキッチンとの仕切りであるカーテンは開けっ放しだったから、扉を開けて見えるのは、小物を収納しているラック。

 の、はず。


 なのに何故、四方石で造られた別空間にいるのかーーいや、わかっている。単純なことだ。

 目の前の馬鹿(イルミナート)が、俺の家と魔王城を空間魔法で繋げ、半強制的に俺を招き入れやがった。

 冷静に分析できるのは、これが初めてではないからだ。確か今回で四回目…。


「…あのさぁ」


 困惑はとりあえずそこらにぶん投げておいて。満面の笑みで空中に浮いている美形を見る。


「怒ってないから、ちょっと下りて来て魔王サマ」

「その怒りを込めた拳を収めてくれたらね?」

「やだなぁ。…ボクコレッポチモオコッテナイヨ」


 だから一発殴らせろこの野郎。表情そのままに言えば、わざとらしく困ったような顔をされる。


「まあ聴いてよ。ちゃんと用があって呼んだんだから」


 ーー()んだ、に近いのだが。

 どちらにせよ俺はこれでも忙しい。畑でやることはまだ残っているし、そろそろ芝の調整と草むしりをしなければならない。干し草もまとめたいし、薪割りに洗濯にスケジュールはいっぱいだ。

 よって、暇な魔王の、突飛もないお誘いに付き合っている余裕はない。


 つらつら並べれば、イルミナートは「あはは」と肩を竦める。


「そんな時に悪いけど、ちょっとコンちゃんの知恵を借りたいんだよね」


 無言で何だと促す。くだらない理由なら、あまんじて鉄拳を受けていただこう。


「あのね? 勇者の奇襲に備えて、ちょ~っと城を改装しているんだけど、デザインに迷っちゃってさー」


 家を一軒建築したセンス、是非貸して。


「ごきげんよう」

「少しくらい興味持ってよー」


 殴る気力すら失せた。駄目だ付き合いきれん。

 この城どんだけ広いと思ってんの。後、その勇者改めはた迷惑な連中なら、さっき我が家を大破させて謝罪もなくこちらに向かって来ておりますよ、ええはい。

 勢い良く(きびす)を返した俺の肩を、宙に浮いたままイルミナートが掴む。


「みっつくらい案があって、決められないんだよね。他人の意見を聞きたいけれど、何分城内(ここ)にはボクしかいないしさ」


 もう片手の人差し指から薬指を立てて口弁をふるう、うざったい魔王を一度睨んだ。

 肩に置かれた指先の赤く長い爪。…無性に、むっしょ~うにそれを「あー圧し折りたいわぁ」と思った。魔王にも痛覚はあるからな。こんなに長いんだし、一本くらい…。俺が折らずとも、根元から剥がれるくらいの不幸、ふりかかればいいのに。どこかに足の小指思いっ切りぶつければいいのに。


 ーーどうやら今の俺は、自覚している以上に十数分前の出来事を引きずっているようだ。

 いつもなら、イルミナートのくだらない要件など当たり障りなく(かわ)すのに、どうにも昔みたいな血の気の多さが顔を出す。…ああいや、元々短気だけど。


「…建物とたくさんの石材(・・)の声に耳を傾けながら、どうぞ御随意に」

「うん。さすがの魔王(ボク)でも、無機物と意思疎通はできないかなぁ…。ていうか、それやりだしたら、いよいよ可哀想な奴だから」

「今と大差ねぇよ」

「いつにも増して切り返しが辛辣だね」


 はい、お蔭様で!

 ただでさえ、あのクソガキたちのせいでささくれ立った神経。更に逆撫でられてはたまったものでない。

 そろそろ高血圧で倒れそうだ。十八だけど。精神年齢はぴったり四十だけど。


 それよりも、気になる点がひとつ。


「何でこの部屋、石でできてんの?」


 魔王城はレンガと赤土で建てられていたはずだ。記憶では、こんな風に石を積み上げて頑丈な造りをしていたのは、基盤と地下室だけだった。

 しかし、地下室に窓はない。

 するとイルミナートは、瞬いて「ああ」と目を細めた。


「建物が古くなったから、これを機に、いっそ材質も変えてしまおうと思ってね」


 なるほど。レンガを石に変えた(・・・・・・・・・)…と。


「何でもありか………さぁすがぁ…」


 口の中だけでそっと呟く。


 実は、魔法にも可能な範囲の上限がある。

 一を十にはできないし、ぶっちゃけてしまえば、所詮『方程式』や『法則』の範囲に縛られている。独自のものも多々あれど、殆どが『地球』の化学知識に置き換えられる。

 よくある精霊の力だなんだは、この世界においても「あるわけないじゃん」で一蹴される。漫画などのような効果・現象は、まず期待できない。

 例外的に、空間魔法と召喚魔法が存在するが、これも一応理屈があったりする。


 だが、イルミナートの魔法は、その理屈を『否定(・・)』して機能するのだ。

 レンガは土でできている。そして土は元をたどれば岩が削れたもの。だから、限りなく岩に近い強度(・・・・・・・・・・)に変えることは可能だ。

 しかしイルミナートはそれを、同じ条件で(・・・・・)更に頑丈にできる(・・・・・・・・)し、数も増やせる(・・・・・・)

