純粋
性同一性障害に悩みながらも人生を楽しむことができている優のおもしろおかしいストーリー。
特に恋愛はハチャメチャ。
俺は今、意気揚々と歩いている。
会社ではそこそこの立場、彼女もいる。脂の乗ったジャスト30(サンゼロ)の俺だ。
俺俺とうるさいので、自己紹介を…
名前は先崎 優
ユウと呼んでくれ。
さっきも言ったが、俺ももう三十路だ。この30年という人生を思い返してみようと思ったわけだ。
誰でもこんな事は思うのだろうが、俺は今まで、一切振り返らず、前だけ見続けてきた。
よく考えたら、結構壮絶な人生だったようだ。
せっかくだから少しずつ引き出しを開けていってみようと思う。
【小学生の終わり】
「優〜中学の制服の採寸きたわよ〜おりてきなさーい」
と、叫んでいるのはもちろん母親。
「わかった〜」
とてつもなくダルそうに一階に下りる俺。
真新しい学ランを手に持ち、俺に着せようとしているオバちゃんがいる。
「あなたが優くんね!さぁ袖を通してみて。
男の子はおっきくなるから大きめにしておきましょうね。」
母親はずっとクスクス笑っている。
俺はずっと憧れていた学ランを前にして、テンションMAXになり、
「これ着ていいの?うわーカッコイイ!」
ダボダボの学ランを纏い、踊りながら鏡の前に立ってみる。
しばらく見とれてると…
母親がまたまた笑いながら、
「ごめんなさいね〜この子、女の子なのよ〜だから学ランじゃだめなの。」
「あら〜そうだったの、このくらいの子はみんな可愛いからわからないのよね〜」
とオバちゃんも笑っている。
笑い事じゃないのは俺だ。
そう、俺、先崎 優は実は女の子なのだ。
正直この頃にはわからなかったが、今の、性同一性障害、心はオトコ、身体はオンナ。
こいつの波乱万丈人生を思い出していこうというわけだ。