第103話 冒険者パーティー『赤頭《レッドヘッド》』
神聖歴583年 春の始め月 20日
カルデラの傍を流れるクラピエス河の上流に、クラピエス湖という大きな湖がある。対岸が見えないほど巨大な湖であり、近隣の水源の基盤となる場所だ。その湖の湖畔で赤い帽子がひょこひょこと動いている。
「ネネからの合図はまだー?」
「ああ。近くの湖にも嫌な気配はない。今のところ大丈夫そうだ」
湖畔から少し離れた所にある猟師小屋に隠れて、俺とザンムは湖の様子を伺いながらネネを見守る。俺もザンムもどうも存在感って奴が強いらしく、俺たち二人が湖に近づくと周囲の生き物が逃げ出してしまうらしい。サニムの生まれなのに釣りもやったことがない俺達は、今回初手からあまり役に立てないのだ。
そのまま数十分の時が流れ、ネネが持つ釣竿が大きく引き上げられる。どうやらなにか釣れたようだ。そして、そのタイミングで湖の中から強い気配を持つ何かが近づいてきているのが分かった。ザンムに合図を送ると、ネネと繋がっているロープをザンムが力強く引き絞る。
「フニャーーーーーーーッ!!!」
ブオン、と音を立ててザンムに引っ張られたネネが、背後に置かれていたクッション代わりの藁の山に突っ込んだ。そのネネが先ほどまでいた湖畔の地面を、湖から現れた巨大な蛇のような化け物の口が覆いつくす。
人を一飲みしてしまえるほどに巨大な蛇。というよりはもう、あれはウツボか。随分と凶悪な顔のそいつがギロリと自らの攻撃を避けたネネにその丸い眼を向けるが、その眼に俺の木刀、仏恥義理が突き刺さる。おおよそ2m近い長さで巨木の丸太とも見間違うほどの木刀は、眼からウツボの堅い頭蓋に侵入し、そのまま押し広げるように頭蓋を破壊し、ウツボを絶命させた。
「打出、仏恥義理……てか。やっぱり打出こそうちの流派の基礎だなぁ。便利すぎる」
信力の力を一方向に向かわせて勢いをつけて放出する。どの武術でも基礎技術として扱われるものだが、パチン・コ流の場合はこの放出方法にバリエーションがあって面白い。自身が高速で移動する事も出来れば、手持ちの武器を勢いよく打ち出す事も出来るのだ。これが便利な上に強力で、銀でコーティングされた大体2cmほどの丸い鉛球を打出で放出する打出・銀球鉄砲という技がパチン・コ流の代名詞とも言われているほどだ。
パチン・コ流の門下生で街の外での活動が認められている門弟にはこの銀球が支給されており、当然俺とザンムも持っている。まぁ今回のように相手のサイズ的に効果が薄そうな場合は銀球を撃つよりもっと大きなもの。例えば手ごろなサイズの石を打ちだしたりする事もあり、そういった手近なもので代用できる点も踏まえて非常に便利な技だ。
カルデラはサニムと違って魔物の被害が多い。カルデラの門下生にはいの一番に打出を仕込んでおいた方がいいかもしれない。
「おーい、ネネ。大丈夫か?」
「あいててて……大丈夫。どこも痛めてない」
今後の道場の指導方針を考えながら今回、囮役に志願したネネに声をかけると、藁の中からネネが這い出てくる。ぱっと見は藁塗れになっているだけで外傷などもなさそうだ。後はどこか打ち身にでもなってないか、少し様子を見るくらいでいいかな。
「ね、上手くいった? うちタロゥの役に立った?」
「ああ、上手くいったよ。ほら見てくれ。流石は賞金首、凄いデカさだ。こいつをカルデラに運んだら皆驚くぞ」
「わぁ……凄い大きさ。こんな魔物見た事ない」
「ああ。なんだろうなこれ。蛇っていうかウツボみたいだけど淡水魚だろうし。これ運ぶとしたら河伝いに運ぶしかないかな」
「ん。出来るだけそのままの姿で街に運んだ方が、絶対目立つ。こいつに悩まされてた湖の漁師も、きっと船を貸してくれる」
「そうだな。ちょっと交渉してみようか」
こいつには長年、この湖畔の漁師たちを悩まされていたらしく、カルデラの冒険者ギルドではこのでっかいウツボみたいな奴に結構な額の賞金がかかっている。勿論そんな奴だから色んな冒険者がこいつを狙って来たらしいんだが、こいつの面倒な所は魚の癖に非常に頭がキレるため自分より強そうなやつや数の多い相手には絶対に襲い掛からないそうだ。
実際に俺やザンムが一人で釣り人を装っておびき出そうとしたときは絶対に100m以内には寄ってこなかったからな。なんとなく強さを感じとっているのだろう。
