プロローグ
十二年前、俺は異世界にいた。
今でも信じられないが、確かに俺はあの世界で生き、そして死んだ。
これは、そんな俺の『実体験』をまとめた話。
ーーその世界は、七人の強大な力を持った『魔王』に支配されていた。
人間には一秒とて安息のない日々。それを憂いた女神はある日、別の資源豊かで穏やかな異世界ーー『地球』から、正義感溢れる人間を『勇者』として召喚し、魔王に対抗できる能力を授ける。
喚ばれたその勇者は、人々の期待通りに、三年の時をかけて六人の魔王を打ち倒していった。
しかし、勇者はある日忽然と姿を消してしまう。
代わりに、同じ異世界から、六人の男女が再び召喚された。後、彼らは、第二世代の『勇者』と『魔法少女』と呼ばれるようになる。……前者はともかく、何故魔法少女などというものが出てきたかは、まあ追々に説明しよう。
それで、最後に残った七人目の魔王を、その六人が見事倒しました。めでたしめでたし。
……と、御伽噺ならそうなっただろう。王道なRPGやファンタジーだって、そんな感じだ。
だって、そうじゃなきゃ面白くないから。人道的じゃないから。
ただ、忘れてもらっては困るが、これは『実体験』で…つまりは『実際に起こった』ことなのだ。
現実というのは、いつだって、理想と妄想を否定するようにできている。
その世界の人々にとって、理想は御伽噺のような展開であり。現実は、正反対だった。
初代勇者の実績があったこともあり、人々は六人を歓迎した。
きっと、最後の魔王を倒し、世界を救ってくれると信じて疑わなかった。まあ、その気持ちはわからないでもない。だって前例が前例だもの。
しかし、そううまく現実は思い通りにならない。
例えば、魔王が強すぎたか、想像以上に六人が弱すぎてバッドエンド、とか。
例えば、魔王側に寝返る裏切り者が出る、とか。
例えば、役目をボイコットされたとか。
理想と現実の相違点なんか、クレパスより深くて、底なし沼もいいところだ。
勝手に期待を寄せておいて逆ギレするのもどうかと思うが、結果論だとしても以前の方がよかった、なんて思ってしまうのは、人間の複雑な欲望故だろう。
で、だ。
一体何が起こったかというと。
ーーその召喚された六人全員が、世界の救済を拒否。どころか、手中に治めようと企み始めたのだ。
魔王は、自分たちが世界に君臨するのに邪魔だからと、早々に退治……もとい処刑することに決定。
しかし、その矢先に仲間内で意見が対立・反発し、真っ二つに分かれた。
お前らとなんかやってられるか。おーおー上等だやるのか。なんだとコラ。なんだコラ。戦争だこの野郎。望むところだこの野郎。
とまあ、こんな感じに、あれよあれよと強大なふたつの勢力が出来上がり、何故か魔王との三つ巴に発展していった。
世界は正しく、ラグナロクまっしぐらなんて、笑えない展開へ加速したのだ。
ああ、因みに。その頃の俺といえば。
とある島で一人、家畜と大自然に囲まれながら畑を耕し……そして。
魔王と午後のティータイムを、まったり過ごしていたーー。