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ラーメンが食べたくて 異世界転生ハードモードとんこつ味  作者: ぱちぱち


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第28話 中抜きっすね。分かります。

 神聖歴579年 春の中月 17日


 ロゼッタの家、イールィス家は商業都市サニムを運営する5大商家の一つである。家業として船問屋の元締めをしており、このサニムの港に関わる全般がイールィス家によって差配されている。イールィス家の家長ダリルウさんはサニム最強の軍事力であるサニム海軍の長でもあるため、軍事力という点においてもサニム随一と言っても良い。


 そんなお偉いさんであるダリルウさんに御呼ばれして、街用の衣装を身に纏ってイールィス家にお邪魔する事になった。週に一度のラーメンデリバリーサービスではなく、純粋な客として、だ。


 イールィス家とはラーメン以外にも、ロゼッタを通してラーメン器の売買及び俺の後ろ盾になってもらうという契約を交わしている。孤児院の皆とはまた別のベクトルで身内といっても良い間柄になっているため、害される恐れはない。ないと思う。が、やはり権力者に御呼ばれされるというのはあまり気持ち良いものではない。


 どんな要件かとやきもきしながら部屋に通されると、ダリルウさんとロゼッタ。それにイールィス家のシェフの3名が食卓に座って俺を待っていた。この瞬間に非常に面倒そうな空気を感じたが、流石に帰るわけにもいかない。この場面で帰ったら全力でイールィス家に泥を塗りたくるようなもんだしね。



「やぁ、タロゥ。待っていたよ」


「あ、はい……」



 両手を組み、険しい表情を浮かべたままダリルウさんは「そこにかけなさい」と食卓の椅子を指さした。言われた通りに座ると、ダリルウさんはうん、と小さく頷いて口を開く。



「実はね。つい先日、森番のジジが議会に報告に来たんだ。その際に彼から、孤児院でもてなしを受けたと聞いてね」


「あ。ああ、あれですか。ええ、レンツェル神父も森の事を伺いたかったそうなんで、森番様と配下の皆様を孤児院で。なにか問題でも?」



 なにを言われるかと戦々恐々していたら、つい先日行われた森番とレンツェル神父との話し合いの事だったか。孤児院でもてなしたというのが問題であるとしたら、あれか。赤貧に喘ぐというから施してやってるのにもてなしを開く余裕があるなら支援はいらんよなぁ、とかいう事だろうか。もしそうなら、流石にレンツェル神父がブチ切れるぞ。


 レンツェル神父に聞くところによると、彼が孤児院を開く際に彼が外街の防衛力となる代わりに最低限の食料を、というのがレンツェル神父と街との契約らしい。凡そ30年ほど前の契約で、当時は1日朝と夕で食べられる程度には支援を貰っていたそうだ。


 それが年月を追うごとに少しずつ支援が細くなっていき、俺と妹が孤児院にはいった時には一日に1人小さな芋一つというギリギリ餓死しないラインを探ってるとしか思えない量になっていたのだ。これが昨年の春の話だね。


 そこから前世の記憶を取り戻した俺がイールィス家と交渉をして毎日の食料を増加させたり、自力で稼げない年少組にパンを与えたり、木こり祭りで大量に薪を確保して年長組に売りにいかせたりした結果、現在の孤児院は全員ある程度は食べることが出来る状況に持っていったのだ。妹に毎日ラーメンを食べさせても他の孤児たちから何も言われないくらいには、俺も頑張ってる。


 つまり現在、孤児院は食料の大半を街に頼らずに手に入れている。この状況で支援を削るとか打ち切るとか言い出したら、白い鎧を纏ったレンツェル神父が中央街に突撃してきても文句言えないだろうな。この話を年長組にしてる時のレンツェル神父はずっと無表情だったから、臨界点はそろそろだと思う。



「もちろん、問題なんてないさ。街の為に危険を冒した森番たちをもてなしたんだからね。責任ある市民の一人としてよくやったと言いこそすれ、問題だなんていう訳がないだろう? うちはその。標的から外れてると考えて良いよね……?」


「さようですか。では、今日俺が呼ばれたご用件はいったい? 支援物資の量が増えたらレンツェル神父の眉間のしわも無くなるんじゃないでしょうか」


「ああ。実はその際に森番が自慢げにもてなしの内容を語ってくれてね。その件で君に聞きたい事があるんだ。議会で早急に支援物資の件は話し合おう。私も、まさか一日一人が芋一個なんて量だとは思ってなかったんだ。食料品を営むグンラル家に物資の供給を任せていたんだが、担当者が変わる際の引継ぎが上手くできていなかったようでだね」



 中抜きっすね。分かります。


 ダリルウさんが口にしない部分は、あえて聞かない事にした。5大商家の人たちにとってはレンツェル神父が外街にいてくれればそれでいいわけで、別に孤児院の支援なんてそんなにやる気はないんだろう。最低限食わせるものを与えれば後は放置。それくらいに考えていたんじゃないかな。


 そんな状況でずっと孤児院を運営していたレンツェル神父もどうかと思うが、レンツェル神父は戦闘能力以外はね……政治とか経営とかそういうのは本当に分からないみたいなんだよね。あ、宗教の知識はあるか。とはいえ俺が動いて、現状がおかしいと口にしたおかげでようやくもしかして騙されていた? とか思い至るレベルだからな、あの人。


