第6話 召喚
『それじゃあ、最初の召喚といくかの。スキルポイントはあるじゃろ?』
「はい。5ポイントだけですが」
『充分じゃ』
使うスキルポイントを5ポイント設定する。詠唱は恥ずかしいがやるしかないか。
「代償とするは我が才能、境界より来たれ、力求め彷徨うモノよ!」
詠唱を始めると床に魔方陣が出現し、魔道書が光る。詠唱が終わると両方が閃光を放った。……目を瞑れぐらい言って下さいよグリーモルさん。目を開けていたから光が目に入りましたよ。
「初めまして、悪魔の睡蓮です」
魔方陣の代わりに人が立っていた。でてきた人は悪魔というだけあって中々の美人だと思う。黒髪のセミロング? わからないので今度、雑誌買ってみようと思う。外見は20歳くらいに見える。でも、召喚されるモノって実際はもっと年「殺されたいのですか?」
「すいませんでした!」
睡蓮のステータスは魔道書に書かれていた。
名前:睡蓮
種族:悪魔
スキル
【魔剣】【影魔法】【魅了】【筋力強化】【魔法の神髄】【魔法操作】【魔の心臓】
種族スキル
【飛行】
「グリーモルさん。ステータスが右側のページに書かれているんですが」
『ああ、それはじゃの。魔道書は左側のページに召喚陣、右側のページにステータスというふうにわかれとる。召喚に影響が出るのは左側のページじゃが、仮に右側のページがない状態で召喚すれば永遠にステータスはわからなくなるの』
つまり魔道書を使うには、紙が2枚必要だということか。
「後、睡蓮はスキルを8個持っているんですが強いのですか?」
『8個じゃと⁉︎ やったな主よ、十分強いぞ! その強さじゃと当分は召喚する必要もないじゃろう。じゃが、注意せよ召喚したモノが死んだ場合、再召喚までに1日かかるでの』
「はい。きをつけます」
『これで教えることはなくなったの。儂の弟子じゃ、何かわからないことがあれば何時でも来ていいぞ』
グリーモルさんの家をあとにした俺達は街を歩いていた。午後8時か。長い間お邪魔していたな、すっかり夜空に変わってしまっている。
時間的にも飯が食いたいが、さっきから気になっていることがある。
「あの〜もしかして睡蓮具合悪い?」
そう睡蓮が全く喋らないんだ。無言で歩くというのはきついものがある。
「…………フーア様は怒ってないのですか?」
「怒る? 何も怒ってないけど」
「先程、殺されたいのかと言ってしまったじゃないですか」
「別にきにしてない。逆に自分の言いたいことは言ったほうがいい」
会話するのにいちいち気を使ってたら誰だって疲れるからな。言いたいことが言えない、そんな関係は誰だって嫌だと思う。
「…………じゃあ1つだけ言います。私の顔を見て喋って下さい」
実はさっきから露天を見てるふりをしながら喋っていたんだがバレていたか。しかし、この場面でそれは無理ですとは言えない。だが実際無理だ、ならどうするか? 正解は問題の先延ばしだ。
「ぜ、善処します。その代わり睡蓮も様つけて呼ばなくていいよ」
「じゃあ……フー君でいいですか?」
状況が悪化という方向に歩き出したぞ。フー君はフーア様より酷い、そういうプレイかと思われる。ソラとは進学先が一緒だ、こんな様子見られたら絶対ネタにされる。それだけは避けねばならない!
「フーアでいいです」
「フー君が私の顔を見て喋ってくれませんから拒否します」
「……了解」
世の中諦めが肝心だと僕は思うね!
にしても、何で強い睡蓮が召喚に応じたかがわからない。
「睡蓮はなんで俺の召喚に応じたの?」
「それは単純なことです。気になったんですよフー君のこと」
「気になった? あいつは将来大物になる。みたいな感じか?」
「うーん。そうじゃないですね。面白い人だな。みたいな感じです」
曖昧だな。もしかして、強い奴はみんなこんな感じなのか? そうなると強い奴がくる確率はかなり低いぞ。
そういえばさっき飯が食いたいと言っていたが、このゲームには空腹度は存在しておらず満腹感も感じない。しかし、食事は美味いらしく料理スキルを習得するプレイヤーが多いそうだ。空腹度は次のアップデートで実装されるという話もあるそうだが。NPCはどうなのだろう?
「食事は必要なのか?」
「私はお腹が空きませんよ。食べることはできますが」
「じゃあ、睡蓮の武器を選びに行くか!」
「武器ならありますよ、此処に」
「どこからだしたの!?」
「影魔法のディメンションを使って影からだしました」
当たり前のように言う睡蓮の手には剣が握られている。
おかしいからね? 闇討ちとかできるよ。でも、アイテム入るとか影魔法便利だな。ノアさんが欲しがっていたのもわかる。
「睡蓮は筋肉ないように見えるんだけど剣振れるの?」
「筋力強化というスキルがあるので心配いりませんよ。それに筋力が足りなければそもそも持ち上がりません」
たしかにそうだが。できれば俺と同じで武器無しでやってもらいたい。召喚した女性が前衛で俺が後衛は流石に酷いと思うし絵面的にも美人が前衛で普通の顔した男が後衛とかありえないと言われる。
「戦闘の時さ、俺が前衛やるんで睡蓮は後衛やってくれないか?」
「武器持ってないフー君が前衛は無理があると思いますよ』
「えっと…………ほら睡蓮は知らないかもしれないけど、魔道書は武器なんだよ! 角とかで攻撃できるんだよ!」
「フー君ってバカなんだね」
本当におっしゃるとうりです。ただ、その哀れみの目を向けないで! 俺だって一生懸命考えたんだから。
ログアウトしたらスキル構成見直そう。
一階が食堂になっている宿屋に泊まるか。こういう宿屋に泊まってみたかったんだよな。
「俺が寝たら睡蓮はどうするんだ?」
部屋は別々にしたかったが睡蓮に節約して下さいと言われ、一部屋しか借りられなかった。
「私も寝ますよ、やることないですから」
「じゃあおやすみ」
今日はかなり早いがログアウト。