 理に沿わない規格外なそれが、俺達には『異常』なそれが彼には『普通』のこと。


 だから、『普通(・・)では敵わない(・・・・・・)。 

 そんな俺の常識から逸脱したものに、一体何をどうアドバイスすればいいと言うんだ。


「ーーてか、ただの侵入者対策なら、廊下に魔法で罠張ってりゃいいじゃん。寧ろお前が玄関ホールで待ち構えて立ってりゃいいじゃん」


 投げやりに言うが、冷静に考えて、入城した途端に前置きもなくラスボス戦突入とか笑えない。

 まあイルミナートの場合、リアルに「こんにちは。じゃあさようなら」だからどこだって一緒だが。罠を張って挑戦者の心身を削る真似は、こいつには不必要だ。


「俺だって建築の専門的な知識があるわけじゃねぇんだよ。そもそもウチと規模が違うし、付き合う程暇じゃねぇし、昼飯まだで腹減ったし」


 そういう訳で俺は帰る。

 肩の手を振り払い不機嫌に言った時、大音量の咆哮が響き渡った。


「メェエエエエエエ!!」


 二人して動きを止める。……メェ?

 あれ、羊や山羊って、こんなに鳴き声轟くっけ。俺んちの羊はもっと慎ましやかだぞ。ついでに何だろうか。この地鳴りは。


「…イルミ、この島って猛獣いたっけ」


 移住四年目。目撃情報ーーなし。


「はて。少なくとも、こんな近所迷惑なのはいなかったと思うよ」


 先住民。目撃情報ーーなし。


「何か、近づいて来てね?」

「うーん。そうだね」


 地鳴りが城を揺らす。

 唐突に揺れが消え(・・)、そして。


「メェエエエエエ!!」

「ッえええええ!?」


 壁を思いっ切りぶち破り、巨大な猪らしきものが部屋を通過して行った。

 イルミナートですら、目を丸くして、唖然とその背を見送っていた。


「……なにあれ」


 様々突っ込みを入れたいのだが、ちょっと想像を絶している。

 いや、とりあえず。とりあえず一ヶ所のみ。


「おいこのクソ魔王。弁解はあるんだろうな? 誰だよ、いねぇって言ったの」

「あはは……は」


 笑いごとでなく。

 そう目で訴えれば、彼はまあまあと手を振る。


「あれは野生動物じゃあないねぇ。グリンブルスティって召喚獣だ。珍しい奴だよ」

「…や、珍獣なのは一目でわかったよ」


 問題は、いかにも生態系無視した『召喚獣』が、どこから湧いたかだ。

 俺のスローライフがいよいよ危ない。ていうか、うちのコらが危ない。


「因みにお前も喚んだりできるの?」


 二十年前戦った時には使っていなかったが、魔王だしできてもおかしくない。


「そんなのあったら、今頃コンちゃんを招いてないかな」

「……なんか、ごめん」


 遠い目で微笑まれ、ああ…軽く地雷だったなと素直に謝罪する。その間に部屋が元に戻っていることについては、深く考えないとしよう。


「とりあえず、ちょっとうちの子が心配だから帰るわ」


 唸って、先程くぐった扉のノブに手をかけた。

 一応案は出したのだから、もう用は済んだだろう。こちらは済んだ。


「あ、コンちゃん…」


 背後で何か聞こえたが、全面無視で扉を手前に引く。マロや花子はともかく、その他がパニックになっていたら大変だ。

 そう思って顔を上げれば、元の中庭へーー中庭…え?

 そこにあったのは、年期の入った赤土とレンガの壁。しかも一切の隙間なく、行き止まりのように。


「術解いたから、もうそこ繋がってないよ?」


 ひとまず扉を閉め、一息ついて俺は思った。

 繋がってるとか以前に、何故壁に面して扉があるんだ。有名な未来の秘密道具だってこんなことはなかったぞ。ていうかドラマのセットかよ。


「…」


 試しにもう一度開けてみた。結果が変わる訳でないだろう、が……。


「……………イルミナート」

「何?」


 風が、頬を撫でて気持ちがいい。ああ、眼下に見える森の緑の美しいこと。


「俺はどうやら相当混乱しているらしい」


 大真面目にぼけてみれば、魔王は笑顔で。


「え? 言ったじゃないか。改装中って」

「現在進行形かい!! ていうか何これどういうこと! 何で明らかに元より標高高くなってんの!? つうか、今まで地上に……動く城でも造るつもりかお前は!!」


 外を指差して叫ぶが、イルミナートは相変わらず何でもないような顔で。


「やだなぁ。城自体が動いてる訳じゃないよ。重くて、ボク一人じゃ魔法使っても浮かばせられないし。ーーただ、」


 ぱちり。長く爪の伸びた指先を、器用にひとつ鳴らす。

 瞬間。


「いッ!?」


 地震が起きたーー否、部屋自体が反転した(・・・・・・・・・)

