第121話 百合厨かよ。カルデラの魔物はそんなんばっかだな
「陸ザメだ! 少女の肉を好み、特に仲睦まじい様子の少女に強い執着を見せ執拗に追う悪魔のような魔物だ!」
「百合厨かよ。カルデラの魔物はそんなんばっかだな」
誰かがやたらと詳しい生態を叫んだのを皮切りに、学生たちから悲鳴が聞こえてくる。今回の学生は女学生が多いからな。今の話を聞いたらそら悲鳴も上がるわ。山巨人さんの純朴さが懐かしい。サニム帰りたい。現実逃避はここまでだ。しかしデカい。最初に思い浮かんだのはその言葉だった。100人余りが乗れる船を持ち上げるほどの巨大な身体は、俺がこれまで最大の生き物だと思っていた山巨人さんたちを明らかに凌駕している。
怖いか、人間ども。そんな言葉が聞こえてきそうなほどの威容に、冒険者の一人がごくりと唾を飲み込んだ。
「ザンム!」
「おーけー」
声をかけた瞬間、隣に立つザンムの気配が膨れ上がる。ザンムのスキル、緋熊によってザンムは全長4m近い巨大な赤毛の熊に変貌させる。山巨人とも格闘戦が行えるデカさだが、それでも目の前の巨鮫には及ばない。だが、一息で丸呑みされる他の人間よりは大分戦いになるサイズになる。
4枚のヒレを使って地面の上に立つ陸ザメは、ぎょろりと頭部に着いた眼を動かして俺たち、とくに己に及ばないまでも巨躯を持つザンムに注目しているようだ。陸ザメは大きな唸り声を上げてガチガチと牙を鳴らし、ザンムを睨みつけると邪魔物だとでも言わんばかりに唸り声をあげて大きな口から牙を発射した。前世風に例えるなら、早口で喋る老人の入れ歯が突如前に向かって飛んでいく光景とでも言うべき異様な光景だ。身構えていなければ対応できなかったその攻撃に、他の冒険者たちが反応する前に俺は衣服と背中の間から取り出すようにボーリング球を取り出し、上空にポイっと放り投げる。
「打出ー、おおだまたいほー」
そのボーリング球をザンムが全力で殴りつけ、更に『打出』の要領で加速させて飛来する牙へぶつける。一瞬の拮抗の後、流石に質量差があったのか牙が撃ち落とされたが、ボーリング球も勢いを失い陸ザメまで届かずに地に落ちる。後であれ回収しとかないと。ラーメン3杯分もするんだ、あの玉。
「全員、ヒレを狙え!」
「正面に立つな! 丸呑みされて終わるぞ!」
「学生を非難させろ! 獣よけはいつでも使える準備だ! 臭い? 言ってる場合か!!」
俺達の攻防を見た冒険者たちが気を取り直し、一斉に動き始める。指揮役の狼人種のベテラン冒険者はほんっとうに嫌そうな表情を浮かべながら特攻露西亜丸の瓶を手に持ち、叫んだ。流石に瓶を開けることはしていないが、手に持つことも嫌そうだ。俺は嫌いじゃないんだけどな、あの匂い。嗅覚が鋭い人種の人からはめちゃめちゃ嫌なことが連想されるって大不評だ。キャンプ初日に嗅いだネズコ先生曰く故郷の森が大火で消えた事を思い出す臭いらしい。どういう理屈でそう感じるかは不明なんだが、複数人が近い事を言ってるからまぁ、そうなんだろう。
下痢止めの薬のはずなんだけどなぁ。そう思いながらつるかめ波を使って空に上がり、陸ザメの注意を引く様に頭の周囲を飛び回る。チラチラと視界に入ってくる俺がうざったいのか、陸ザメはヒレを攻撃する冒険者たちよりも俺に向かって牙を打ち出してくる。おお、凄いな。サメの歯ってすぐに生えるとは聞いたが連射出来るほど速いんかい。
飛来するサメの牙を回避すると、ぐぐっとサメが4枚のヒレを折り曲げて姿勢を低くし、次の瞬間にピョーンと音がしそうな跳ね方で空中へ飛び上がる。嘘だろ、と思う間もなくその巨大なヒレを翼のように羽ばたかせて風を掴み、サメは高速で俺に向かって突撃してくる。
「水陸どころか空もかよ! どういう生き物なんだお前は!」
「陸ザメはヒレを使って空も飛ぶ! 長時間は飛べないが!」
「そういう大事な説明はもうちょっと早く! あと援護プリーズ!」
「すまん! 今助けるぞ! こっちに飛んでくれ!」
「了解!」
ガチガチと牙を鳴らしながら迫る陸ザメを引きつけながらつるかめ波を使ってキャンプ地の上空を飛ぶ。空を弧を描く様に飛ぶと、陸ザメは俺を追って二度羽ばたきをした後、方向転換をして再び追ってくる。小回りは明らかにこちらが上だが、でっかいヒレで風を掴むからか速度はあちらの方が速い。
「良いぞ、タロゥ! そのまま上空に上がれ! デバガメ!」
「あいよぉ。抱え大筒だ!」
指示役の狼人種の冒険者が叫ぶと、彼の仲間が抱えた大きな筒らしきものが火を噴いた。声が聞こえた瞬間、上空に向かって舞い上がった俺の下を、高速で何かが通り過ぎていき、大きくあいたサメの口内に入り込んで着弾。ズボンッと肉が立てたとは思えない轟音が背後から響いてきて、そして遅れて火薬の臭いが上空まで匂ってくる。
