5ー1 宣戦布告
詩織にはこの先に起こる事は知っていた。
だから、1番動きやすい所の味方のように振る舞う。
「昨日ぶりね、将夜。」
境界を抜けた先には将夜の部屋があった。
「おいおい詩織さんよ。解答については触れないとしても、人の部屋に瞬間移動とは酷くないか?」
そしていつの間にか将夜が立つ。
「何言ってんの、月の入り口も作るとかめんどいしさ、お陰で瞬間移動は出来てないよまったく。」
面倒そうに座布団に座る。
「どうせこのあと宣戦布告されるんでしょ?面倒いねぇ。」
人差し指でスクリーンをつくる。
「本当だよ、濡れ衣だし。」
呆れた顔で返答する将夜。
「デド・バルバジェーネに使えし者よ!我らの世界を復讐で砂漠に変えるなら、古の伝説にならい、戦を起こそう。
我らの力に恐怖せよ。我は正しき世界を築きし者、ユーラシア・プラチナである。
復讐に狂う者よ、我らが戒めてやろう。
既に属はその手の中だ!
取り戻したくば、伝説を再び起こし、ユーラシア・プラチナに勝ちたまえ。」
齢15のプラチナは宣戦布告をする。
「TVをとうしているとはいえ、威圧感のない事。幼い頃から英才教育を受けたってのは嘘なのかしらね。」
詩織は立ち上がりながら呆れていた。
「お前は援護に回ってもらうぞ。少数精鋭グルーブメンバーを紹介しよう。
ルッカ マナシス なな。
こい。」
と立ち上がりながら喋る。
風が吹き抜ける。
ここは地下のはずだが?
「初めまして〜。なっなでーす。
貴方はダーレ?
ウォンに手を出すなら許しません。」
1人、若い女性がパーティードレスを着て詩織に喋る。
「初めまして、ななさん、ルッカさん、マナシスさん。私は悪名高き、月鈴詩織よ。
よろしくお願いするわ。
本当に少数精鋭、950Level以上の人しかいそうにないわ。」
「ん?名前を知っているのはわかるけど、いまここにいるなんて、見えてるの?」
ななが聞く。
「あー、うん。
見えてるわ。少し違うけど。
完成に近いけど、風では瞬間移動とは言えないわ。
頑張りなさい。あとウォンてなに?」
詩織の解答に、ななが口を押さえ、驚いている。
「あ、ウォンは俺のこと。帝王っていう意味で…。」
「OKよ。」
将夜の長そうな話をしたくなかったため、パスしたようだ。
「ばれてるとか、マナシスが失敗したようにしか…
手合わせ願うな。」
「おい、俺はきちんとしたぞ!ルッカ!
人に罪をなすりつけるな!
みんなが一丸となれなかった証だ!
だからいつも団結力が足りないと…」
「わかったわ。暇がありそうですし、手合わせしましょう。全員一斉にかかってもよろしいですよ。」
マナシスのタイプを苦手にする詩織は話を変えた。
「あら、舐められているわね。
貴方1人、私達にかかればチョチョイのチョイです。」
とななが獲物でも舐めるかのようなポーズをする。
「だが、強そうだ、見た感じで分かる威圧も凄いし、何よりウォンの幼なじみのようですから。」
とマナシスが話す。
「そうだな。全員で掛かろう。
ただ、誰1人手加減するな。」
ルッカが話す。
何かが壊れる音がする。
それはパリンと鳴る。
その時風景はガラッと変わり、人という人気が消えた。
「このゲーム盤でいいかしら。」
風景は変わらなくなり、街中の風景で終わる。
「ああ。」
ルッカが喋る。
「後ろに向いて、掛け声とともに三歩歩いたらスタートよ。
1・2・3!」
誰よりも早く振り向いた詩織はななを消し去る。
「な!」
マナシスが叫ぶ。
「ごめんなさい。チートは止めとくわ。」
とななが現れる。
ルッカの特攻だ。物理で突っ込むルッカを横目にすらっと避ける。
マナシスが詩織の四肢に向けて四つの矢を射る。
それにより動かなくなった詩織に向かって刃を振りかざすななの姿。
「とりゃ!」
ななの叫びと共に詩織に突き刺さる刃。
口程にもなくあっさりと終わる勝負にルッカが後ろを向いたその時。
しおりの銃弾がルッカの頬をかすめる。
その煙で隠された詩織。
突き刺さっているはずの刃は、確かに突き刺さっていた、「なな」に。
「なっ!」
そうマナシスはいう。
ななを指すのか、そうでないのかはわからない。
「あなたたちに勝機を与えましょう。
これは耐久戦。
これから使う魔法は私の防御が消えるものです。
あなたたちが耐えきり、私を攻撃すればあなたたちの勝ち。」
高く空を詩織は飛ぶ。手を広げ何かを謳う。
その時マナシスとルッカは耐え難い痛みが走る。
詳しく言えば、心臓や肺を握りしめられているような感覚。
「私を忘れるなあ!」
血の付いた刃を持つななが詩織のところまで飛ぼうとする。
ただ、届かなかった。
真ん中の風通りの良いななは、それだけの痛みも耐えられないのだろう。
「チェックメイトね、終了しましょう、無駄な争いを」
ゲーム盤は消え、きずや痛みも無くなった。