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第15話 火焔

「睡蓮は留守番、火焔は俺と北の森ね」


 攻略組はレベル上げをしてから北のボスに挑むことにしたらしく、北の森は今人が少ない。

 なら北の森に行くしかないだろ。



 草原ってやっぱいいよな。一面に広がる緑。青く澄みわたる空。心地いいそよ風。雰囲気が暗い火焔…………

 もしかして、火焔は争いが苦手なタイプか?


「火焔は戦いが嫌いなのか?」

「…………うん」


 やっぱり火焔は戦いが好きではないようだな。


「街に戻るか?」

「……気にしなくていいよ。戦うのも仕事だから」

「そういうの気になるんだよ俺は。ここならモンスターは襲ってこない。相談に乗ってやるよ。まあ、とりあえず座ろうか」


 って言ってみたものの、人に相談されたことなんてない俺に何ができるのやら。


「話にくいなら別にいい。今日の火焔の仕事は周りの警戒だ。戦いの参加はない」

「…………フーアは僕を召喚したのになんで自分で戦うの?」

「そりゃ自分を鍛えるためだな」

「じゃあ、なんで僕や睡蓮を召喚したの?」

「なんでか……まあ、俺の気分的に召喚したかったからかな」

「変わり者だねフーアって」


 よく言われます。


「普通は僕達に戦わせて召喚者は戦わないんだよ」


 いや、それ無理。女二人に戦わせて俺は傍観とか並みの精神じゃできないよ。しかも、その間絶対気まずいからな。戦い終わった時に何て声かければいいのかもわからん。そんな事に神経使うなら俺が戦うね。


「逆に聞くが火焔はなんで戦いが嫌いなんだ?」

「……わがままな話だけど僕は仲間が死ぬのは見たくない。死んでも生き返ることに慣れるって怖いから」


 火焔はそう言うが、アニメとかではよく見るよな。不死身の体の主人公がその特性を使って戦うやつ。仲間的にはどうなんだろう? あいつどうせ生き返るから死んでもいい、みたいになるのか?


「……また逆の質問をするけど、火焔はなんで俺の召喚に応じたんだ?」

「フーアは僕や睡蓮が死んだら悲しんでくれそうだったからかな」

「……哀しい理由だな。次に召喚者を選ぶ時はもっと別の理由で選べよ。あいつ面白そうだなとかそういう感じので」

「ごめん。迷惑だったね」


 それっきり火焔は黙ってしまった。うーん。軽く考えて召喚したが、みなが睡蓮みたいではないんだな……よくよく考えると睡蓮って火焔みたいな過去の話とかないからな〜参考にならな「破かないの?」ん?


「何を破くんだ?」

「僕の紙だよ」


 ええええ。どこでそういう展開になったんだ? 俺何か間違ったこと言ったのか?


「えっと、破いた方がいいの?」

「破いて欲しくないけど、フーア『次に召喚者を選ぶ時はもっと別の理由で選べよ』って言うから……」

「いや、それは俺が召喚者じゃなくなったときの話だよ」


 また黙り込んでしまったが今回は耳が赤い。まあ、はやとちりって以外と恥ずかしいからな。





 場所は変わって北の森。結局、街には戻らないと言うので来た。


「本当にいいのか?」

「くどいよ。もう気にしてない」


 話は終わりだな。前からゴブリンが来た。

 また、剣かよ……

 このゲームの感覚は共通なので痛覚を下げると触覚も下がる。なので、痛覚を下げすぎるわけにもいかない。

 剣で切られたくないな……前回痛かったんだよなー。


「ダークボール」


 三割か……

 やっぱり悪魔化してないと攻撃力が低いな。

 魔法関係のスキルは魔法を発動した回数でレベルが上がる。

 なので今日は睡蓮を留守番にした。本人はすごい不満そうな顔をしていたが睡蓮がいると魔法を使う機会がない。


「フーア。後ろからもう一体来てるよ」


 あっ! また、警戒を忘れていた。

 火焔がいて助かった。やっぱりまだ、一人で戦うのは無理そうだな。


「ダークウェーブ」

 ダークウェーブは闇魔法のLv10で取得できる周囲に闇の魔力を波状にして放つ範囲魔法。

 周囲に仲間がいると使えないソロ向きの魔法だ。

 ってやば! 火焔ー避けてー!


