第92話 アリスも戦う! システィにお願いされたもん!
ラッパを持ったメイド服姿のアリスが村と畑との境目にいる。その姿が見えた瞬間、思わず声を張り上げた。
「バカッ! アリス、はやく逃げろ!」
「アリスも戦う! システィにお願いされたもん!」
俺の言葉にそう叫び返して、アリスはラッパに口を付けた。おい、今そんな事をしてる暇は。そう口に出そうとする前に、アリスのラッパが周囲に鳴り響く。
パーパパパー! パパパーパーパパー!
そのラッパの音を聞いた瞬間、普通の音とは違う大きな違和感が全身を駆け巡った。何度も聞いた事のあるラッパ音の筈なのに、ズシリと音の奔流が全身を貫いていくような感覚。
この音には、信力が乗せられている。驚愕している間もなく、変化はいきなり現れた。
「ブハッ! ハッ!」
「ハサウェーさん!?」
「し、死ぬかと! 思った!」
アリスのラッパを聞いた瞬間、先ほどまで心神喪失としか思えない状況だったハサウェーさんが正気を取り戻したのだ。ハサウェーさんは大きく息を吸い込み、なんとか呼吸を整えようと荒い息を繰り返す。ハサウェーさんだけじゃない。見渡す範囲に居る護衛達は皆、動けるようになっているようだ。
護衛達が動けるようになった事は、山巨人も気づいたようだ。すぐさま大きく息を吸い込み、そして動きを止める叫び声を上げた。
ボアアアアアアアアッ!!!
叫び声と共に、全身を突き刺す衝撃。この声にも、アリスのラッパと同じように信力が込められている。信力が原因なら、信力で対処できるはず。気合を入れて全身に信力を巡らせる、その前にアリスのラッパが再び周囲に響き渡った。
パーパパパー! パパパーパーパパー!
音の奔流が全身を貫いていくような感覚。山巨人の害意ある叫び声に紛れていた信力を、アリスのラッパの音が押し流していく。
「すげぇ! アリスの嬢ちゃん、吟遊詩人だったのか!」
「吟遊詩人はこんな事できるんですか!?」
「おう! あいつら楽器だけもって世界中旅する連中だからな!」
答えになっているのかなっていないのか良く分からない返答をしながら、ハサウェーさんはふらつく頭に自身で張り手を一発。気合を入れなおして立ちあがった。とはいえ、未だに本調子って感じではない。
「戦えますか?」
「動けはする。あいつ、魔族一歩手前だ。普通の山巨人の魔法は俊敏化だけだ。動きを止められたアレは知らない。もうちょい休めば、戦える」
一つ一つ、端的に。恐らくまだしたが回らないのだろうハサウェーさんは、必死の表情で伝えるべき事柄を口にする。
「分かりました。一旦後ろに下がってください。あいつは俺が引きつけます」
「俺らは良い。アリスの嬢ちゃん! 守ってくれ!」
「当たり前です。あいつは、俺の妹分ですよ」
ハサウェーさんの言葉にそう返事を返して、つるかめ波で空中に飛び出していく。山巨人は明らかにアリスを認識したが、ちょっと動きが鈍い。というよりは驚いている? なにに驚いているんだ。良く分からないが、山巨人の動きが鈍っているならそれでいいか。
適度に着地しながら米つきバッタのように飛び上がり、繰り返し自己主張をすると山巨人がこちらに気付いたらしい。しかしデカいな。近くで見ると改めてそう思う。俺も8歳児にしては結構デカくなってきてると思うが、明らかに俺4人分くらいのデカさに見える。
これを相手に木刀でぶん殴っても効果は薄そうだな。というか肌も岩石並なんだろ? 仏恥義理が折れちゃったら流石にラーメン屋の店長に申し訳ないぞ。まぁ、もう一度創れば良いんだけど気分的な意味で。
ボアアアアアアアアッ!!!
パーパパパー! パパパーパーパパー!
