5ー2 開戦 1
「うわーん。
ボロ負けしたー。」
と、ななが悔しがる。
「本当、フツーにやられたな。
俺らから仕掛けたのに。」
「でも、いい機会だったじゃないか。
お互いの力を把握することで、より良いチームが作れる。だから、そんな落ち込むことはないと思うけど。
ルッカもななも元気出してよ」
「話が拗れるからマナシスは黙ってろ。」
「それどういう意味?ルッカ。
僕だって、悔しいけどさ、でも、」
「はいはい。
あんたらが負けず嫌いなのはよーく分かった。
でもさ、めっちゃ余裕そうに遊んでるけどさ、戦時中だからね? 伝説の戦争してるからね?いまもひとが死んでるからね? 分かってる?」
と、ババ抜きをしながら負け惜しみしている3人に仲裁の声かけをする。
「「「あ、はい。」」」
詩織の言葉に怖気ずいた3人であった。
「まあ、そんなわけだ、いろいろあってアレだから、前線に移動してもらう。
極力殺さず、捕虜にしろ。
倒した奴は適当に後ろに引き渡せばいい。
協力なものたちには、後衛での前線保護を任せた。
戦争がダレないように戦線に早く出てこい。」
と、将夜は声をかける。
「了解。ウォッカ。」
「行ってきます、ウォッカ。」
「ウォッカが言うなら仕方ないなー。
ここで首を長くしててよね!」
3人は部屋の扉を開けて、向こう側にいく。
「ねえ、」
3人がいないことを確認ながら詩織は声をかける。
「ああ、分かっている。
この戦争は序章でしかない。ここで戦力を失うわけには行かない。
敵も味方もな。
ここはお互いの損傷を抑え、早く終わらせなければ」
「ええ、そうね。なんせこの後は…。
おっと、忘れてた。これ、あげるわ。
じゃ、」
その手に握られたペンダントを将夜にわたし、速やかに扉を開ける。
扉の向こうは、青空だった。
いや、いまは赤いから、違うだろうか。
その戦場は、異形なものが一方的な暴力を受けていた。その後ろのものも、近づこうとはしない。
「く、もうここまで。
ここは頼むわ。」
と、詩織は3人に目配せした。
真下をみる。
昔はもっと、緑で綺麗だったが、いまはたくさんの色がぐちゃぐちゃになっていた。
おもちゃ箱か、ゴミ箱か、と言うような汚さ。
すっと、前を向く。そして物凄い速さで、そうマッハの速さで、目の前を突き抜ける。
カキーン!
その音で、もう一度、目の前を確認する。
それは、男性。黒いフードに身を包んでも、中から、青いポロシャツと長ズボン、そして、ポロシャツの胸ポケットから、緑のカードがよく見える。
そして、そのカードには『KAP R CARD』の文字が書かれているのがうっすら見える。
その男性の顔はフードで見えない。いや、見たくなかった。