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凡人枠シリーズ

悪魔はいません。戦争のあと、眠れない夜が残ったのです ~前世精神保健福祉士の私は、「悪魔憑き」とされた帰還兵を自分の部屋へつなぎます~

掲載日:2026/07/31

 悪魔は、もういなかった。


 除霊術士が書いた紙は、三枚。


 それでも、帰還許可はゼロだった。


 エーミルは今も、「悪魔憑き」の収容棟から出られなかった。


「三度目も陰性だ」


 乾いた音とともに、オスカー医官の印が除霊証明書へ落ちた。


 白い紙の中央に刻まれた神殿印は、三枚とも同じだった。


 悪魔なし。呪いなし。再除霊の必要なし。


 私は三枚を重ね、王国帰還支援局が運営する浄化・帰還院、その院長であるベルンの机へ置いた。


「では、エーミルさんの帰還許可をお願いします」


「出せない」


 ベルン院長は、三枚の証明書ではなく、その横に置かれた帰還申請書を指した。


 夜間異常――有。


 家族保証――無。


 元職復帰――不可。


 三つの欄に、赤い印が押されている。


 三枚の白い「悪魔なし」が、三つの赤い印に負けていた。


 王国の帰還申請書には、悪魔の有無を書く欄はあった。帰りたい場所を書く欄は、なかった。


「昨夜も叫んだ。三十日間の観察期間は、また一日目からだ」


「悪魔はいないのでしょう」


「悪魔がいないことと、安全であることは別だ」


 院長は指を組んだ。


「家族も引き取り保証に署名していない。元の勤務にも戻れない。この状態で外へ出し、何か起きたら誰が責任を取る?」


 その問いを、私は何度も聞いたことがあった。


 前世でも、この世界でも。


 ただし、責任を問う人ほど、誰が何を担当するかを決めたがらない。


「現在の申請書では、家族一人が全責任を負うことになっています」


「家族なのだから当然だろう」


「夜に困ることがある成人男性を、仕事と子育てをしている姉が、一人で二十四時間見守るのですか」


「だから、保証できないなら帰せない」


 見事な円環だった。


 帰るには家族の保証がいる。


 家族が保証できないから、帰れない。


 帰れないので、地域で何ができるか試すこともできない。


 私は申請書を持ち上げた。


 傷の治癒状況。


 悪魔の角の本数。


 呪いの色。


 夜に叫んだ回数。


 ずいぶん細かい。


「本人が、どこへ帰りたいかを書く欄はありませんね」


「必要ない。帰る場所は家族の家だ」


「家族の家へ帰りたいとは限りません」


「では、どこへ帰るというのだ」


「それを、これから本人に聞きます」


 ベルン院長は眉間へ指を当てた。


「君は退所書類補助係だろう」


「はい。ですから、書類に必要なことを聞きます」


「本人の希望欄はないと言ったのは君ではないか」


「ありません。ですから、白紙を一枚添えます」


 院長はしばらく私を見た。


 机の端で、オスカー医官が小さく咳払いをした。


 笑いを隠したらしい。


 私の前世の職業は、精神保健福祉士だった。


 病院から地域へ移る人の相談を受け、住まい、仕事、家族、医療、行政をつないでいた。


 本人の代わりに人生を決める仕事ではない。


 選べる道を増やし、選んだ先へ渡れる橋を架ける仕事だった。


 剣も振るわない。


 薬も出さない。


 魔法も使えない。


 転生前、白い空間で、転生管理局の凡人枠担当・ツクヨにそう説明したとき、その青年は本気で首をかしげた。


『医者でも治癒師でもない。剣も魔法もない。では、何ができるのですか?』


『治療が終わった人の、帰る場所を探します』


『ずいぶん地味ですね』


『地味な役目です。でも、誰かの暮らしには、かけがえのない仕事です』


 今も、その評価は間違っていないと思う。


 この世界には、傷を塞ぐ治癒魔法はある。けれど、帰る部屋や、眠れない夜の連絡先までは作ってくれない。


 派手な奇跡が終わったあとに残るものを、地味な仕事は拾える。


「一度だけだ」


 ベルン院長が言った。


「一時間、面談を許可する。ただし、帰還の条件は変わらない」


「承知しました」


 条件が変わらないなら、条件を変えるための材料を集めればいい。


 私は白紙を一枚持ち、収容棟へ向かった。


 エーミルは、面談室の奥に座っていた。


 二十代半ば。


 短く切られた髪には、まだ軍の名残があった。


 椅子を壁際へ寄せ、扉が正面に見える位置を選んでいる。


 私がイリスと名乗っても、彼は顔を上げなかった。


「また、戦場の話ですか」


「いいえ」


 その答えで、初めて彼の目が動いた。


「何人死んだか。何を見たか。何が怖かったか。そういう話は、今は聞きません」


「では、何を聞くんです」


 私は白紙を机へ置いた。


「ここを出たあと、どこで朝を迎えたいか。まず、それを聞きます」


◇ ◇ ◇


「俺が何を言っても、悪魔の言葉だと記録される」


 エーミルは白紙を見たまま言った。


「眠れないと言えば、悪魔がいる。食堂へ行きたくないと言えば、人を襲うおそれがある。姉の家へ帰りたくないと言えば、家族への敵意がある」


「これまでの記録は、そういう書き方でしたか」


「違うんですか」


 私は筆記具を机の中央へ置いた。


 私の側ではなく、彼の手が届く位置に。


「今日、私が書いたものは、提出する前にあなたが読みます。違うところは直します。書きたくないことは、書きません」


「院長にも?」


「院長へ渡す内容も、一緒に決めます」


「そんなことが許されるんですか」


「禁止するルールは、ありませんので」


 エーミルがわずかに顔を上げた。


 笑ったわけではない。


 けれど、さっきより呼吸が深くなった。


 私は白紙を四つに区切った。


 住む場所。


 昼の役割、または仕事。


 苦しい夜の連絡先。


 人へ話してよいこと、話したくないこと。


 その下に、もう一つ小さな欄を作る。


 本人が選んだこと。


 本人署名。


「何です、これは」


「帰還支援表です」


「そんな書式はない」


「今、作りました」


「勝手ですね」


「書式というものは、最初の一枚だけは誰かが勝手に作るものです」


 今度は、口元がほんの少し動いた。


 私は最初の欄を指した。


「姉の家へ帰りたくない、と先ほど言いましたね」


 エーミルの肩が固くなった。


「それも、家族への敵意と書くんですか」


「姉の家では暮らしたくない。でも、姉の近くにも住みたくない――そういう意味ですか」


 返事はすぐには来なかった。


 廊下の向こうで、鍵束が鳴った。


 エーミルの指が、椅子の縁をつかんだ。


 音が遠ざかるまで、私は次の質問をしなかった。


「……姉の近くがいい」


 やがて、彼が言った。


「歩いて行けるくらい。でも、同じ家は嫌だ」


「理由を記録してもいいですか」


「理由まで要りますか」


「必要なければ書きません」


 彼は少し考えた。


「姉には子どもがいる。夜中に俺が叫んだら、起こしてしまう。姉は朝から仕事だ。俺を見張っていたら、眠れない」


「では、『姉の家から歩ける距離に、別の住まいを希望』と書きます。理由は、審査会には出さない。住居を探す際に必要なら、あなたの許可をもう一度取る。それでどうでしょう」