山巨人とアリスの音のぶつけ合いがまた起こる。あ、こら。俺を無視すんじゃねぇ。顔の近くでぴょんぴょんと跳ね回りうっとうしい感じの動きをしたら、山巨人が嫌そうな顔でぶんぶんと右腕を振り回し始めた。よっしゃよっしゃ。それで良いんだそれで。
俺の役割は簡単だ。アリスがターゲットにならないように注意を引きながら、ハサウェーさん達が回復するまでの時間を稼ぐだけでいい。残念な事に俺が使える攻撃手段ででこの状況を打破できそうなものがないからな。ブラックマーケットにあったロケットランチャーでも創り出せたら話は違うんだが、流石に9900円じゃ碌な物が買えない……
あ、手りゅう弾ならイケるか? アレ確か数千円くらいだったはず。ただ手りゅう弾数発で何とかなる気がしないんだよな、こいつ。
「ガガガガッー!」
「あらよっと」
ぶんっと振り回された右腕をくるりと空中で宙返りしてかわし、ついでに仏恥義理で叩いてみる。だが岩を叩いたみたいな感触が返ってくるので、普通の攻撃はこいつには効果がなさそうだ。同じ場所に何発も叩き込めば効果はあるかもしれないが、その前にハサウェーさん達が復活してくるはず。なら攻撃のリソースを全て回避運動につぎ込むのが最善手。
「キャアアッ!」
そう思っていたのだが、その考えは甘すぎるものだったようだ。
10数度めの回避運動を行ったタイミングで、俺の耳にアリスの悲鳴が飛び込んできた。山巨人は間違いなく引き付けている。であればアリスに近づかせないように飛び回っていれば大丈夫。そう頭の中で計算し、そちらに意識を割いていなかった故の油断。
空中で身を捻り、アリスへと視線を向ける。そこには、アリスと同じくらいの体格の山巨人がアリスに覆いかぶさっている姿があった。
もう一体? いや、それにしては小さすぎる。小さい個体、つまり子供?
ほとんど一瞬の思考。自分が見落としていたそれらを頭の中でつなぎ合わせるための、わずかな隙間。
ボアアアアアアアアッ!!!
回避に専念していたため間近で喰らった山巨人の叫びが俺の全身を貫き。俺の全身にも等しい大きさの右手が、蠅のように俺を叩き落とした。
タロゥ(8歳・普人種男)
生力38 (38.0)
信力99 (99.9)ー
知力38 (38.0)
腕力43 (43.0)
速さ39 (38.0)
器用38 (38.0)
魅力39 (39.0)
幸運25 (25.0)
体力37 (37.0)
技能
市民 レベル3 (100/100)ー
商人 レベル3 (100/100)ー
狩人 レベル3 (100/100)ー
調理師 レベル3 (100/100)ー
地図士 レベル3 (100/100)ー
薬師 レベル3 (40/100)
我流剣士 レベル4 (100/100)ー
木こり レベル2 (70/100)
楽士 レベル3 (35/100)
教師 レベル3 (38/100)
パチン・コ流戦闘術 レベル5 (100/100)ー
テイマー レベル1 (13/100)
絵師 レベル3 (51/100)
語り部(紙芝居) レベル5 (58/100)
水兵 レベル1 (1/100)
執事 レベル2(49/100)
スキル
夢想具現 レベル2 (100/100)ー
直感 レベル4 (21/100)UP
格闘術 レベル5 (46/100)
剣術 レベル5 (100/100)ー
弓術 レベル5 (99/100)
小剣術 レベル5 (99/100)
暗器術 レベル5 (99/100)
斧術 レベル4 (97/100)
飛行術 レベル1 (47/100)UP
フォークダンス レベル5(40/100)
フォークマスター レベル0 (40/100)
念話 レベル0 (91/100)
女たらし レベル3 (100/100)ー
サニム流マナー レベル2 (3/100)
取得可能スキル
素人○貞 レベル5(100/100)ー




