第115話 カルデラってねずみがきょーじゅなんだね
神聖歴583年 夏の中月 1日
ズルズルズル
「うむ」
カルデラに来てから数か月がたち、季節はすっかりと真夏になった。港町であるカルデラはサニムと同じく海風が暑気を飛ばしてくれるのだが、やっぱり暑いものは暑い。そんな時には熱さを吹き飛ばすためにスタミナの付くラーメンが良い。
レバーやニラ、更にニンニクマシマシでトッピングされた醤油ベースのピリ辛のスタミナラーメンは食べるだけで汗をかいてしまうが、美味しい上に食べ終わった後は腹の奥から活力が湧いてくる気がする魔法のラーメンだ。元気になりすぎて鼻血が出るかもしれない点だけが難点だな。
しかしラーメンか。そういえばカルデラにもイールィス家が運営するラーメンレストランを出すって話だったな。アレは完全に俺の手から離れてるから話が入ってこないんだが、今はどうなってるんだろう。
もしオープンしたら一回、道場生を連れて食べに行くのもいいかもしれない。ロゼッタが稽古に来た時にでも聞いてみるかな。
「タロゥー。それすっごいにおいだよー」
「お、すまん。ちょっと離れて食べてたんだけどな」
スタミナラーメンを食べ終わった頃に今日も今日とて屋台で買ってきた謎の焼き串を食べるザンムは、羨ましそうにちらっとラーメンの器を見る。すまんがロゼッタからただでラーメンを食べさせるのは衆人の目がある所じゃ止めろって言われてるんだ。
ま、ロゼッタとしては超高級料理って事でラーメンレストランを作ってる所だ。底に俺が周囲にラーメンバラまいたら色々都合が悪いんだろう。まぁ、ザンム一人くらいなら冒険に出た時に一緒に食べるのも良いんだけど。
冒険。冒険か……そうだな。道場も順調だしそろそろいい頃合いかもしれない。冒険者としての活動を再開しよう。好きな時に食べ、好きな時に飲み、そして冒険に出る。これが自由な冒険者って奴の生活だからな!
「ん。うちは問題ない。というかむしろ手伝ってほしい事がある」
ザンムは二つ返事でOK、というかそろそろ食費が無くなってきたから働こうと思ってたらしく、俺が切り出さなければ自分から言い出していたそうだ。春先に倒した賞金首は三等分しても小さな家が買える金額だったんだけどな。どんだけ食費に費やしたんだこの熊。
安パイだと思ってたザンムの残念無念な金銭感覚に戦慄しながら、そういえばネネの奴は演劇狂いで稼いだ金全部貢ぐ奴だったな、と恐る恐る尋ねてみるとこちらはどうもそう言った感じでもなく、堅実に貯蓄を増やしているとの事。
じゃあサニムでのあの演劇狂いっぷりはなんだったのかと思うんだが、推しが変わったからという謎の答えが返ってきた。あんまり金がかからない推しが出来たという事なんだろうが、グッズ販売してない新人に入れ込んでるって事だろうか。地下アイドルに必死に通い詰めてた前世の同僚、元ホストくんを思い出すなぁ。俺があの子を育てるんだって豪語してた彼はある時会社を辞めて本当に地下アイドルのプロデューサーになり、ついにはプロデュースしたアイドルたちで武道館ライブを達成したんだ。
チケットを送ってもらったけど結局いけなかったな。前世の俺、その時中東に居たから。
まぁ、そんなどうでもいい話は置いといて、だ。ネネが手伝ってほしいというのはかなり珍しい。基本的にネネは自分で出来ることは全部自分でやろうとするタイプで、だから俺達に薬草摘みの知識を叩きこんだ後も一緒に薬草摘みに来てたくらいだ。あの仕事は翌年分の薬の備蓄をするために、必要な薬草を大量に背負って森を歩く仕事だ。そのため護衛や荷物持ちが必要になるからネネ一人じゃ出来ないんだ。
「うちの薬学部の教授とクラピエス湖の上流のクラピエス山脈に調査に行くんだけど、護衛の冒険者が中々集まらない」
「あー、報酬が渋いとか?」
「ん。日当は銀貨1枚」
「クラピエス山脈ってーまものがおおいばしょでしょー。やすすぎだよー」
「予算がないのが悪い。倒した魔物は冒険者の取り分にしてもいいんだけど」
魔物が居る地帯に踏み入る冒険者は一人前の冒険者だ。1日に銀貨どころか金貨を稼ぐ連中にそんなはした金を提示しても相手にもされないだろう。ただ、大学の方もある程度の妥協というか、倒した魔物は冒険者の取り分で良いと言ってる辺りなんとか護衛を確保しようとしてるみたいだが。
「んー。ごはんはじばらー?」
「朝夕のパンはこちらで用意する。もっと食べたいときは現地調達。うちの教授はクラピエス山脈のエキスパート、だいたい美味いものは知ってる」