「……それなら」


 私は彼の言葉どおりに書いた。


「次に、どの時間が一番困りますか」


「夜です」


「夜の何時ごろ、とは分かりますか」


「鐘が鳴ったあと。眠ろうとするとき」


「何が起こりますか」


「眠れない。眠っても、叫んで起きることがある」


 私は「夜、眠り始める時間に困ることがある」とだけ書いた。


「大きな音はどうですか」


「金属がぶつかる音は、駄目です」


「体がどうなりますか」


「動けなくなる」


「そのとき、触れられるのは」


「やめてほしい」


「声をかけられるのは」


「短くなら」


「出口が見える場所と、見えない場所では?」


 彼の目が、面談室の扉へ向いた。


「見える方がいい」


 私は書き足した。


 大きな金属音の際、動けなくなることがある。


 突然触れない。


 短く声をかける。


 出口が見える場所を選ぶ。


「こんなことを聞かれたのは、初めてです」


「悪魔の有無とは関係のない質問ですから」


「あなたは、悪魔を信じないんですか」


「信じています。本物はいますし、除霊も必要です」


 三枚の証明書を思い出す。


「ただ、悪魔がいないと分かった後まで、何でも悪魔の仕事にするのは、少し働かせすぎだと思います」


 エーミルが目を瞬いた。


「本物の悪魔から、業務範囲外だと苦情が来ます」


 エーミルが息を吐いた。


 今度は、はっきりと小さく笑った。


 次に、仕事について聞いた。


 完全に元へ戻れるかではない。


 今でも嫌いではない作業は何か。


 どの時間なら試せそうか。


 何があると難しいか。


「軍では、補給倉庫にいました」


「荷物を運ぶ仕事ですか」


「物資の受け入れと払い出し、それに在庫の記録です。数が合わないと、夜まで帳簿を見ていた」


「嫌でしたか」


「数は、裏切らないので」


「では、朝の静かな時間に、在庫を数える仕事なら?」


 エーミルは、すぐには答えなかった。


 できると言って失敗すれば、また帰還不許可の理由にされる。


 その沈黙からは、そんな警戒が伝わってきた。


「試してから決めることもできます」


「試して、できなかったら?」


「計画を直します」


「帰還不許可ではなく?」


「できなかった理由を確かめずに不許可にするなら、試す意味がありません」


 彼は白紙を引き寄せた。


「朝。人が少ない時間なら」


「何時間くらいから始めますか」


「三時間……いや、二時間」


「二時間と書きます」


 彼が自分で減らした時間を、私は増やさなかった。


 面談の終わりに、情報を渡してよい相手を確認した。


 姉には、近くに別の住まいを希望していることと、翌朝の連絡方法について話してよい。


 戦場での出来事は話さない。


 オスカー医官には、眠りと音への反応を伝えてよい。


 倉庫には、大きな金属音を避けること、突然触れないこと、途中で休めることだけを伝えてよい。


 夜に叫ぶことも、戦場の事情も伝えない。


 書き終えるたび、私は紙をエーミルの側へ回した。


 誰に、どこまで渡すか。最後の線を引いたのは、いつも彼だった。


「本当に、それだけでいいんですか」


「仕事に必要なのは、働くための条件です。あなたの過去を全部知ることではありません」


 エーミルは、私の書いた文章を一行ずつ読んだ。


 一か所だけ、筆を取った。


 私は「姉の支援」と書いていた。


 彼は「支援」を消し、「連絡」と書き直した。


「姉に、俺の生活を背負わせたくない」


「分かりました」


 その日の午後、私はリーゼを訪ねた。


 エーミルの姉は、仕立屋の作業台で子ども服の袖を縫っていた。


 帰還院からの者だと名乗ると、縫い針を置き、真っ先に言った。


「弟を見捨てたわけではありません」


「そうは思っていません」


「でも、あの保証書には署名できません。夜中ずっと見張ることも、何か起きたら全部私の責任だと言われることも……」


「署名しなくて構いません」


 リーゼの指が止まった。


「でも、署名しなければ、弟は帰れないと」


「その条件を変えるために来ました」


 私は、エーミルが共有を許した範囲だけを伝えた。


 姉の家から歩ける距離に、別の住まいを希望していること。


 同居は望んでいないこと。


 困った夜、最初に連絡する相手は姉にしないこと。


「私では、ないんですか」


 安堵と寂しさのどちらとも言えない声だった。


