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ラーメンが食べたくて 異世界転生ハードモードとんこつ味  作者: ぱちぱち


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第104話 キンタロゥ総督

神聖歴583年 春の中月 1日



 春の始め月が終わり中月がやってきた頃。カルデラのパチン・コ流道場立ち上げの指揮をとっていたコーケンさんがサニムに帰る事になった。



「俺としてはもう少しいてほしかったんですけどね」

「予定としてはもう2,3か月は居るつもりだったけどねぇ。この状況ならもう良いかなって。それに俺も妻と娘の顔が見たいし」



 コーケンさんはそう言って頭を掻く。多分、帰りたい理由の9割が家族だろうな。まぁかわいい盛りの娘さんを置いて半年以上単身赴任してたんだから仕方ないだろう。近いとはいえカルデラとサニム間の船旅は順調にいっても往復1週間以上かかるからな。通常なら。実を言うとこの時間を何とかする方法があるから俺はカルデラ道場の責任者を任されているってのもある。


 ただ、これ使えるタイミングが少しだけ面倒というか。今日、サニムから来る船を待たないと使えなかったんだよね。というよりは使えるけど面倒になると言った方がいいか。


 コーケンさんも面倒ごとを起こす可能性を低くするためにこのタイミングでの帰郷を言い出したんだろうし、止める理由が特にない。強いて言えば頼れる先達を失ってしまうというのが辛いと言えば辛いかな。


 まぁ、最低でも妹が成人するまでの数年間はカルデラの拠点は維持する予定だから、カルデラ道場の発展には尽力するつもりだ。街でも有力な道場の師範代にして冒険者の妹となればそうそう手を出そうとするバカも居ないだろう。という訳でこないだの賞金稼ぎでそこそこの知名度は手に入れたが、今後も冒険者稼業と道場運営は並行して行う必要がある。


 それとはまったく別の仕事も、実を言うとこれから行わないといけないんだがね。


 気が重いが、ラーメンを愛する魂に従ったうえでの約束だから履行しないという選択肢は俺にはない。これで自由に活動できないとかならもちろん断ったし妹をつれて西方諸国に脱走も考えたけど、回数も絞り、場合によっては拒否する権利まで手に入れたのだから仕事として受ける分には否やはない。


 フードを被り、目立つ頭を隠した状態でサニムからやってきた船に向かう。船に入る際に誰何されるが、事前に用意されていた書類を渡すと水兵は最敬礼をした上で俺を船長室まで案内してくれる。



「やぁ、タロゥ。ひと月ぶりかな?」

「それくらいですかね。お元気そうで何よりです、ダリルウさん」



 船長室にはこの船の船長を務める初老の男性とロゼッタの父親、ダリルウ・イールィスが上等なソファに座って待っていた。さて、仕事の時間だな。



夢想具現仏恥義理(ぶっちぎり)



 木刀仏恥義理(ぶっちぎり)を創り出し、柄を握りつぶすと仏恥義理(ぶっちぎり)が光の粒子となって俺の身体に吸収されていく。めきめきと体が大きくなるのを感じながらフードをバサリと脱ぎ捨てる。


 船長さんが感嘆のため息を漏らすのを聞きながらどかり、とソファに深く座ると、ダリルウさんは満足げに頷きを繰り返した。



「タロゥ。いいや。キンタロゥ総督、お久しぶりです」

「おう。問題は?」

「なにも。もうすぐ、ご婚約者様もいらせられます」

「お召し替えはご用意してあります、どうぞこちらに」



 あえて上位者としてのふるまいを行う俺に、ダリルウさんも船長さんもそれを当然のように受け止めた。それもそうだろう。なぜならば今、この瞬間の俺はこの場に居る誰よりも上位者となるのだから。


 サニムの町を支配する5大商家の武。サニム海軍の元締めであるダリルウさんよりも上位の権限を持つもの。サニムの陸・海軍を統べる代表者にしてサニム総督であり、ムリーナスト帝国第二皇女アクエリア・エル・ムリーナストの婚約者。


 キンタロゥ・サニム。それが俺が1年前から演じることになった、もう一人の俺の名前だ。





 サニム総督に相応しい衣服を身に着けた後、ダリルウさんを従えて船から降り立った俺をまばゆいような金色の髪の少女が出迎えた。我が婚約者役であるアクエリア皇女だ。彼女の後ろにはつい先日会ったばかりのロゼッタと、彼女の親友兼護衛兼側近のエメラルダさんがキリっとした表情で控えている。


 一年前。彼女の存在が、俺の周辺に大きな変革をもたらした。ビジネスパートナーだったロゼッタは保留していたカルデラへの留学を本格的に決めて彼女の学友としてカルデラに渡ったし、俺もサニムで要職につくなんて想像もしてなかった事をやらされる羽目になった。


 おっとりとした笑顔が眩しい、一見人畜無害な美少女に見えるが騙されてはいけない。こいつはたまたま英雄スキルなんてとんでもないスキルを発現した俺を使って母方の実家を巻き込んでサニムと協商を結び、その成果でもってムリーナスト帝国の皇位を狙うとんでもない策謀家だからな。


 お陰様でサニムースワトン経由の帝国への貿易収支は圧倒的に伸びてるんだから、ネゼ・カルデラ都市国家連合としても、サニムとしても嬉しい悲鳴を上げてるんだがね。孤児院上がりの俺にダリルウさんみたいな町の支配者が頭を下げても笑っていられるくらいには儲かってるみたいだ。