まぁ俺やザンムは割と水中でも動けるし、最悪そのまま湖に飛び込んで水中戦を行うか奥の手を切るかと悩んでいた時、ネネがそれなら自分が囮になると言い出したのだ。
最初は反対したんだ。ただ、ネネは絶対に自分がやると言ってきかなかった。しまいには「このくらいしかうちは役に立たない」なんて言い出したからね。キレたよ、俺も。俺の仲間を悪く言う奴は、それが本人の自虐であっても絶対に許せない。そう思ってしまうくらいには俺も、ザンムやネネを大事に思っているんだ。
二度とそんなつまらない事を言うなと。お前も俺の大事な仲間で、頼りにしてるんだとちょっと強めに言ったらネネも聞き分けてくれて、頬を若干赤く染めて「はい」って言ってたからもうこんな事は言わないだろう。ひと悶着後にそれを眺めていたザンムが「さすがだねー」とか言ってたけど、まぁこの程度はパーティーリーダーとしては当然のリーダーシップだろう。
漁師さんとの交渉は非常にスムーズだった。魔物の身体にロープを打ち込んで湖沿いに運んだらこいつに家族を喰われたという漁師さんたちが自ら助力を願い出てくれたのだ。複数の舟を鎖でつないでこいつを運ぶ手伝いをしてくれるそうで、さながら河を泳ぐ蛇のように俺たちはカルデラへの帰路へ着いた。
カルデラは水の都だ。町中に水路が張り巡らされているため、冒険者ギルドへもそのまま水路から乗り付けることが出来る。当然、街中の水路をこんな化け物を乗せて走る舟なんて目立ちに目立った。その舟の先頭に立つ俺とザンムとネネの三人ももちろん注目を集める。この時点で今回の目的はほぼ達成されたようなものだ。
そして、これが最後の一押しとなる。
「パチン・コ流師範代、タロゥ! 冒険者パーティー『赤頭』! 長年クラピエス湖に巣食った『人食い蛇』を俺たちが討伐した!」
冒険者ギルド前の水路に横付けした船から人食い蛇を引き上げ、道路の上に横たえさせる。全長でいえばおそらく20m以上はある長大な怪物に息を呑む聴衆の前で俺が高らかにそう告げると、周囲の観衆たちがワァッと声を上げた。声を張り上げて讃える者もいれば、周囲の誰かと会話する者もいるし、同業者からは妬むような声も聞こえてくる。だが、そのいずれもが俺達の武勲を認めるものだ。
カルデラに来て10日弱。これで一先ずこの地にパチン・コ流の楔を打ち込むことは出来たかな?
お気に入り・☆評価よろしくお願いします!
タロゥ(10歳・普人種男)
生力65 (65.0)
信力123 (123.3)UP
知力49 (49.0)UP
腕力71 (71.0)
速さ67 (67.0)
器用55 (55.0)
魅力60 (60.0)
幸運36 (36.0)
体力70 (70.0)
技能
市民 レベル4 (62/100)UP
商人 レベル3 (100/100)ー
狩人 レベル4 (66/100)
調理師 レベル3 (100/100)ー
地図士 レベル3 (100/100)ー
薬師 レベル3 (48/100)
剣士 レベル6 (15/100)
木こり レベル2 (70/10
楽士 レベル3 (48/100)
教師 レベル3 (60/100)UP
パチン・コ流戦闘術 レベル6 (83/100)UP
テイマー レベル2 (78/100)
絵師 レベル3 (89/100)
語り部(紙芝居) レベル5 (100/100)ー
水兵 レベル2 (36/100)UP
執事 レベル3(100/100)ー
乗馬 レベル0(15/100)UP
スキル
夢想具現 レベル3 (100/100)ー
直感 レベル4 (81/100)
パチン・コ流格闘術 レベル6(83/100)UP
パチン・コ流武器術 レベル6(83/100)UP
飛行術 レベル3 (11/100)
フォークダンス レベル5(100/100)ー
フォークマスター レベル1 (100/100)
念話 レベル2 (56/100)
女たらし レベル6 (21/100)UP
サニム流マナー レベル3 (35/100)UP
英雄スキル
夢想具現仏恥義理
カルデラ近隣地図
https://kakuyomu.jp/users/patipati123/news/822139845715828802




