4ー2 私の力
「え?あ、はい。先生。案内の方はどちらに?」
って、もういない。
「初めまして。詩織さん。勝手に呼び出してごめんなさいね」
その声に驚き、振り返る。そこには苦笑いをする小綺麗な案内人が立っていた。
「…その様子だと、生徒と施設の人って感じの話じゃないわね。私に個人的に用があるみたいだけど。
…何かしら。皆に迷惑かけるから手短にいいかしら?」
そこはもはやコンクリート造りの綺麗な施設入口ではなく、施設裏の樹海だった。
詩織には分かっていた。相手が何を望んでいるかなんて。
「ごめんなさいね。私には手短にする術なんてないの。
だから、貴方が手短にしてくれないかしら。
そう、貴方が大人しく負ける事でね!」
草木は途轍もないスピードで弱っていく。
詩織は感じた。コレを発動させてはならないと。
「政府の方針により、魔法を使う事で生き物が犠牲になり、生き物が犠牲になった事で魔法を使う様になった。永遠に続くループ、そこで唯一消えるのは何の罪もない動物の命。
それが、魔法の女神だって?
ふざけないで、これだけの命が犠牲に成りながら、幼児の魔法ごっこなんて。
私は何度も見てきた。沢山の動物が生き地獄に落ちる所を。
コレ以上、こんなバカなことはさせないわ。
あの子達のためにも、未来のためにもね!」
そこには底知れない想いがあった。
その代償も知らず、ファンタジーに溺れて楽しむ者たち。
それに怒りが沸いていたのだ。
「自然を使おうが、窒素を使おうが、代償は変わらないわ。
真に、命を愛すならこんなバカなことはやめなさい。」
その詩織の声に、耳も傾けない。
その時だ。
ドクンと、大きく胸を打った。
その不整脈に合わせて彼女の左眼は青白く光り、右眼は紅く光った。そして太陽と月の天秤をモチーフにしたモノクロのドレスを身にまとった。手にはいつも結び目に付けていた星型が埋められた水晶玉がスティッキの先についていた。
そのスティッキから光が輝きそれがあちこちに広がっていた。
「この力は、もしかしなくてもセ」
そこから先の声は光による現象音で塞がれてしまった。
光が消えると、元の姿に戻っていた。他にもあの自然法の凄まじい力も消えて、草木はまた元通りに生茂っていた。
この奇跡の力に詩織は呆然としていた。
そこに案内人が走り寄った。
「私の壮大な勘違いだったようだ。
本当にすまない。そしてありがとう。
あと、私は案内人じゃなくて、この魔素処理場の工場長の江南・ルッサンです。」
いきなり好意的に近付いてきた江南に戸惑う詩織だったが、このあと何事もなくバスへ戻って行った。
「さて、あの子がどっちに着くか楽しみね。
まあ、工場長としてはユーラシアだけど。」
「工場長。早く戻ってください」
「あの子達の見送りをだな。」
「それは他の方がやっているので!」
「それでは失礼ではないか」
「そんな言い訳いいんで」
「えー。まじかよって。ちょっと、いたい、痛い。髪引っ張らないで!お願いだからってギャー」