「リーゼさんには、仕事とお子さんの生活があります。弟さんを愛していることと、夜通し一人で支えられないことは、矛盾しません」


 リーゼは、作業台の上の布を整えた。


「私は、何をすればいいでしょう」


「何なら続けられますか」


 しばらく考えたあと、彼女は答えた。


「週に一度、一緒に夕食を食べることなら。あの子が嫌でなければ」


「連絡を受けるとしたら?」


「翌朝、弟が知らせてほしいと望んだときは、連絡してください。でも、夜中の最初の連絡先にはしないでほしい」


「合鍵は持ちますか」


 リーゼは首を横に振った。


「持ったら、あの子の部屋ではなく、私が見張る部屋になってしまいそうです」


 その答えを、私は帰還支援表へ書き加えた。


 毎晩の見張りより、週に一度の夕食。


 小さくても、二人が続けられる約束の方が、暮らしには強い。


 オスカー医官にも会った。


「私は悪魔がいないことは証明できる」


 彼は三枚の証明書を指で叩いた。


「だが、帰った後の寝床までは作れない」


「寝床は家主と探します。先生には、医療が必要なときの入口をお願いします」


「私の仕事が終わったわけではない、と?」


「除霊が終わったことと、医官との関わりが不要になることは別です」


 オスカー医官は少し考え、週に一度の面談と、夜番詰所から要請があった場合の判断を引き受けた。


 倉庫にも話をつけた。


 かつてエーミルと働いた兵站担当者が、王都西倉庫で午前二時間の試し勤務を認めてくれた。


 もちろん、本人が共有を許した条件だけを伝えた。


 夕方、私は収容棟へ戻った。


 帰還支援表の四つの欄は、まだ半分ほどしか埋まっていない。


 それでも、白紙だった朝とは違う。


「姉は、何と」


「週に一度、一緒に夕食を食べたいそうです」


 エーミルは、表から目を上げなかった。


「毎週は、多いかもしれない」


「では、最初は二週に一度にしますか」


「……いや。週に一度で」


 私はそのまま書いた。


 誰かのために決めたのではない。


 彼が自分で選んだのであれば、それでよかった。


 それから十日をかけて、空き部屋を探し、受入先の書面をそろえた。


 ベルン院長は、すぐには首を縦に振らなかった。


 それでも、私が部屋の扉の向き、夜間の連絡先、倉庫の休憩場所まで一つずつ確認し、毎朝提出した報告書に抜けがなかったことは見ていた。


「君の細かさを、三日分だけ信用する」


 そう言って、面談記録とオスカー医官の意見書へもう一度目を通し、三日分の日中外出許可に印を押した。


 住居の内見と二度の試し勤務に限り、私が同行すること。


 それが条件だった。


◇ ◇ ◇


 姉の家から歩いて十分。


 小さな広場を一本外れた路地に、空き部屋があった。


 一階の角部屋で、窓は中庭へ向いている。


 部屋の入口から寝台まで、視線を遮る壁はない。


 扉も窓も、部屋の中央から見えた。


 床板には補修跡があり、漆喰の壁には細いひびがあった。上等な部屋ではない。


 それでも寝台は一つだけで、看守が収容者を確かめる覗き窓も、起床を告げる鐘もなかった。


 エーミルは入るなり、扉の蝶番を確かめた。


 次に窓を開け、外の音を聞いた。


 中庭に干した布の石鹸の匂いと、どこかで鍋をかき回す小さな音が入ってきた。


 それから廊下へ出て、玄関までの距離を自分の足で測った。


「ここなら、出口が見えます」


「夜は静かです」


 家主が言った。


 年配の男性だった。


 表情には、まだ迷いがある。


 内見の前に、エーミルの同意を得て、私は「夜に困ることがある」「対応する連絡先は別にある」とだけ伝えていた。


「ただ、その……帰還兵の方が夜に困ることがあると聞きまして」


 エーミルが私を見た。


 私は何も答えず、彼を待った。


 話す範囲を決めるのは、私ではない。


「夜、眠りにくいことがあります」


 エーミルが言った。


「声が出ることもあるかもしれません。でも、困ったときに連絡する場所は決めています。あなたに対応を頼むつもりはありません」


 家主は目を瞬かせた。


「暴れたりは?」


「したことはありません」


「それ以上のことは、話したくありません」


 エーミルがそこで話を止めたので、私はそれ以上を補わず、契約条件の説明へ戻った。


「家賃は王国の帰還手当から継続して支払われます。最初の二か月は、支援局が家主さんへの支払いを保証します。夜間の連絡先も別にあります。家主さんへお願いするのは、通常の賃貸契約だけです」