 その反動で外に放り出される直前、片腕を掴まれて落下を免れる。


「…な、」


 先程まで床だった面が壁になり、閉められなかった扉が『穴』と変わった。

 ここにきて、やっとイルミナートの言う『改装』の意味を理解する。


 城そのものを、『その形のまま』は浮かばせられない。

 だが、部屋一室丸ごと(・・・・・・・・)一塊ずつならば(・・・・・・・)造作もない(・・・・・)のだ。


 例えるならば、ルービックキューブとテトリス。

 ばらばらの立方体に解体したルービックキューブを、テトリスのように上下左右に入れ替えながら組み立てていく。…といった感じか。

 招かれた時点ではまだ地上にいたが、いつの間にか部屋ごと浮いていて、ついさっき、扉の外には別の部屋の外壁があったと。

 魔王との規模と常識の違いを、改めて突きつけられた気がする。


「…これもう、改装じゃなくて…建て替えだろ」


 リフォームなんてものじゃない。匠もびっくりだ。

 …まあ、一瞬珍獣に壊されもしたし、これくらいで丁度いいのかもしれない。


 ここに、俺の見解が介入する余地って、初めからないのでは?

 ふと、ああだからずっとイルミナートは空中にいたのかと理解した。いつ部屋が動いても影響されないようにーー。


「あ、れ…」


 ーー違う。

 す、と急激に血の気が引いていくのがわかった。…だって。


  魔王 (イルミナート)に、そんな備えは必要ない。


 仮に俺のように外に落ちかけたら、その前に魔法で浮けばいいからだ。それこそ造作もないこと。

 表情筋が引き攣る。いや、顔だけではない。全身の筋肉が強張って、小刻みに痙攣(けいれん)し出す。

 俺が(・・)落ちたら確実に死ぬであろう高さ。では、何故まだ生きている? 何故助かった?


 ーーイルミナートが、(・・・・・・・・)腕を掴んでいるからだ(・・・・・・・・・・)


「ーーッ!」


 己の迂闊さに眩暈がする。初めから、実にわかりにくい(・・・・・・)『ヒント』だってあったじゃないか。珍獣の衝撃もあり、完全に油断していた。


 …いつからだ。いつから、確認されていた(・・・・・・・)

 冷や汗と戦慄が全身に流れる。

 蒼白であろう顔でゆらりと頭上を仰ぐと、不気味な視線とかち合う。


「ああ、気づいた?」

「はは……笑えねぇよ、魔王(・・)


 皮肉だ。現状で精一杯の虚勢。


 イルミナートは言った。勇者の奇襲に備えて、と。

 俺はそれをマイロ(クソガキ)たちだと解釈した。それが、元々違う。

 自分で言ったんじゃないか。彼らではこの魔王に敵わないと。そして当然、それはイルミナートもわかっている。


 侵入者に対して、警戒する必要はない。

 危惧するべき存在はーーいつだって『近しい者(うちがわ)』にいるのだ。


「ねえ、コンラッド」


 うっそりとイルミナートは微笑む。


「キミ、ボクの腕を斬り飛ばした人間のこと…知ってる?」


 唯一、この魔王に本気を出させ、その上で手傷を負わせた『初代』勇者。花村臨ーー。

 どこで、そんなものと村人(おれ)を結び付けた?


 どうか。

 どうかばれるな。目の奥でこちらを値踏みする魔王に、凍り付いた表情が『恐怖』からではなく、『焦り』なのだと、(さと)らせるな。


「…お前の腕? は? 冗談だろ…」


 いるの、そんな人間。

 そう意味を込めた俺の切り返しに、紅眼が細くなる。


「ああ。以前いたよ(・・・・・)

「へぇ…」


 ーー苦しい。わかっている。あんまりにも不利だ。これでは動揺だって隠せない。

 王手をかけてきた相手の駒から、往生際悪く一マスずつ逃げているだけだ。時期に追い詰められる。



 何故、初代(おれ)を気にする。自分でなぶり殺した奴を、新しい勇者共が現れた現状で、何故今更。

 いや、違う。

 何故それを村人(おれ)にわざわざ訊くーー?

