第102話 この助平の女たらしの極悪非道がァァァ!
神聖歴583年 春の始め月 15日
「サニムのタロウウウウゥゥゥゥァァアアアアアアア!! 出てこんかぁぁぁぁぁ!!」
「この助平の女たらしの極悪非道がァァァ! 大都会の恐ろしさ教えてやるアアアアァァ!」
「俺たちのネネちゃんと高根の華ロゼッタ様を同時にだァ!!!? テメェには死すら生温い!!!」
カルデラにやってきてから数日。ロゼッタに紹介してもらった借家に家財を入れ、一先ずの住環境は整った。借りた家はカルデラの中心地からは少し離れているが倉庫や厩もある大きな屋敷だ。以前はイールィス家と付き合いがあった商家が持っていたもので、ロゼッタの留学に合わせて譲ってもらった物件の一つだそうだ。つまりイールィス家の持ち家な訳で、大きさの割には大分安い値段で借りさせてもらっている。
他の候補の家も似たような条件だったのだが市場からもそれほど離れておらず、また今後の仕事場になる予定の新道場にも近いためここに決めた。職場までの時間は往復1時間以内にしないとね。前世のように始発で出社して終電で帰る生活はもう二度としたくない。人間、1日3時間は寝ないと目がどんどんドぎつくなっていくんだ。仕事先の社員に心配されるようになってからが本番、なんてのは日本だけの常識である。
「サニムのタロゥをぶちのめせ! ハイ!」
「「「サニムのタロゥをぶちのめせ!!!」」」
「サニムのタロゥはいくじなし! ハイ!」
「「「サニムのタロゥはいくじなし!!!」」」
「あ、ライン超えたな。ザンム、適当な奴に実戦を積ませてきてくれ」
「おっけー。タロゥがすけべでおんなたらしなのはホントだけどー。サニムの名前をバカにするやつはゆるせないよねー」
「女たらしは百歩譲って否定しない。でもスケベはちょっとさ。その、俺別にそこまでの事してなくない?」
これだけ広い家を借りたのには幾つか訳がある。一つは俺の今の身分だ。
俺は現在、パチン・コ流の師範代を仰せつかっている。言ってみれば流派の指導者層の一人で、コーケンさんの後を引き継いでカルデラ支部の道場主になったら、俺がカルデラにおいては流派の顔となるのだ。当然、そんな俺があばら家に住んでたらパチン・コ流の悪評に繋がってしまう。あそこのトップはあばら家に住んでる貧乏人だ、なんて噂される道場に通おうとする奴はいないだろ?
俺としては立場なんて重たいものは背負いたくない。ないんだが、今回の件に関しては元々カルデラに拠点を築こうとしていたのと、安定するまでの間である程度したら代わりの道場主を送るというパチン・コ当主との約束がある事。それに妹のためという完全無欠な理由があるため数年間カルデラに住むことを了承したのだ。
そう。妹がカルデラの大学に留学する際、故郷から離れた場所でも安心安全に芸術を学ぶことが出来るように地盤を整える。それが俺に課せられたミッションだ。失敗する事は許されないし俺自身が許さない。すでに妹の為の部屋はアトリエも兼ねる事が出来るように内装工事の段取りも整えてるし妹が通学するために利用する馬車と馬も用意している。まぁ、妹が来るまではうちのパーティーが冒険に行くときに利用するつもりだから維持費も問題ないし今のうちに練習しておけば妹がカルデラに来た時に一緒に馬に乗ってあげたり馬車で送り迎えをしてあげて「お兄ちゃんカッコいい! やっぱり頼りになるのはお兄ちゃん! 大好き!」って言葉を貰ってお兄ちゃんも大好きだよと返事をするという人生の目的にしてもいい実績を解除することが出来るかもしれない。じゃあいつやるの? 今だろ。
まぁ、用意した馬はちょっと諸事情があってまだ背中に跨れてないんだけどね。カルデラに来てすぐに起きたちょっとした騒動で手に入れた馬なんだが、やたらと気難しい奴でまだ背中を許してくれないのだ。真っ黒な馬体の超デカい馬で見た瞬間にコクオーゴーと名付けたんだが、その名前が気に入らなかったのか毎日毎朝こいつとは庭で取っ組み合いを行っている。