「火焔大丈夫か?」

「大丈夫だよ。ただ、発動するなら事前に言って欲しかったかな」

「すいません」


 火焔が苦笑いしてる……

 わかります。一人で戦うのは無理とか言っておきながら範囲魔法使うっていうね。

 焦ってるな俺。睡蓮なら発見と同時に倒すからな。

 正直、どうすればいいのかわからない。


「ファイアボール」


 えっ?


「まだゴブリン倒してないよ!」


 忘れていた。まだ倒した訳じゃなかった……


「ダークボール」



「いろいろとごめん」

「フーアは気を抜きすぎ。もっと周囲を警戒したり仲間の位置を確認するとか戦闘の基本ができてないよ。そもそも、武器の装備もしてないし…」


 説明したら火焔は呆れた顔をしていた。

 魔道書が武器じゃないって知らなかったからしょうがないと思うけどね!


「武器スキルも取らずに召喚してたなんて……武器無しに一人で戦うなんて無理だよ」

「大丈夫。次は上手くやるさ」



「ダークアロー」


 ゴブリンのような敵は頭を狙ったほうがいいな。ダークボールより効果がある。だが俺のMPは6割しかない。魔法の連発は避けるべきだろう。

 格闘するしかないか……


 周りを見ると弓を持ったゴブリンがいた。丁度いい練習台になってもらおう。

 弓を射られる前に距離を詰め顔面に拳をうつ。殴ったわいいがHPがまったく減っていない。ステータス上昇スキルがないのが原因だろう。


「なっ!」


 ゴブリンが弓を手放して殴ってきた。

 予想外だ、ずっと武器を持ってるもんだと思っていた。

 近接戦闘になったがゴブリンは拳しか使ってこないしフェイントもない。

 いいねー殴り合いをしてやろうじゃないか!


「勝ったぞ‼︎」


 何分経った?

 長い間戦っていた気がする。 あのゴブリン良い拳持ってたな……油断していた俺は顔面に拳をもらった。

 殴り合いなんて小学生以来だな。だからだろうか、すごいスッキリした気がする。


「フーア大丈夫?」


 すごい心配そうな顔をしているな。


「大丈夫だぞ! 顔面殴られたが余裕余裕。心配無用だ」

「次は殴り合いなんてしないでね。もし、殴り合い始めたら横槍いれるからね」

「もうしないよ」


 疑ってるな、顔にでてるぞ。

 そんなに信用ないのかな?








「もうしないって言ったよねー?」

「申し訳ございません」


 怒ってるなー。

 いや、だってさ、さっきのゴブリンしょっぱなから斧投げてきたんだよ。

 ダークアローはゴブリンが隠れた木に当たるし。

 殴り合いになる運命だったんだよ!


「今日は帰っても犬にならないからね」

「どうかそれだけは。さっきのは運命だったんだよ!」

「許しません。反省が必要だよ」


 1日の楽しみが消えた。

 帰り道どれだけお願いしても首を縦には振ってくれなかった……




「おかえりなさい」


 家に着くと睡蓮が家の外で待っていた。

 迎えにでてくれるなんて今の世の中じゃありえないぞ。そう思いながらリビングにいくと料理が買ってきてあった。


「睡蓮って家庭的だな。……そんな睡蓮に頼みがある。火焔を説得してくれないか?」

「また何かしたんですか? フー君は同じ過ちを繰り返しますからねー……反省して下さい」


 睡蓮は俺の味方じゃないのか!?

 今日連れてかなかったこと根に持ってるな。

 睡蓮の年増!


「ごめんなさい」


 凄い形相で睨まれた。

 もうダメ。今日はログアウトしよう。

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