「私が見張る必要はない?」


「ありません」


 家主は、机の上へ一本の鍵を置いた。


 黒ずんだ鉄の鍵で、輪の片側だけが、幾人もの手に磨かれて光っていた。


「では、試行帰還の許可が出たら」


 エーミルは、その鍵へ手を伸ばさなかった。


 まだ自分のものではないからだろう。


 けれど、部屋を出る直前に一度だけ振り返った。


 帰還支援表の「住む場所」の欄へ、住所が入った。


 次は、仕事だった。


 王都西倉庫での試し勤務は、日の出から二時間。


 人が少なく、荷車の出入りも少ない時間を選んだ。


 初日のエーミルは、帳簿を受け取ると、積まれた麻袋を一つずつ数え始めた。


 一列を数え終えるたび、手元の木札を一枚、裏返す。


 棚卸しで厄介なのは、数えられないことではない。同じ列を二度数えたのに、本人が気づかないことだ。


 二列目まで終えたところで、彼は帳簿を指した。


「麦粉、四十八袋とあります」


 倉庫の担当者がうなずく。


「昨日入った分を足してな」


「麦粉は四十七です。袋は四十八ありますが」


「数え間違いじゃないのか」


「三列目の端だけ、封紐が緑です。麦粉は白。あれは豆粉です」


 調べてみると、そのとおりだった。


 麦粉の中へ、豆粉の袋が一つ混じっていた。


 軍の倉庫では、薄暗い場所でも中身を取り違えないよう、品ごとに封紐の色を変える。文字を読むより早く、札が濡れて文字が読めなくなっても見分けられる。


「よく分かったな」


 担当者が感心すると、エーミルは木札をそろえ直した。


「前にも、よく混ざっていたので」


 その声には、自慢も卑下もなかった。


 ただ、自分の知っている仕事をした人の声だった。


 私は少し離れた場所で、帰還支援表へ記録した。


 朝の在庫確認は可能。


 数の照合に力を発揮。


 大きな問題は起きなかった。


 そう書こうとした、そのときだった。


 倉庫の奥で、金属製の荷車が敷居を越えた。


 車輪が跳ねる。


 荷台の側板が落ちた。


 鐘を叩き割ったような音が、石壁へ何度も反響した。


 エーミルの手から、木札が落ちた。


 彼は振り返らなかった。


 両腕が体の横で固まり、視線だけが開いた扉へ向いている。


「おい」


 担当者が近づこうとした。


 私は手で止めた。


 触れられたくない。


 短く声をかける。


 出口が見える場所。


 面談で聞いたことを、頭の中で確かめる。


 分かっていたはずだった。


 けれど私は、倉庫に金属製の荷車があることまで確認していなかった。


 私の確認不足が、またエーミルの欄に赤い印を増やすかもしれない。


「エーミルさん」


 返事はない。


「扉は開いています」


 彼の喉が動いた。


 周囲で、誰かが小さく言った。


「悪魔が戻ったのか」


 エーミルの肩がさらに上がった。


 私は声を張らなかった。


「今、どうしたいですか」


 数秒。


 あるいは、それ以上。


「……出たい」


 かすれた声が返ってきた。


「外へ出ますか。隣の休憩室へ行きますか」


「外」


「分かりました」


「でも」


 彼は動かないまま続けた。


「仕事を辞めるとは、まだ書かないでください」


「書きません」


 私は担当者へ道を空けてもらった。


 エーミルは自分の足で扉まで歩いた。


 中庭へ出ると、壁際の木箱に座った。


 私は隣へ座らず、少し離れた場所に立った。


 彼が望まない近さまで、距離を詰めない。


 長い沈黙のあと、エーミルが言った。


「できると思ったんですが」


「在庫確認は、できていました」


「音がしたら、何もできなかった」


「音については、最初から教えてもらっていました」


 私は帰還支援表を開いた。


 そこには、確かに書いてある。


 大きな金属音を避ける。


「私が、聞いたことを具体的な作業条件に反映し切れていませんでした。確認不足です」


 エーミルがこちらを見た。


「あなたの計画が、間違っていた?」


「はい」


「それを記録するんですか」


「記録しないと、同じ間違いをします」


 私は表へ書いた。


 初回試行。金属製荷車の音で継続困難。


 本人は退出を選択。


 退職の意思はなし。


 職場環境の再調整が必要。


「帰還不許可の理由になりますか」


「計画を直す理由にします」