まぁ、こいつとの付き合いは長くなりそうだからな。暫く取っ組み合いをして仲良くなっていこう。
「お、静かになったな。誰が行ったんだっけ」
「サニムからいっしょにきたーヴラドさんー」
「鳥人種の人だっけ。足技が凄いんだよなぁ」
なんか吸血鬼になりそうな名前だなと思ったら一族の先祖に魔族の人が居てその人が吸血鬼だったらしい。何なら今も帝国の向こう側の国で元気にしてるそうで船で遊びに行った時に足技を教わったことがあるとか言ってたな。サニムの道場で10年近く学び、つい最近指導員になった人だから今回の新道場立ち上げにも積極的に参加したやる気のある人だ。
そう、大きな家を借りた最後の理由はこれだ。ザンムを含めたサニムから来たパチン・コ流の同門の人の生活支援である。パチン・コ流をカルデラで広めるため、サニムからは10名の指導員とコーケンさんがこっちに来ている。コーケンさんは俺と交代でサニムに帰るから、この10名の衣食住を保証するのは俺になるわけだ。
もちろん手弁当ってわけではない。サニムのパチン・コ当主からは結構な額の支度金を貰ってるから、指導員にはちゃんとお給金を渡している。ただ、この支度金には新道場の建設費用が含まれてるから指導員への給金は最低限にしたとしても1年分くらいにしかならない計算だ。それまでにカルデラの道場を自立できる程度に育て上げないといけないわけだな。
で、それらを踏まえた上で俺は自分が借り上げた屋敷に彼ら指導員を住まわせることにした。これはサニムからわざわざ来てくれた彼らに対する心ばかりの感謝の気持ちもあるが、大きな屋敷に家人が一人しかいないのは良くないってのもある。家は人が住まわないとどんどん劣化していくし、空き部屋が多いのは不用心というのもある。彼らを住まわせるだけでこの屋敷には武の心得を持った警備員が10名いる事になるからね。
あとはある程度カルデラの道場が大きくなるまで彼らの昇給とかも出来ないから、せめて住環境はこっちで用意してあげないと他の道場に取られるかも、という心配もある。コーケンさんならついていくって人も、頭が俺に代わるなら、とサニムに帰っちゃう可能性もあるからね。なんせこっちは最近師範代に昇格したばかりの若造だ。長年指導してくれていたコーケンさんほど信頼されるわけがない。
信頼を積み上げる時間を作るためにも、俺は彼らを厚遇しなければいけないのだ。
「ヴラドさん、お疲れさまでした。すみません、余計な手間を」
「あー、いい! いいよ師範代! パチン・コ流の宿舎前でうちの師範代コケにして無事でいられると思ってるバァカはズタボロにしなきゃ! あ、迷惑料は俺が貰っていいんだっけ」
「はい。それはもう当然の取り分ですから。ただ、ちゃんと役所に報告入れてくださいね」
「もちろんだよ! よっしゃよっしゃ! タロゥ師範代は気前がいい! 俺ね、タロゥ師範代も好きよ! この家も住み心地良いし!」
外からの罵声が聞こえなくなってから数分。返り血だろう血糊を頬に張り付けたヴラドさんがほくほく顔で屋敷の中に戻ってきた。手には何人分かの財布があるから良い感じの収入になったのだろう。泥棒じゃないかって? このカルデラでは他人に喧嘩で負けたら身ぐるみ剝がされても文句は言えないって法律があるから全くの無問題だ。
とんでもない法律に聞こえるかもしれないが、これ意外と治安の維持に効果があるらしい。カルデラが都市国家として独立した際に作られた法律らしいが、この法律が施行されてから街中での喧嘩沙汰が一気に減ったらしいからね。いやでもこれじゃあ喧嘩の強い奴が一方的に得するんじゃないかって?
