4ー4 デドの手札
「つまらない。全く。教祖様からのお呼出。なーんて。なーにが、教祖だ。厳密には信仰対象だろーが。」
白くてやけに豪華な扉を開ける。
「そうだよねー教祖様」
嫌味たらしく部屋の中の人物に問いかける。
「俺に聞かれても知らん。ユラエスタラ。」
教祖と呼ばれた少年は嫌味たらしく詩織を呼んだ。その後に扉を正面に向いたまま閉じた。
「にしても、簡素な部屋ね。現人神の部屋としては。20畳ぐらいのだだっ広い和室に、ちゃぶ台に座布団二つなーんて。紫月将夜サン」
そこは本当に簡素な部屋だった。押入れとふすまを除けば、詩織が言うだけの物しかなかった。
「詩織。立ち話もなんだし、いつまでも玄関で立ち尽くされてもアレだから座布団にでも座れ。」
そう入り口の反対の座布団に座る将夜は向かいの座布団に座るように促す。そうすると「はいはい」と詩織は座った。
「で、何?これ。」
座布団に詩織が座った瞬間。詩織の体は動かなくなった。厳密には、手首と足首と太ももからふくらはぎだ。
「拘束だけど?」
清々しい顔でさっぱりと答える。
「いや、そんなこと分かるよ。
なんでさ、久しぶりに会った親友に拘束されるとか。
なに?強制的に協力しろと?」
ふざけているのか!と詩織は口を動かす。
「君に暴れられると困るからね。
どうするのか聞いてるだけさ。」
落ち着いた様子で将夜は話す。
「別に。」
そっぽを向いて返事をする。
「あいつの計画は破綻している。
お前が一番知っているだろ?」
首を傾げ、何のこと?と言う顔をする。
「俺の特殊能力は千里眼だ。全てを見通す。本当に知らない様だな。そこにあるしおりを見ればわかる。詩織だけに。ま、どうやらユーラシア様はユーラシア様復活しか頭に無いらしいけど。」
ギャグを飛ばしながら話しているからか、緊張した空間が和らぎ居心地の良い空間になっている。
「どう言うことよ。」
身を乗り出す様に詩織は問う。
「どう言うことって、うちの地下の原本見たなら分かるだろ?
お互いの目的はお互いの神の復活だ。
そこで問題なのがどちらかのみの復活は不可能だと言うことだ。
だがあいつはその事を考えるどころか忘れてやがる。
悪いが本当に破綻してるぜ。」
落ち着いた様子で適切な説明をしていく。
「なるほど。で、あんたらはどうすんの?」
嫌味たらしくも思える顔で、詩織は問う。
「俺の力で魅湖と隔離し、俺が封印する。」
右手をちゃぶ台の上に乗せて、手の平から紫色の炎が溢れ、詩織を円状に囲み、その後、砂の様に消えていく。
「あの子はもう魅湖じゃない。
くるみなのよ。」
始め、ポカーンとした将夜だが、赤紫色の眼になった瞬間、ハッとした顔をしてニヤりと笑う。
「へへ、そうかよ。
で、どうするつもりだ?」
もはや将夜の千里眼に反応することもない。詩織はちゃぶ台に寄っ掛かり肘をつきながら口を開ける。
どうやら手首の拘束は溶けたようだ。
「あんたらの敵になる気はない。
あんたらの味方になる気はない。
それだけよ」
いつのかにか他の拘束もとけ、立ち上がり、扉へ向かう。
「そうかよ。気を付けろよ。」
座ったまま、詩織に顔を向けながら将夜は話す。
「えぇ。ありがと。」
それだけ言い、詩織はドアを開けて行った。