「ならいくー」
「ザンムが良いなら俺も構わない。ネネからの頼みだしな」
グッと親指を立てたネネにグッと親指を立ててザンムが答える。こいつら仲いいな。ちょっと疎外感を感じながらそう返答すると、ネネはグッとガッツポーズをとってバタバタと契約書だの守秘義務だのという書類を持ってきた。ああ、流石にでっかい学校だと部外者にはこういう備えも必要なのか。書類の内容にも変な所はないしそのままサインをしてネネに書類を返すと、ネネは書類をじっと見た後にそれらを持って部屋から出ていった。
それから10分くらいだろうか。廊下の方から足音が聞こえてきたのでネネが返ってきたのかと思っていたら、ガチャリとドアを開けて入ってきたのはまんまるい感じのどでかい鼠が入ってきた。
ぎょっとして思わずパチクリと鼠を見ていると、こちらに視線を向けた鼠は目をぱちぱちと瞬いた後、おもむろに口を開けて話始める。
「やあやあ君たちが今回護衛についてくれる冒険者だね! うん? 随分と若いが素晴らしい信力だ。君、鍛えてるねぇ。私は鍛えてる若人が大好きだ! ちょっと服をはだけてこう、腹に力を入れてくれないかな。おばちゃんはねぇ、若い子の筋肉を見るのが大好きだからねぇ! これでパン三斤はイケるとも!」
「うわー。ねずみがしゃべってるー」
「ああ、なんだい熊人種のぼっちゃん。鼠が喋るのが珍しいかい? そうだねぇ、我々鼠は君たち人種からするとちいちゃくてかわいい小動物だからね。喋ったりするとびっくらぽーんと驚かれることがよくあるんだ。だがね、おばちゃんはこれでも3千年生きた鼠の中の鼠だから喋るし踊るし歌えるんだ。私の踊りを見てみるかい? うちの助手からも評判が良くてだねぇ! あ、うちの助手というのはネネという猫人種のハーフなんだがこの子は結構困ったことにおばちゃんを見ると捕食者の瞳で見つめてくるんだ。たまに養豚場の豚みたいな気分にさせてくれる稀有な助手でねぇ」
「そんな目で見てません。勝手に講義を抜け出さないで下さい先生」
「あーれー」
鼠の言葉に室内に飛び込んできたネネがそう応えて、鼠の首根っこを掴んで引きずっていく。そしてバタン、とドアが閉められ、ドアの向こう側では鼠の悲鳴が聞こえてくる。
数瞬の沈黙の後、ザンムが口を開いた。
「カルデラってねずみがきょーじゅなんだね」
「凄いな、カルデラ」
我が故郷、サニムも色々凄いところはあるけど、流石に鼠に学ぶ学校は持ってねぇよな。多分。
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タロゥ(10歳・普人種男)
生力67 (67.0)UP
信力129 (129.3)UP
知力51 (51.0)
腕力71 (71.0)
速さ68 (68.0)UP
器用58 (58.0)UP
魅力62 (62.0)UP
幸運36 (36.0)
体力71 (71.0)UP
技能
市民 レベル4 (76/100)UP
商人 レベル3 (100/100)ー
狩人 レベル4 (66/100)
調理師 レベル3 (100/100)ー
地図士 レベル3 (100/100)ー
薬師 レベル3 (48/100)
剣士 レベル6 (17/100)UP
木こり レベル2 (70/10)
楽士 レベル3 (48/100)
教師 レベル3 (73/100)UP
パチン・コ流戦闘術 レベル6 (100/100)ー
テイマー レベル2 (78/100)
絵師 レベル3 (90/100)UP
語り部(紙芝居) レベル5 (100/100)ー
水兵 レベル2 (45/100)
執事 レベル3(100/100)ー
乗馬 レベル0(23/100)UP
スキル
夢想具現 レベル3 (100/100)ー
直感 レベル5 (3/100)UP
パチン・コ流格闘術 レベル6(100/100)ー
パチン・コ流武器術 レベル6(100/100)ー
飛行術 レベル3 (31/100)UP
フォークダンス レベル5(100/100)ー
フォークマスター レベル1 (100/100)
念話 レベル2 (72/100)
女たらし レベル6 (56/100)UP
野獣の眼光 レベル0(21/100)
ネゼ・カルデラ式マナー レベル3 (46/100)UP
釣り師 レベル4(3/100)UP
英雄スキル
夢想具現仏恥義理
カルデラ近隣地図
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