卒業
【プレイボーイ】
あれからというもの、俺はトモミと別れ、御子柴と付き合う事もなく、高3になり、部活も最後の夏を迎えた。
インターハイでは準決勝で負けてしまい、ベスト4という形で高校3年間の部活動を終えた。
おかげさまでそこそこな活躍をしていたので、大学からスカウトをされ、特待生として進学が決まっていた。
それから半年、俺は遊びまくった。
トモミとは真剣に付き合っていたので、その後遊ぶ事はなかったが、御子柴は、こういっちゃあ何だが、淫乱女だ。
会うたびにセックスしまくった。
お互いの寮で…
ある時は公園で…
我慢できない時はトイレで…
はたまたバスの中…電車の中…
またある時は深夜の道路の真ん中で…
ただ、それ以外はなかった。
いつしかトモミと別れた事が噂で広まり、また告白され始めた。
けれど俺は誰とも付き合わなかった。断る時も、『今は誰とも付き合いたくないんだ。遊んでたいんだ。』
すごいよな〜半年の間に10人以上には告られていたが皆に同じセリフ。
今じゃとても考えられない‼︎
何故こんな断り方をしてたかといえば、
『じゃあ遊びでもいいから!1度デートしたい。』
てな感じに言ってくれるのだ。
ありがたや〜。
そして俺は休みとあらばデート、からのセックスに精を出した。
そんな毎日を送っていたが、いよいよ冬になり、卒業を間近に迎え、その前のビックイベント…
そう…
バレンタインデーだ。
毎年、何個かいただくのだが、彼女がいたので、義理でもらうことがほとんどであった。
今年はいったいどうなるのだろう。
そしてバレンタインデー当日がやってきた!
クリスマスのように枕元にチョコレートがあったりはもちろんしない。
俺はいつものように友達と学校に向かった。
誰からも今日の予定を聞かれていない。
駅で電車を待っていると、俺のツレは同じ電車に乗る子からチョコレートをもらったりしている。
俺には…
ない。
うわ、俺は遊びすぎて今年はもはやチョコレートとか可愛らしいものはもらえないんじゃないだろうか。
何も起きないまま学校がある駅までついてしまった。
スクールバスが出ている所までいくと、なにやら女子の長蛇の列がある。
こんな田舎に芸能人でも来ているのか。
別段興味はないのでスルーしようとすると、
「おはようございます!先崎先輩っ。これもらってください!」
おっ、ついにチョコレートを俺もGetだ!
「おぅ、ありがとな。」
内心チョー嬉しいくせに未だにこの性格だ。
(こんな俺にもチョコくれる子がいるんだな。感謝感謝。)
すると、その隣の子も、
「先輩!私のももらってください。あ、あと、握手していただけませんか?」
「あ、あぁ。ありがとう。」
と言って俺は握手した。
芸能人になった気分だ。
そして、その隣の子も、そのまた隣の子もみんな俺にチョコレートやプレゼントをくれるではないか。
なんと、さっきの女子の長蛇の列は全員俺にチョコレートを渡す列だったのだ。
誰が整列させたのかもわからないが、20人弱は並んでいただろう。
俺は抱えきれないほどのチョコレートの袋を持ちながら学校へ入る。
クラスにも俺と同じように山ほどチョコレートをもらってるやつがいる。
完全に二手に分かれている。
俺は優越感にひたっていた。
困った事に俺はチョコレートが嫌いだ。でもせっかく貰ったものを食べないわけにもいかないので、
全部を少しづつかじりながら考え事をしていた。
(たくさんチョコもらったけど、結局誰から1番ほしかったのかもわからないし、数ばかりもらっても何だか寂しいもんだな…)
贅沢な事を考えながら昼休みになった。
「先輩〜!お昼つきあってください!」
御子柴だ。
「ん?あぁ、いいよ。」
俺は昼飯の食パン一斤と牛乳を買い、屋上に
行く御子柴を追いかけた。
昼食を済ませ、一休みしていると、
「先輩。これ…昨日作ったんです。食べてみてください。」
「おっ、ありがとう。じゃあ早速いただくか。」
綺麗に包まれている包装をはがし、蓋を開けてみる。
15㎝ほどもあるハートのチョコだ。
《優♡LOVE》
と書かれている。
あまりにベタなので少々照れる。
さてさて、御子柴が見つめる中、ひとかじり、
・・・・・・・・・・・・・・・・。
かっ噛めない。
俺のアゴが弱いのか?
いや、そんな事はない。俺はコーラの瓶の蓋を歯で開けられるのだ。
そしてもう一度。
ダメだ。割れもしない。
違う作戦だ。舐めて溶かそう。
こちらは正解だった。
所詮はチョコレート。人間様の唾液には勝てない。
(おっ♩味がしてきた。)
俺はチョコレートが嫌いだと先に言ったが、食べれないわけではない。
けれど、、、
これはチョコレートか⁇
激マズだ。正直食べ物なのかも疑問だ。
(どうしよう、本人の前でマズイとか言えないし。)
吐き出したいのと、何てコメントしたら良いのか困って俺は顔面真っ青だ。
どうしようもなくなったので、口にチョコレートらしきものが入ったまま、御子柴にキスしてやった。
「ん…..。」
ぶはぁっっ
御子柴は吐き出した。
www
「何これ?私のチョコレート?やばすぎですぅ、ごめんなさい。」
「ハハハハハ」
事なきを得た。
とまぁ俺の高校生活最後のバレンタインデーは笑いで幕を閉じた。
そして、いよいよ卒業の時。
式も終わり、3年生はみな部室を片付けにいく。そこでは後輩達が勢揃いし、お気に入りの先輩のジャージをもらうという風習がある。
身ぐるみはがされてるやつ。全くお声のかからないやつ、いろいろといる。
俺は…
コッソリ抜け出し、とある場所に向かった。
約束をしたわけではないのだが、何となく行ってみるとそこにはトモミがいた。
「優、やっぱりここに来ると思ってた。」
「俺も。トモミがここにいると思ってた。」
「久しぶりだね。そしてもう卒業、早かったね。」
「そうだな、トモミとこうして話すのも久々だけど、なんかいつも通りな気がするのはなんでだろうな。」
「ほんとだね、違和感ないもんね。あんなヒドイ事しといてさ。」
「す、すまん。」
「もうジョーダンだよ、何にも気にしてないよ。それより卒業しても頑張ってね。」
「ありがと。これ、やるよ。」
後輩から1番人気の体育のネーム入りジャージ。俺も以前お付き合いしていた真理子先輩からもらった。
「え?まだあったの?もうとっくに後輩に持っていかれたかと思った。ありがとう。すごく嬉しい。」
トモミはジャージに顔を埋め、匂いをクンクンしながら、
「優の匂いがする〜。ちょっとくさ〜い。」
「うるせーな、じゃあ返せっ!」
「やだよーもらったものは返さないもん!ねぇ、優、やっぱりアタシ、優の事好き。」
「俺もトモミの事が好きだよ。」
トモミは泣きじゃくった。
そして
俺たちはキスをした。
俺が階段の上で。
「だけど、それも今日ここで卒業だ。これからお互いまた違う人生頑張ろうな。」
「うん…。」
トモミは泣いているが、最高に可愛い顔で俺を見上げて頷いた。
もう一度トモミを抱きしめキスをした。
慣れ親しんだ高校ともついにサヨナラだ。
しかし思い起こせばいろいろあった。
女の子を泣かせてばかり、性欲ばかり。
最低だったな。
大学いったらもっときちんと人とお付き合いしよう。
そう心に誓いながら学校を後にした…。