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ラーメンが食べたくて 異世界転生ハードモードとんこつ味  作者: ぱちぱち


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第30話 レンツェル神父。まだ凸っちゃだめです

 神聖歴579年 春の中月 21日



「タロゥ! あんた、大丈夫なの!?」



 孤児院の寝室にロゼッタが駆け込んできた。息切れしている様子から、随分と慌ててきたのが伺える。そちらに視線を向けて、包帯でぐるぐる巻きにされた右腕を軽く振って返事を返す。



「もがもがもが」


「ああ、あんた! こんなに包帯塗れに……! そんな大怪我を!?」


「いや。こいつのケガは右手だけ。他は妹ちゃんが頑張って巻いただけだよ。ね、妹ちゃん」


「うん!」



 口元まで包帯で巻かれたせいで上手く喋れないが、俺の言いたい事はネネが代わりに口にしてくれた。その言葉にうんうんと頭を縦に振ると、ロゼッタは俺とネネを交互に見た後、ふぅ、と一つ息を吐く。



「良かった……あんたが昨日刺されたって聞いて、心配したんだから」


「もがもがもが」


「ありがとうって多分言ってる」


「それは言わないで良いわ……大体わかるから」


「あ、そ。で、そちらさんはどちらさん? タロゥの知り合い?」


「イールィス家のロゼッタよ。そいつとはビジネスパートナーって所ね。そちらさんは?」


「森番ジジの娘、ネネ。タロゥとはビジネスパートナー」



 ネネの捕捉にロゼッタはそう答えて、ネネを見る。あれ、そういえば君たち初対面だっけ。見知らぬ人と他人の家で顔を合わせるって意外と気まずいよね。うん。わかるわぁ。なに話せばいいか分からなくなるもんね。


 ロゼッタとネネは数瞬互いに見つめ合った後、ふっとどちらからともなく視線を外す。ロゼッタは室内をぐるりと見回した後、俺に視線を向けた。



「一応医者を呼んでるから診てもらいなさい。イールィス家お抱えの医者だから腕はいいわ」


「診察と治療はもううちの母様がやった。町一番の薬師ララの治療で不足とは言わせない」


「……そう。タロゥが手間をかけさせたみたいね」


「構わない。タロゥは身内だから」


「もがもがもが」



 喧嘩はやめて。争わないで。妹の情操教育に悪いでしょ。俺の願いは虚しく包帯の壁によって阻まれ、なにが気に食わないのかロゼッタとネネは無表情のままにらみ合いを続けた。


 諦めて妹に視線を向ける。もしこの昼ドラみたいなやり取りを見ていたら教育に悪いからな。身を挺してでも見せないようにしようと思ったのだが、流石は我が妹。大物というか、ネネとロゼッタの諍いをガン無視して俺に巻き付けた包帯に赤いサインペンで落書きをし始めた。あ、こら。赤はダメだよ。血と間違っちゃうから。いい子だからこっちの紫にしなさい。






 さて、何故俺が孤児院のベッドで寝かされているかというとだ。簡単に言えば昨日、暴漢に襲われた際に良いのを貰っちゃったからである。良いのを貰ったというか、ナイフを受け損ねて右手を傷つけちゃったんだよね。


 一緒に戦ってたメメさんは無傷だったんだけど、俺の方は数の差で避けきれないって場面があったんだ。筋を傷つけたって訳じゃないみたいだから痛み以外は大したことがなくて、事実やられた反撃で相手をぶちのめせたんだけど怪我をしてしまった事は事実。そういう時でも対処できていたメメさんの動きを見るに、やはり武術系スキルのレベルが足りてないんだろう。


 だが、危険を冒した甲斐はあった。戦っている最中、出現してから半年以上レベルが上がらなかった我流剣士のレベルが1になったのだ。3人目を倒した辺りで明らかに動きの精度が上がった気がしたから、多分その辺でレベルアップしてたんだろう。


 武術系スキルは実戦を経てこそ成長する。これを学べたのは大きい。



「タロゥくん。兵士から連絡が来た時は驚いたよ」



 ロゼッタと一緒にやってきたというダリルウさんが、レンツェル神父と連れ立って寝室に入ってきた。ロゼッタはネネとなにやらお話があるというので、妹を連れて外に出てもらっている。大丈夫かな、あいつら妹に変な事吹きこまないかな……?