「鉄砲、いや。あのサイズだと大砲か? 流石は都会。ああいう最新兵器も持ってる奴が居るんだねぇ」
振り返ると、速度を失った陸ザメが背中に開いた大穴から血をまき散らして地面に向かって落下していくのが見えた。すげぇ威力だな。やっぱ火力は大正義だ。ザンムの技も当たってたら効果的だったんだろうが、やっぱり砲弾がボーリング球じゃなぁ。真っすぐ飛ばないし貫通力も足りないから威力が低くなってしまう。
地面に落ちてきた陸ザメにザンムがキャンプ横に置いてあった伐採した木材の丸太を持って殴りかかると、陸ザメは最後の抵抗かザンムに向かって口から牙を飛ばす。その牙を丸太で叩き落としたザンムに、なおも陸ザメは噛みつこうと落下の衝撃でボロボロになったヒレを動かす。
だが、まぁ。流石にこの状況でそんなに隙だらけな姿をさらされたら、ね。武術家としても冒険者としてもそこを突かないって選択肢はない。
上空から勢いを増して落下し、『打出』で更に加速。出せる最高速度に到達した体の勢いを右拳に乗せて、陸ザメの脳天に打ち込む。さしずめ『打出・拳骨落とし』とでも名付けるかな。俺の打ち付けた拳はズガァン、と轟音を立てて陸ザメの頭蓋を砕き、少しの抵抗感の後にサイズにしては小さい脳を打ち抜く。
飛び出した血と脳しょうを体中で浴びながら少しの残心。陸ザメは大きくビクンビクンと痙攣するのを確認して腕を引き抜き、ぱっと陸ザメから体を話すと、陸ザメはと大きな音を立てて倒れた。
少しの沈黙。大型の魔物に襲われた事実と、それを軽微な被害で討伐した事実。それらが飲み込めた次の瞬間に、キャンプ地にドッと歓声が響き渡る。
「おつかれー。いまのすごかったねー」
「おう。いやー、肝が冷えたわ。外したら地面に激突だもん」
「いよぉ、タロゥ! 今のすごかったなぁ! あとすっげぇ恰好だぜ!」
「あとすっごい臭う!」
喜んで互いに抱き合う学生や、口々に互いを褒めたたえ合う冒険者たち。そして目から光を失った巨大なサメの死体。どこぞのB級映画にでもありそうな光景だな、と前世の事を少し思い出し、思わず苦笑しているとザンムやネネ、それに指示役の冒険者たちから口々に労いの言葉と臭いと声をかけられた。あの、まぁ、そうだな。血だらけだから仕方ないけど、臭いは人に向かって言っちゃいけない言葉なんだぞ???
それと、仕留めた陸ザメだがサメは処理すれば良いラーメンの素材になるからちょっと試したいところだね。放置するとアンモニア臭すっごいけど速めに下処理したらいい食材になる可能性はある。もっともこの陸ザメが食えるかは知らんけど、状況的に食材になるかもしれないなら無駄にすることは出来ないだろう。
船、転覆しちゃってるしな。とりあえず引き上げて見て使えるか確認して、使えなかった時は流石に色々不味いだろう。帰りどうすんだこれ。
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タロゥ(10歳・普人種男)
生力67 (67.0)
信力134 (134.1)UP
知力52 (52.0)
腕力71 (71.0)
速さ70 (70.0)UP
器用60 (60.0)UP
魅力63 (63.0)
幸運36 (36.0)
体力71 (71.0)
技能
市民 レベル4 (81/100)
商人 レベル3 (100/100)ー
狩人 レベル4 (66/100)
調理師 レベル3 (100/100)ー
地図士 レベル3 (100/100)ー
薬師 レベル3 (51/100)
剣士 レベル6 (21/100)UP
木こり レベル2 (70/10)
楽士 レベル3 (51/100)UP
教師 レベル3 (83/100)UP
パチン・コ流戦闘術 レベル6 (100/100)ー
テイマー レベル2 (80/100)
絵師 レベル3 (90/100)
語り部(紙芝居) レベル5 (100/100)ー
水兵 レベル2 (45/100)
執事 レベル3(100/100)ー
乗馬 レベル0(23/100)
スキル
夢想具現 レベル3 (100/100)ー
直感 レベル5 (12/100)UP
パチン・コ流格闘術 レベル6(100/100)ー
パチン・コ流武器術 レベル6(100/100)ー
飛行術 レベル3 (55/100)UP
フォークダンス レベル5(100/100)ー
フォークマスター レベル1 (100/100)ー
念話 レベル2 (72/100)
女たらし レベル6 (81/100)
野獣の眼光 レベル0(21/100)
ネゼ・カルデラ式マナー レベル3 (46/100)
釣り師 レベル4(11/100)
英雄スキル
夢想具現仏恥義理
カルデラ近隣地図
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