 翌日、エーミル、倉庫担当者、私の三人で条件を組み直した。


 午前二時間は変えない。


 作業台は横扉の近くへ移す。


 金属製荷車は、試し勤務の時間だけ別の通路を使う。


 小口の荷物には木製の台車を使う。


 苦しくなったときは、青い木札を台へ置く。


 言葉が出なくても、それを休憩の合図にする。


 途中で帰っても、試行期間中は解雇理由にしない。


「ずいぶん条件が多いな」


 担当者が頭をかいた。


 私は古い帰還申請書を思い出した。


 悪魔の角の本数を三種類も書き分ける王国である。


 人が働くための条件を六つ書くくらい、許されていい。


 二度目の試し勤務では、エーミルは最初から青い木札を作業台の端へ置いた。


 一時間ほど経った頃、別の建物から金槌の音が響いた。


 彼の手が止まった。


 木札へ触れる。


 担当者は何も言わず、横扉を開けた。


 エーミルは中庭でしばらく休んだ。


 十分後、自分で戻ってきた。


「続けますか」


 担当者が聞く。


「あと、四十五分だけ」


 その日、彼は予定していた二時間のうち、一時間四十五分を働いた。


 完璧ではない。


 けれど、自分で止まり、自分で戻り、自分で終える時間を決めた。


 帰還支援表の「昼の役割」の欄が埋まった。


 夜の連絡先には、帰還院の夜番詰所とつながる夜間連絡札を選んだ。


 札を握って名を告げれば、夜番が応じる。


 必要ならオスカー医官へつなぐ。


 姉へ連絡するのは、翌朝、エーミルが望んだ場合だけ。


 医療上の緊急対応は、夜番詰所とオスカー医官が担う。


 最後に、情報共有の欄を確認した。


 家主へ伝えること。


 倉庫へ伝えること。


 姉へ伝えること。


 医官へ伝えること。


 それぞれを別々に書いた。


「この一文は消してください」


 エーミルが指した。


 私が書いた「姉が週に一度見守る」という箇所だった。


「見守る、ではなく、一緒に夕食を食べる、です」


「直します」


 私は線を引き、書き換えた。


 彼は最初から最後まで読み直した。


 それから、「本人が選んだこと」と書かれた欄へ、ゆっくり署名した。


 エーミル。


 文字は少し震えていた。


 けれど、他の誰の筆跡でもなかった。


◇ ◇ ◇


 帰還審査会の日、ベルン院長の前には二種類の書類が置かれた。


 王国の正式な帰還申請書。


 そして、私たちが作った四欄の帰還支援表。


「これは正式書式ではない」


 ベルン院長は、支援表を持ち上げた。


「はい」


「審査資料として扱えというのか」


「そのために作りました」


「正式でないものを?」


「正式な書式だけで判断した結果、除霊済みの人が十一か月収容されています」


 ベルン院長は表情を変えなかった。


 だが、支援表を机へ戻した。


 審査室には、エーミル、リーゼ、オスカー医官、倉庫の担当者がいた。


 家主からは、条件付きで入居を認める書面が届いている。


 審査席の端にいた帰還院の事務官が、支援表をめくった。


「ここまで一人に合わせるのは、特別扱いではありませんか。ほかの帰還兵に示しがつきません」


「義足の長さを一人ずつ合わせることを、特別扱いとは呼びません」


 事務官の眉が寄った。


「それは、目に見える戦傷だ」


 オスカー医官が三枚の除霊証明書を指でそろえた。


「エーミルも戦傷者だ。戦場から戻って以来、眠れず、金属音で動けなくなることがある。悪魔ではないと証明したが、困り事まで存在しないと証明した覚えはない」


 私は帰還支援表へ手を置いた。


「王国は、戦えるように人を送り出しました。ならば、戻った人がまた暮らせるように支えることも、王国の仕事です」


「前例になるぞ」


「はい。収容を延ばす前例ではなく、必要な支援を本人と確かめる前例にします。そのために、結果も費用も記録します」


 事務官は黙り、ベルン院長を見た。


 院長は支援表を私へ返さなかった。


「続けろ」


 私はまず、役割分担を一つずつ説明した。


 住居。


 姉の家から徒歩十分の借り部屋。


 家賃は王国の帰還手当から継続して支払う。


 最初の二か月は、支援局が家主への支払いを保証。


 家主へ伝えたのは、夜間に困ることがあることと、別に連絡先があることだけ。


 仕事。


 週二日、日の出から二時間。


 金属製荷車を避け、横扉近くの作業台と休憩場所を確保。