「暴漢どもは全て捕縛した。今は中央街で専門の人間が情報を洗っている最中だ」


「もがもがもが」


「大したケガはないと聞いていたのに、こんなに厳重に……さぞや怖かったろうね」


「イールィス殿。タロゥのケガは右腕だけですよ」



 レンツェル神父はそう言って俺の顔に巻かれた包帯をぶちぶちと引きちぎる。包帯ってこんなに簡単に千切れるものじゃないと思うんだけど、レンツェル神父にとっては障子紙みたいな強度って事か……。



「……ええと。大したケガがなくてよかった。いや、まぁ良くはないんだけど、比較的って意味でね」


「あ、はい。そこは大丈夫です」


「強盗の件も耳にしている。よりにもよって外街の孤児院に強盗に入るバカが存在するとは思っていなかった。件の犯人は近隣の農村から街に出てきた者だったから神父様の事を知らないのも頷けるが、その程度の事しかこの街を知らない食い詰め者がなぜ胡椒の件を知っているのか。私も調べている所だ」



 ダリルウさんはそう言って、深い溜息を吐く。彼にとっても今回の件は笑えないものなのだろう。外街とはいえサニム市内で納税を行っている市民が、別に火事場でも戦時でもなんでもない平時に10人近い暴漢に襲われたのだ。普通に大事件である。


 まぁ、襲ってきた連中はそのほとんどが食い詰め者ばかりで質はお察しというものだったが。一人でも武芸の心得がある奴がいたら人数差で押しつぶされていただろうから、こっちとしては助かったんだけどね。



「それで、犯人は分かったのですか?」


「ええ。大まかな目星はつきました」



 流石は情報が命の商家。昨日の今日でもう当たりをつけてきているとは。いやまぁ、つい先日孤児院への物資が中抜き喰らってる件でレンツェル神父はお怒りですって言っておいたから、本気度が違うだけかもしれないけど。こんだけ連日問題が起きたらレンツェル神父の血管がいつ切れてもおかしくないから、その危機感は正しい。レンツェル神父、会話の間ずっと無表情だしね。


 この人の何が怖いって、一度一線を越えられたらいきなりフルスロットルになる所だろう。コボルトの時のアレを目にした事があればそうそう舐めた真似は出来ないと思うんだけど、なんで中抜きなんてやっちゃったかな。森番が配下の狩人を見回りに寄越してくれたりメメさんを護衛につけてくれたのも、その辺の危機意識を共有した上での判断かもしれないね。実際、おかげで助かった。あの襲撃の時、もし俺一人だったら逃げるしか手はなかったからね。


 まぁ、とはいえだ。この後のお話次第では白い鎧を纏ったレンツェル神父が中央街に凸する事になるかもしれないのは変わらないから、ダリルウさんにはその辺の匙加減も期待したいところだ。オブラートに包んで報告してくれて一向にかまわない。真実よりも解決こそが今回の主眼だと言えるだろう。



「まず、今回の件。情報が漏れたのは議会から、というのは正しい」


「5大商家とは一度腹を割って話をするべきかな」


「レンツェル神父。まだ凸っちゃだめです」


「待て待て待て。話を最後まで聞いてくれ神父様」



 5大商家で構成される議会で漏れたってそれサニム上層部から漏れたってのと同一やん。なんでレンツェル神父が居る場所でそんな事言っちゃうかなぁこの人は、と思ってるとダリルウさん曰くちゃんと真犯人が居るという事だ。