 一秒にもならない、刹那の間。駆け巡った思考。

 そして俺は、ーー博打に出た。


「それって、二十年前にいた(・・・・・・・)っていう勇者のこと(・・・・・・・・・)?」


 ぴくりと。イルミナートの瞼が、本当に僅か、小さく震えた。

 ーーこれは、『確認』だ。俺が、自分の敵であるかの。

 例え本人は死んでも、花村臨にゆかりのある者は生き残っている。その誰かが、喉頚(のどくび)を搔っ切りに来てもおかしくない。


 理由や動機はともあれ、新たに六人も自分と対立する敵が増えた現在。ーー更に当時の因縁まで引っ張り出されてきては堪らない。現に『何者かの召喚獣』が島を駆けずり回っている。

 被害を最小にするため、城をばらばらにしながら様子見を兼ねているのが今。

 これが理由、とふんだ。


 では、どう躱すか。


 そもそもイルミナートは、『初代勇者は死んだ』前提。だって経緯を知る当事者だから。

 しかし、世間は『失踪か戦死か』の曖昧な二択で止まっている。だって誰も(・・)結末を知らないから。

 俺は、当事者(・・・)だ。だが、今年十八歳(・・・・・)(コンラッド)は、当然二十年前のことを(・・・・・・・・)知らない(・・・・)はず。

 同じ過去形でも、意味が違う。噛み合っては、ならない。

 前提に、『当事者』しか知らないことを含むなーー。


「知ってるんだ」

「噂程度に。でも、正直よくわかんねぇ。そもそも、大陸じゃあ最後の『魔王』についても、憶測飛んでたし」


 事実だ。

 元々、イルミナートはずっとこの島で暮らしている。しかも他の魔王と違い、過去に目立ったことは殆どしていない。『魔王は七人』と伝えられながら、存在を疑われていたくらいだ。

 俺ですら、本人に接触するまで、どこまで本当の情報かがわからなかった。


 ふ、とイルミナートが笑う。


「都市伝説に会った感想は?」


 ーー今更それを訊くのか。コンラッドとして会ってから、もう随分経つのに。


「最悪」

「光栄だね」


 下手な嘘は吐けない。何を感づかれるかわからないし、事実のみで欺ければそれが一番。…ものすごく高等技術だと思うが。しかも相手が相手だ。

 逃げ切れるか?


 目は一度も逸らさない。震えは開き直って晒しておく。あくまで、『魔王に恐怖心を持っている一般人』だと。所作で訴える。

 実際怖いしな。格好つけるつもりはない。ーー怖い、うん。

 だって、今俺上空何十メートルにいるよ。宙吊りだよ。なのに命綱が一方的だし、ていうか魔王だし。気紛れで不意に離されたら、……考えたくない。ああ、想像しちまった。



「ーーコンちゃんは、さぁ」


 僅かな沈黙の末、イルミナートが口火を切る。


「『英雄になりたい』って、思ったことある?」


 次に紡がれるであろう言葉に気を張っていたのに、一瞬、何を言われたか解らなかった。

 今、こいつは何て言った?

 呆然と仰いだ魔王の表情は、一度も見たことのないもの。


「ぇ…」


 ふと。視界が揺らぐ。

 赤い爪と自分の指先が見えて、急にイルミナートが遠のいた。


 ーーああ、離された(・・・・)のかと。

 冷静に脳のどこかで理解した時、俺の体は扉の外に放られた。


「ばいばい。ボクの、ーー」





  * * *

「なんでしょう、あれー。石が浮いてますぅ」


 遠くを見るようにして、木の上から再構築中の魔王城を観察する影がーーふたつ。


「魔法ね。しかも高度な」


 冷静に応じて、ふと下をのぞき込む。


「ちょっと、グリンブルスティは? 喚び戻せたの?」

「今やってるわよ!」


 方陣の中心に立った術師は、杖代わりの傘の先で地面を叩く。

 と、少しして陣が発光し、煙と共に術師の肩に、ぬいぐるみのような瓜坊(うりぼう)が現れた。


「メェ」

「おかえり、グリ」


 鼻先を撫でてやれば、まん丸の目を細める。あれ程暴れていたとは思えない、なんとも愛嬌たっぷりな姿である。


「結局、その子は猪なんでしょうか。鳴き声は羊みたいですけど」


 同じように下を見たもう一人が、こてんと首を傾げる。


「何でもいいわ。この子チョー可愛いから!」

「メー」

「よくないでしょ。暴走させといて…」


 はあ。と溜め息をつき、視線を空中の魔王城に戻す。


「あれが、女神の言ってた魔王…私たちの敵」


 風に揺れる髪を押さえ、静かに目を細めた。それぞれ、目に宿すのは確かな高揚。


「ーーま、あの眼鏡共よりは、楽しめそうじゃん?」


 

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