実はそういう訳でもない。なぜならこの法律で相手の財産を手に入れた場合、どういう理由で喧嘩を起こしたのかを正確に報告しないといけないのだ。で、もしこれで勝った側が少しでも不当な理由だった場合、全額役所が没収するし下手したらその場でしょっ引かれる。相手側の報告と異なった場合は後日再調査が行われここで虚偽を離した方もしょっ引かれ、その上で名前が広場に晒されるためここで嘘を吐いたらまぁとんでもない大恥をかく事にもなるのだ。実際にこれで儲けようとするくらいなら普通に外で魔物を狩ってた方がマシ。今回は相手の家の前で大声で喚くなんて迷惑行為をしてたんだからまぁ問題になる事もないだろう。
またこの法律の範囲は相手が身に着けてるものだけになっている。これは施工して少しした頃、なんとか相手に喧嘩を売らせてボコって相手の財産を没収するって悪党が出てきたから、現在ではちゃんと範囲や金額も決まっているのだ。
ヴラドさんが財布を持ってきてる時点で、今回ボコられた連中はどうやら有り金全部になってしまったようだが。ネネとロゼッタのファンなら大学関係者の筈で当然この法律も知ってる筈なんだが、なんでうちに喧嘩なんて売るかなぁ。しかも一度や二度じゃないんだぞ、コレ。
あいつらのアイドルを街中で抱き上げて走り回っただけでコレなんだからあの二人が彼氏でも捕まえたらどうするつもりなんだろうな、連中。
まぁ良く分からない連中の事はどうでもいい。今はそれよりも差し迫った仕事の準備をしなければいけない。
カルデラ支部の道場主として俺が行うべきはまず立派な支部道場を立てる事だ。今現在はほとんど土台しか存在しないからな。そこに建屋を作ってちゃんとした形の道場を作らなければいけない。これはイールィス家の力を借りられる予定だから、今現在は問題なし。
次にすでにパチン・コ流の門下生になっているカルデラ市民への指導。これは現在と同じく指導員に指導してもらい、上達が早そうな見込みのある子にはたまに指導をしてあげるだけで良いだろう。これも問題なし。
となると、やるべきことは一つ。新しく入ってきた武道家がその地でやるべき最も大事な事を行うべきだろう。
「ザンム、こっちの冒険者ギルドに案内してくれるか」
「いいよー。なにするのー?」
「冒険者がやる事なんて一つしかないだろ?」
俺の言葉にザンムがニヤリ、と最近どんどん凶悪になっていく顔を歪ませる。
冒険。巨大な敵。そしてそれらを突破した末に得られる名誉。
この地にパチン・コ流のタロゥの名を轟かせる。立場に相応しい名声をこの地で得る事こそ、俺がやるべき事だろう。
お気に入り・☆評価よろしくお願いします!
タロゥ(10歳・普人種男)
生力65 (65.0)
信力123 (123.0)UP
知力48 (48.0)
腕力71 (71.0)
速さ67 (67.0)
器用55 (55.0)
魅力60 (60.0)
幸運36 (36.0)
体力70 (70.0)
技能
市民 レベル4 (60/100)UP
商人 レベル3 (100/100)ー
狩人 レベル4 (66/100)
調理師 レベル3 (100/100)ー
地図士 レベル3 (100/100)ー
薬師 レベル3 (48/100)
剣士 レベル6 (15/100)
木こり レベル2 (70/10
楽士 レベル3 (48/100)
教師 レベル3 (58/100)
パチン・コ流戦闘術 レベル6 (80/100)UP
テイマー レベル2 (78/100)UP
絵師 レベル3 (89/100)
語り部(紙芝居) レベル5 (100/100)ー
水兵 レベル2 (35/100)
執事 レベル3(100/100)ー
乗馬 レベル0(12/100)NEW
スキル
夢想具現 レベル3 (100/100)ー
直感 レベル4 (81/100)
パチン・コ流格闘術 レベル6(80/100)UP
パチン・コ流武器術 レベル6(80/100)UP
飛行術 レベル3 (11/100)
フォークダンス レベル5(100/100)ー
フォークマスター レベル1 (100/100)
念話 レベル2 (56/100)
女たらし レベル6 (15/100)UP
サニム流マナー レベル3 (32/100)
英雄スキル
夢想具現仏恥義理
カルデラ近隣地図
https://kakuyomu.jp/users/patipati123/news/822139845715828802