 あれでなんとか回っていたのは孤児院を出ていった元孤児たちが自分の稼ぎから支援してくれたりとレンツェル神父が慕われているのと、多少腹が減っててもコボルトの集団を皆殺しにしちゃうくらいの圧倒的な戦闘力のおかげだろう。レンツェル神父レベルの人はこの周辺国家にも一人二人くらいらしいから、あそこまで突き詰めた個になればなんでもどうにでもなる、という事だ。


 まぁ、サニムの上層部が孤児院のことをどうでもいいと思っていることは良く分かったから、こっちはこっちでそれなりの対応をするだけだ。レンツェル神父には俺と妹の命を拾ってもらった恩がある。少なくとも妹が孤児院を出るまでは全力で支援していくつもりだし、その後も可能な限り孤児院が回る様に手を貸すつもりだ。


 それは兎も角として、森番をもてなした内容で呼び出し、か。となるとラーメンコショーの事だろうな。胡椒は大規模な市場があるサニムでもめったに出回らない西のスルド王国で扱われる商品だ。スルド王国との間にはサニムが所属する都市国家群とはバリバリ敵対関係にある帝国があるため、中々商品が入ってこない。


 つまり、貴重品である。


 前世の地球でも胡椒は時期によっては同じ量の金にも等しいと扱われている事があった。これは冷凍技術がなかった中世、防腐剤として胡椒は必要不可欠であったのに、供給が困難だったからだ。


 魔法という技術があるこの世界でも、その点は変わらない。木こり祭りで知り合ったイールィス家お抱えの水魔法使い曰く、魔法が使える人間は大規模な都市でも100人いるかどうかくらいであり、その中でも氷魔法を扱える魔法使いは指で数えられる人数しか居ないらしい。水魔法使いが修練を重ねて氷魔法へと至るらしく、俺にこの話をしてくれた彼女もまだそこには至っていないのだという。


 そんな一つの都市にも数名しかいない魔法使いに一々冷凍させるよりは、まだ胡椒を使った方が良い、と考えるのが普通だろう。そして、その必需品である胡椒の供給源ははるか遠方の海を渡った先にある国。当然値段は上がる。需要と供給が釣り合っていないのだからこれは当然だ。


 そこに、その貴重品であるはずの胡椒をもてなしで好きなだけ使わせたという話が出てきた。それは気になるだろう。特に船問屋として流通を扱うイールィス家なら。


 さて、この質問にどう答えるか。自分にとって一番の利益を得るにはどうするか。頭の中で様々な考えを巡らせていると、ダリルウさんは両手の指を組み合わせ、テーブルに両肘をつけたまま俺に向かって語り掛けてくる。



「もてなしの際、ジジ殿はおさかなラーメンという非常に美味なラーメンを食べ、その際にラーメン用の胡椒を手渡されたと言っていた。この件を君に問いただしたい」


「鯛出汁ラーメンです。おさかなラーメンというのは俺の友人が勝手につけたあだ名みたいな……いや、良いか。はい、確かに味を変えるためにラーメンコショーを用意しました」


「私が食べるジローラーメンには、何故その胡椒がないのか。明確な答えを、聞かせてもらいたい」


「ですがこのラーメンコショーはラーメンとセットで出す事によって……なんて言いました?」


「私もジローラーメンを食べる時に胡椒が欲しい。ジジ殿だけズルい」



 矢のような視線で俺を射すくめながら、ダリルウさんは本音全開の言葉を口にした。目をパチクリさせながらその言葉の意味を考えて、他に意味はないよな。と確認した後に終始無言のままのロゼッタを見ると、ロゼッタは無表情のままなにも言わなかった。同席しているシェフはなにか言いたそうにしていたが、雇い主親子がなにも言わないから口を出さない事に決めたのだろう。多分。



「ダリルウさん」


「なんだいタロゥくん」


「次のラーメンの時にラーメンコショーをつけますんで今日は帰って良いですか?」


「良いだろう。楽しみにしてるよ! あ、その胡椒は間違っても市場で売りに出したりしないでくれよ。下手するとやけくそに孤児院に強盗を働くバカが出るかもしれないからね」


「あ、はい。気を付けます」



 俺の言葉にダリルウさんは満面の笑顔を浮かべて許可をくれた。あと、急に真顔になって為政者の顔になる辺りは流石なんだけど、その前の全てが彼の威厳をぶち壊している。その顔をずっと維持してくれたらロゼッタも表情を殺したりしないで済んだろうに……というか、やっぱラーメンコショー売れないか。貴重品過ぎるってのも考え物だな。


タロゥ(6歳・普人種男) 


生力21 (21.0)ー

信力63 (63.5)UP

知力20 (20.5)UP

腕力21 (21.0)ー

速さ21 (21.0)ー

器用21  (21.0)ー

魅力19 (19.8)UP

幸運11  (11.0)ー

体力21  (21.0)ー


技能

市民 レベル3 (12/100)UP

商人 レベル2 (37/100)UP

狩人 レベル2 (95/100)UP

調理師 レベル3(15/100)UP

地図士 レベル1(75/100)UP

薬師  レベル1(1/100)UP

我流剣士 レベル0(92/100)UP

木こり レベル1(79/100)UP

楽士 レベル0(92/100)UP

教師 レベル0(60/100)UP


スキル

夢想具現 レベル1 (100/100)ー

直感 レベル1  (55/100)UP

剣術 レベル1  (75/100)UP

フォークダンス レベル4(60/100)

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