 青い木札を休憩の合図とする。


 途中で退出しても、試行期間中は即時解雇しない。


 家族。


 リーゼは同居しない。


 二人が合意した週一回の夕食を続ける。


 夜間の最初の連絡先にはならない。


 生活を一人で保証しない。


 医療と夜間連絡。


 オスカー医官が週に一度面談。


 夜間連絡札で夜番詰所へつなぐ。


 医療上の判断が必要なら、オスカー医官へつなぐ。


 支援を利用したことだけを理由に、帰還許可を取り消さない。


 説明を聞き終えると、ベルン院長はオスカー医官を見た。


「悪魔はいないのだな」


「三度確認した。いない」


「では、今後、夜に叫ばないと保証できるか」


「できない」


 オスカー医官は、ためらわず答えた。


「私が証明できるのは、悪魔と呪いがないことだ。生活上の困り事が二度と起きないという証明書は、私の職域にはない」


「医官が保証できないものを、外へ出せというのか」


「医療上の保証と、生活上の支援計画は別です」


 私は四欄の表を開いた。


「一度も困らないことは保証できません。ですが、困ったとき、誰が何を担うかは決められます」


「家族が保証しないのに?」


 リーゼが両手を膝の上で握った。


「私は、弟と一緒には住みません」


 声は少し震えていたが、言葉は明確だった。


「仕事と子どもの生活があります。夜通し見守ることもできません」


 ベルン院長が口を開きかけた。


 リーゼは、その前に続けた。


「でも、弟を見捨てるわけではありません。週に一度、一緒に夕食を食べます。翌朝、弟が望んだときに連絡を受けます。私にできることと、できないことを、弟と決めました」


 倉庫の担当者も口を開いた。


「完全復帰とは言えません。午前二時間だけです」


「それで雇用と呼べるのか」


「二時間分の仕事をして、二時間分の賃金を払います。帳簿の間違いを一つ見つけた。少なくとも、その二時間は役に立っています」


 私は担当者の言葉へ、少しだけ眉を寄せた。


 するとエーミルが先に言った。


「役に立てなければ、帰ってはいけませんか」


 担当者は目を見開いた。


「いや、そういう意味じゃ……」


「少なくとも、この支援計画では、仕事を帰還の条件にはしていません」


 私は補った。


「仕事は、本人が望む暮らしの一部です。続けられなくても、それを理由に住居まで失わせません」


 ベルン院長が指先で机を叩いた。


「安全を保証できない者を外へ出せと、君は言うのか」


「現在の収容棟でも、エーミルさんは夜に叫ぶことがあります」


「だから監視している」


「叫んだあと、何をしていますか」


 院長の指が止まった。


「記録し、観察期間を一日目へ戻す」


「それ以外には?」


 答えはなかった。


 私は夜間連絡札を机へ置いた。


「今の制度には、困ったときの手順がありません。ただ、困った事実を数え、帰還を延期しています」


「収容しておけば、住民には影響しない」


「その代わり、一人の暮らしを、家族でも職場でも地域でもない場所に留め続けています」


 声を強くしすぎないよう、私は一度息を置いた。


「新しい計画では、何か起きた際の連絡先があります。医官、職場、家主、家族、行政が、それぞれ引き受ける範囲を決めています。誰か一人に全部を背負わせません」


 ベルン院長は、帰還支援表の最後へ目を移した。


 本人が選んだこと。


 本人署名。


「この署名は」


「エーミルさんのものです」


「君が作った計画ではないのか」


「私が作ったのは、欄だけです」


 医官は治療を知っている。


 倉庫の担当者は仕事を、家主は部屋を、リーゼは家族としての距離を知っている。


 けれど、その全部を使ってどんな一日を暮らしたいかは、エーミルにしか決められない。


 私は横にいるエーミルを見た。


 説明すべきことは、もう説明した。


 最後の選択まで私が話せば、この表も古い申請書と同じになる。


 ベルン院長も、エーミルへ視線を向けた。


「今後一度も叫ばないと、誓えるか」


 エーミルの手が膝の上で握られた。


 長い沈黙のあと、彼は立ち上がった。


「誓えません」


 室内の空気が固まった。


 それでも、彼は座らなかった。


「叫ばないと誓うたびに、俺は眠れなくなりました。眠れなければ、また一日目に戻されると思ったからです」