「議会では毎回議事録をとっている。言った言わないで終わらせるには我々の発言は重すぎるから、これは当然の事だ。その議事録はある程度の身分のものなら申請をすれば目にすることが出来るんだ。その中に森番殿が孤児院で歓待を受け、胡椒を食べたという記載も残っている。そしてその議事録をそれを読んだ人間も、記録は残っている」


「なるほど」


「一応、ジジ殿を擁護しておくが。役職を持つ以上、彼はサニムへの報告義務が幾つか存在する。街の有力者からどのようなもてなしを受けたか、なんてのもその一つだ」


「……なるほど」


「義務の報告にしては非常に嬉しそうだったというのも付け加えておくがね。流石に個人的すぎるため議事録から削除させたが、タロゥくんが提供したラーメンについて彼は非常に熱く語ってくれたよ。カルホトラ殿は1月も付き合いがあったのに自分は食べさせてもらっていないと嘆いていた。近々オープン予定のラーメンレストランの予約をその場でもらったよ」



 レイラさんは、うん。あの人こっちを囲い込もうって気持ちがすっげぇ強かったからこっちから引いちゃってた所はある。ラーメンなんてあの人に食べさせてたらイールィス家から後ろ盾の座を奪い取る、なんて言い出してもおかしくないと思ってたからむしろファインプレーだと思ってるんだけども。


 しかし、そうか。これ本格的に俺がラーメンコショーを出したのが一番悪かったな。いや、悪いのは分かってた。自重すべきだってのも分かっていたんだ。


 問題になるという事は分かっていた……分かっていたけど、出さざるを得なかったのだ。ラーメンを提供する上で、調味料を一緒に提供しないのは片手落ちどころじゃない。せめてゴマとラーメンコショーくらいは用意しておくのが、ラーメンフリークとして最低限の流儀だろう。あくまでも最低限である。これはラーメンフリークとして外せないマナーの一つだ。


 ああ、だが。俺のこの軽率な行いのせいで妹に危険が迫る可能性が出てきたことは看過できない。これだけは排除しなければいけない。俺が常に傍に居て守れるなら良いのだが、現状の俺の力ではそれも難しい。メメさんを見て思ったのだ。現状の俺はそこらの街の喧嘩自慢と同程度。ちゃんとした訓練を受けた人間にはとてもかなわないレベルだと。


 であるなら、一先ずの安心を得るためには、原因を排除するしかない。この街の中の安全を確保する必要がある。



「イールィス家は、この件の解決をどうするおつもりでしょうか。街中で強盗事件が立て続けにおきた。これは明らかにつながっていると思いますが」


「逆に尋ねよう。タロゥはどうしてほしい?」



 俺の質問に、ダリルウさんは為政者としての顔でそう尋ね返した。もちろん、俺の返答は決まっている。親指を立てて、喉を掻っ切る仕草を見せるとダリルウさんは満面の笑みを浮かべた。


 街中でやらかすような危険な連中だぞ。根絶やしにする以外に選択肢なんかないだろ。



タロゥ(6歳・普人種男) 


生力21 (21.0)ー

信力63 (65.4)UP

知力21 (21.0)ー

腕力21 (21.0)ー

速さ21 (21.0)ー

器用21  (21.0)ー

魅力20 (20.7)UP

幸運11  (11.0)ー

体力21  (21.0)ー


技能

市民 レベル3 (15/100)

商人 レベル2 (41/100)

狩人 レベル2 (99/100)

調理師 レベル3(18/100)

地図士 レベル1(77/100)

薬師  レベル1(7/100)

我流剣士 レベル1(22/100)

木こり レベル1(83/100)

楽士 レベル0(95/100)

教師 レベル0(63/100)


スキル

夢想具現 レベル1 (100/100)ー

直感 レベル1  (75/100)UP

剣術 レベル1  (92/100)

フォークダンス レベル4(65/100)


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