第22話 再戦
「手は出しませんがついては行きます」
ノアの店から帰ってきた俺は睡蓮に助けを求めたんだが……断られた。「フー君が頼まれたならフー君が倒して下さい」とのことだ。
「危なくなった時の助けは?」
「あるんですかね? 私の心はフー君の頑張り次第で変わりますから」
手を抜くなと言いたいんですね……
「火焔は手伝ってくれるだろ?」
「フーア、僕のご飯忘れてたよね?」
あっ。
「やっぱり忘れてたんだ。……僕は手伝わないから」
自業自得というやつか。火焔が拗ねてしまった。でも、俺一人だと攻撃くらう可能性高いしな〜
「フーアは痛みを教訓にすべきだよ」
俺、口に出したか?だしてないよな。何でわかるんだ?そういえば、ソラが前に「お前は顔にでやすい」とか言ってたがそういうことなのか?
とりあえず真面目に勝つ方法を考えるかって思ったが、魔王化でごり押しできるのでは? 魔剣は物攻+80だし余裕だろ。
さて、そんな考えで北の森にきたわけだが、ゴブリンや鷹とかしかでてこない。肝心の蜘蛛が見当たらん。
「フー君、あそこ」
睡蓮が指差した方を見ると蜘蛛と戦っているパーティがいた。
そりゃ見つからないわけだ。暇だし観戦でもするか。
戦っているのは、女性三人のようだ。ボスに見つかったパターンかな? 人数が少ないってかあの人、ロゼだな。もう一人はカグラだ。あと一人は知らないが、挨拶しとくか。
「ロゼ久しぶりー」
ありゃ無視された。
「ロゼー! 久しぶりー!」
「!? 久しぶりーじゃないですよ。いたんなら手伝って下さいよ!」
「ペナルティ発生するから無理かな。パーティ申請送れる?」
「何とか送ってみせます」
ロゼが一人立ち尽くしメニューを操作し始める。それを見たカグラともう一人が蜘蛛の注意を惹きつけ始めた。俺ならテンパって死にそうだが、うまく避けてるなあの二人。
ロゼからパーティ申請が送られてきたのでパーティに参加する。
「俺の役割は?」
「そろそろ子蜘蛛呼ばれるので子蜘蛛の相手をお願いできますか?」
「わかった」
ロゼは二人の元に戻っていったが、ボスを倒すつもりで来てたのか。三人とは無茶するなぁ。
「子蜘蛛きますよ!」
「了解。……魔王化」
魔王化と言うと、俺の目の前が真っ暗になった。なんで!?って明るくなったな。おお! いつの間にか防具をつけてる。腕は黒のガントレット? 何故か右腕しかない。脚は黒のズボンに黒のベルトに黒のブーツか。黒色ばっかだな! 運営の趣味丸出しだろ……
そして、何でかわからないが上半身が裸だ。これも運営の趣味か? 気持ち悪いな。反逆者のコートを装備できるか? できた!!ってこれも黒か! 全身黒はやだなぁ。左腕は装備無いし……
てか、こんなこと考えてる場合じゃなかったな、子蜘蛛がきた。
「ヘルゲート」
ボスはヘルゲートの対象外のようだが子蜘蛛は倒せた。正直、無理かな?と思っていたがやってみるもんだな。これなら確かに余裕だ。
蜘蛛の厄介なところは子蜘蛛の召喚と糸を吐くことだ。子蜘蛛は倒したからあとは糸か。
「魔剣創造」
蜘蛛に近づきたくない。が勝つためだ。
蜘蛛との距離を詰め、脚の関節を剣でなぞり斬りとばす。蜘蛛が暴れまわるが関係無しに次の脚を狙う。睡蓮がやっていたが、脚を無くしていくことで機動力が奪えるし、蜘蛛は身体の向きを変えられなくなるはずだ。糸だって吐く方向がわかっていれば避けられる。
「俺が脚斬ってくから、なるべく蜘蛛の正面に行かないように攻撃して」
「「「はい!」」」
問題なくHPを削りきった。流石に脚が無いと何もできないか。
「お疲れ〜。久しぶりだな」
「やっぱりフーアさんはチートですね」
「久しぶりですね。とかじゃないの?」
それに間違っているぞカグラ。俺がチートなんじゃなくヘルゲートがチートなだけだ。
「だって、普通はボスの脚を斬り落とすなんて無理ですよ! しかも、それを当たり前のごとく行われたら挨拶の言葉も吹き飛びます」
俺がなんで無理なんだ?と思っていたら、カグラが気づいたのだろう。追加説明してくれた。
「切断の条件は、一撃の攻撃力が部位の耐久値を超えることです。でも、ボスの耐久値はすごい高いんですよ! だから、ボスの身体を欠損させるのは無理と言われてるんです」
ついでに説明してくれたがモンスターの首を斬ってもHPが残っていると首は落ちないらしい。まあ、ゲームだからな。
カグラとの話が終わったと思ったら、青髪のプレイヤーが挨拶をしにきた。
「初めましてロゼの妹のリンです! 姉がお世話になりました!」
カグラとロゼがいたから、まさかとは思ったけどやっぱり妹だったか。青髪ロングとはアニメ好きなのか?礼儀正しい子のようだし可能性は薄いか……
「初めましてフーアです。あまりロゼの役に立てなかったけどね。ていうかなんで三人でボスに挑んだの?」
「……姉が戦ってみたいと言うので」
やっぱり、戦闘狂なのか……
「ロゼって実は戦闘狂?」
「ち、違いますよ! ただ、一度ボスと戦ってみたかっただけです!」
いや、それを戦闘狂って言うんだと思うよ。普通戦ってみたかったなんて言わないからね。ロゼは弁明を続けていたが、カグラとリンに連れて行かれた。
ノアに頼まれていた糸は手に入ったし俺も帰るか。にしても、俺が手を出さなくても勝ってただろうな、あの三人。