 ベルン院長は何も言わない。


「これからも、叫ぶ夜があるかもしれません。金属の音で動けなくなることもあると思います」


 エーミルは机の上の夜間連絡札を見た。


「でも、その夜に誰へ助けを求めるかは決めました。仕事で苦しくなったとき、どう休むかも決めました。姉に何を頼み、何を頼まないかも決めました」


 そして、帰還支援表の「住む場所」の欄へ指を置いた。


「姉の家へ戻されるんじゃない」


 声は大きくなかった。


 けれど、部屋の全員に届いた。


「俺は、俺が選んだ部屋へ帰りたい」


 ベルン院長は表を読み直した。


 最初の欄から、最後の署名まで。


「六十日間の試行帰還とする」


 リーゼの肩が動いた。


 私は言葉を挟まず、次を待った。


「条件は、週一回の医官面談と、支援局への定期報告。勤務や住居の計画を変更する場合は、本人を含めて再協議すること」


「夜に叫んだ場合は?」


 私が尋ねた。


 ベルン院長は夜間連絡札を見た。


「定めた連絡手順を使う」


「帰還失敗として扱いますか」


 しばらくして、院長は首を横に振った。


「支援を利用した事実として記録する。許可取消しの理由にはしない」


 私はその言葉を、審査記録へ書いた。


 一字ずつ、間違いのないように。


 家主から預かっていた封筒を、エーミルの前へ置く。


 中には、あの角部屋の鍵が入っている。


「帰還許可です」


 彼はすぐには受け取らなかった。


 手を伸ばし、止める。


 それから、親指と人差し指で鍵の輪をつまんだ。


 軽い金属音がした。


 エーミルの肩が、ほんのわずかに揺れた。


 収容棟の鍵束より、ずっと小さな音だった。


 閉じ込めるためではなく、自分で開けるための音だった。


 エーミルはそれを握り直した。


 リーゼは合鍵を求めなかった。


 ただ、弟へ言った。


「今週の夕食、何がいい?」


「まだ水曜です」


「仕込みに時間がかかるの」


「では、豆の煮込み」


「子どもが嫌がるわ」


「俺の歓迎の夕食では?」


 リーゼが笑った。


 エーミルも、ごく短く笑った。


 鍵は、彼の手の中に残っていた。


◇ ◇ ◇


 二か月後、王国帰還支援局に新しい係ができた。


 地域帰還支援係。


 初代調整官は、私だった。


 立派な肩書のわりに、与えられた机は以前と同じだった。


 肩書の文字数に応じて机が広くなる制度は、まだないらしい。


 ただし、机の上の書類は変わった。


 傷の治癒状況。


 悪魔の有無。


 それらの欄は残した。


 必要な確認だからだ。


 その隣に、新しい欄が増えた。


 本人が帰りたい場所。


 困る時間と場面。


 今できること、試してみたいこと。


 困ったときの連絡先。


 人へ伝えてよいこと、伝えたくないこと。


 そして最後に、本人が選んだことと、本人署名。


 ベルン院長は、王国全土での採用を支援局へ申請する前に、まず帰還院で試行することを決めた。


 正式な試行書式にするまで、七人の官吏が印を押した。


 悪魔の角には三本までしか記入欄がないのに、官吏の印には上限がないらしい。


 偏見が一日で消えたわけではない。


 家主が見つからない人もいた。


 仕事を望まない人もいた。


 家族と距離を置きたい人もいた。


 だから、同じ計画を誰にでも当てはめることはしなかった。


 エーミルの次に面談した帰還兵は、収容棟を出るまで十一か月もかからなかった。


 五週間だった。


 ある午後、執務室の扉をエーミルが叩いた。


 以前より少し伸びた髪が、窓から入る風に揺れた。


「仕事帰りですか」


「今日は休みました」


「何かありましたか」


 彼は腰の袋から、夜間連絡札を取り出した。


「昨夜、これを使いました」


「はい」


「鐘のあと、眠れなくて。扉の外に誰かいる気がして、確認しても、また気になって」


 私は続きを急かさなかった。


「夜番につながりました。医官を呼ぶか聞かれました。でも、その前に少し話したいと言いました」


「夜番は何と?」


「今いる場所と、扉が閉まっているかを一緒に確認してくれました。それから、朝になったら医官へ行くか、自分で決めるようにと」


「どうしましたか」


「朝、オスカー医官に会いました。倉庫にも、今日は休むと伝えました」


「担当者は?」


「次の勤務日に来い、と」