 まぁ、とはいえキンタロゥとアクエリア様の仲は偽装婚約なんですけどね。多分彼女が首尾よく皇位を掴むか他の兄弟が皇位を掴んだらそのまま偽装結婚になるだろう。俺、というよりはキンタロゥという英雄スキル持ちと縁を持ち続けるのが彼女の立場の補強に繋がるから、この間柄は変わる事はない。キンタロゥさん、大変だな。



「お久しゅうございます、キンタロゥ様」

「おう。壮健そうでなによりだ」

「……それだけ、でございますの?」



 俺のそっけない言葉にアクエリア様がつんっと唇を尖らせてジト目を向けてくる。自らの愛らしさをフルに使った彼女の表情は非常に破壊力があるが、今の俺は仕事中だ。可愛いとか愛らしいとか綺麗だとか、そういう事は理解できる。けれども仕事中だから無視できる。


 そう、仕事だ。俺と彼女の関係はあくまでも仕事。ビジネス。この関係はキンタロゥという存在と縁を持ちたい彼女と、彼女が提示した約束との等価交換なのだ。首尾よく皇位につくことができればラーメンをムリーナスト帝国の国民食として開発するという破格の報酬を提示された以上、彼女の要求を断ることは出来ない。もちろん与えられた役割以上になにかを求められれば拒否できる権利があるからこその約束であるが。


 仕事である以上、相手の求めるものをきちんと提供するのがビジネスマンの心意気だ。俺が求められているものはキンタロゥという存在そのもの。彼女が求めるキンタロゥは英雄スキルという圧倒的な力を持つ武断派の武人を、俺は完ぺきに演じなければならない。


 つまり俺はキンタロゥという名前のホストに徹しなければいけないのだ。



「チッ。わがままな奴だ」

「きゃっ」



 口では憎まれ口を叩きながら、キンタロゥは(あえて)不器用な手つきでアクエリアの肩を掴み、ぐっと抱き寄せる。可愛らしい悲鳴を上げたアクエリアがキンタロゥに体重を預け、キンタロゥとアクエリアの顔が近づいていく。



「…………」

「! …………」



 数秒の口づけ。衆人環視の中のそれに顔を赤く染めるアクエリアに、キンタロゥは得意げな笑みを浮かべて彼女の腰を抱き寄せる。



「いくぞ、アクエリア」

「……も、もう! いきなりすぎますわ、キンタロゥ様!」



 キンタロゥの言葉に抗議の声を上げながら、アクエリアはキンタロゥに体重を預ける。これで傍から見ればどう考えても仲睦まじい年若いカップルにしか見えないだろう。イメージとしてはオラオラ系のホストのつもりだが、アクエリアの反応を見るにこれで正解だろう。前世のキャバクラで鍛えた俺の女心センサーはもう少し押せばイケる! とビンビンに反応していた。


 ちらっと周囲の反応を見ると、頭をガリガリと掻きむしりながら「脳が、脳が壊れる」とうわ言のように呟いているロゼッタ以外は重ね重ね好評な模様だ。ロゼッタは、前にキンタロゥにプロポーズ未遂なんてしてきた前科があるからな。ホストに入れ込んだ女が入れ込んだホストに袖にされたみたいな反応だ。後でフォローしてやらないとな。


 さて、この後はカルデラの自治政府との会談とカルデラ都市内部の視察がある。まぁ、今回の訪問は俺という存在とアクエリアは仲睦まじくて盤石ですよ、とカルデラに周知するためのものだからな。そんなに予定はないからさっさと帰ったことにして、バイクでサニムに帰ろう。



お気に入り・☆評価よろしくお願いします!


タロゥ(10歳・普人種男) 


生力65 (65.0)

信力123 (123.3)

知力49 (49.0)

腕力71 (71.0)

速さ67 (67.0)

器用55  (55.0)

魅力60 (60.0)

幸運36  (36.0)

体力70 (70.0)



技能

市民 レベル4 (63/100)UP

商人 レベル3 (100/100)ー

狩人 レベル4 (66/100)

調理師 レベル3 (100/100)ー

地図士 レベル3 (100/100)ー

薬師  レベル3 (48/100)

剣士 レベル6 (15/100)

木こり レベル2 (70/10

楽士 レベル3 (48/100)

教師 レベル3 (62/100)UP

パチン・コ流戦闘術 レベル6 (84/100)UP

テイマー レベル2 (78/100)

絵師 レベル3 (89/100)

語り部(紙芝居) レベル5 (100/100)ー

水兵 レベル2 (36/100)UP

執事 レベル3(100/100)ー

乗馬 レベル0(15/100)UP



スキル

夢想具現 レベル3 (100/100)ー

直感 レベル4  (81/100)

パチン・コ流格闘術 レベル6(84/100)UP

パチン・コ流武器術 レベル6(84/100)UP

飛行術 レベル3 (11/100)

フォークダンス レベル5(100/100)ー

フォークマスター  レベル1 (100/100)

念話 レベル2 (56/100)

女たらし レベル6 (30/100)UP

サニム流マナー レベル3 (35/100)



英雄スキル

夢想具現仏恥義理(ぶっちぎり)



カルデラ近隣地図

https://kakuyomu.jp/users/patipati123/news/822139845715828802


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