 エーミルは連絡札を机へ置いた。


「札を使ったのに、鍵を返せとは言われませんでした」


「使うための札ですから」


「そうなんですが」


 彼は自分の手を見た。


「収容棟では、叫んだら日数がゼロに戻りました。今は、困った夜があっても、次の朝があります」


 私は支援記録を開いた。


 夜間連絡札を使用。


 本人の希望により夜番が対応。


 翌朝、医官面談。


 勤務先へ本人から休む旨を連絡。


 住居、勤務とも継続。


「支援利用。計画どおり」


 私が読み上げると、エーミルが首をかしげた。


「成功、と書かないんですか」


「まだ暮らしの途中ですから」


「失敗でもない?」


「もちろん」


 彼はしばらく考え、それから連絡札を袋へ戻した。


「今夜は、姉の家で夕食です」


「豆の煮込みですか」


「子どもの希望で、肉入りになりました」


「交渉に負けましたね」


「暮らしは、だいたいそういうものらしいです」


 聞き覚えのある言葉だった。


 私が笑うと、エーミルも笑った。


 その日は、六十日間の試行帰還を終え、正式な帰還へ切り替える確認日でもあった。


 六十日分の記録に並んでいたのは、許可を取り消す理由ではなく、暮らしを続けるために使った支援だった。


 確認する場所は、本人が選べる。


 エーミルが選んだのは、会議室でも診察室でもなく、自分の部屋の前だった。


 私たちは、そこまで一緒に歩いた。


 小さな広場を抜けると、リーゼの家の窓に灯りがともっている。


 肉と豆の煮込みの匂いが、路地まで流れてきた。


 エーミルはそちらへ手を上げた。


 窓の向こうで、子どもが小さな手を振り返した。


 彼は姉の家へ直行しなかった。


 夕食の前に、まず、自分の部屋の前へ立った。


 袋の中には、夜間連絡札がある。


 仕事で休む合図に使う青い木札もある。


 そして、そのどちらより使い込まれた一本の鍵がある。


 エーミルは鍵を取り出した。輪の内側だけが、何度も握った指に磨かれて光っていた。


 鍵穴へ差し込む。


 小さな金属音に、彼の肩がわずかに揺れた。


 それでも、手は離れなかった。


 収容棟では、鍵の音は、誰かが入ってくる音だった。


 扉を開ける鍵は、いつも他人の腰にあった。


 今、鍵は彼の手の中にある。


「閉めても、自分で開けられる」


 エーミルは、確かめるように言った。


「はい」


 私が答える前に、彼はもう鍵を回していた。


 扉が開く。


 部屋の奥には、自分で選んだ寝台がある。窓辺には朝のための水差しがあり、机の端には次の勤務日に使う青い木札を置く場所がある。


 三枚の証明書だけでは開かなかった帰還の扉を、エーミルは一本の使い込まれた鍵で開けた。


 その向こうにあったのは、英雄の凱旋でも、奇跡でもない。


 困った夜には助けを呼べること。


 苦しい朝には休めること。


 それでも、自分の暮らしへ戻ってこられること。


 エーミルは部屋へ一歩入り、振り返った。


「夕食に遅れますね」


 路地の先から、豆の煮込みの匂いがした。


「荷物を置いたら、行きましょう」


 彼は袋を寝台へ置き、もう一度、鍵を手の中で確かめた。


 それから扉を閉め、自分の手で鍵をかけた。


 閉じ込めるためではない。


 夕食のあと、自分で開けて帰ってくるための扉だった。


 その向こうには、自分で選んだ寝台と、次の朝が待っていた。

本作は架空世界を舞台とするフィクションです。「悪魔憑き」という語は作中の偏見を示す表現であり、心の不調を怪異や暴力性と結びつける意図はありません。作中の制度と支援方法は、物語のために作成したものです。


治療の後にも、住まい、仕事、家族との距離、相談先を含む暮らしは続きます。本作は、派手な奇跡ではなく、白紙一枚、青い木札、夜間連絡札、そして自分で回せる一本の鍵が「帰れる」を作る物語として書きました。イリスの仕事は地味ですが、書類に欄を一つ増やすたび、誰かの明日の選択肢も一つ増えます。


エーミルの新しい部屋に、眠れない夜だけでなく、よく眠れた朝と、週に一度の豆の煮込みの匂いが少しずつ増えていけばと思います。リーゼの子どもたちが豆の煮込みを好きになるかは、もう少し時間がかかりそうです。


最後までお読みいただき、ありがとうございました。


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