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あれからライアン様ともたまにおしゃべりをするようになった。
趣味も同じなので話しやすい。
「寝付けないわ…。小説の読みすぎかしら。」
すごく面白い小説を一気に読んでしまったせいか、夜になっても睡魔が訪れない。
あまり良くないとは思いつつ上着を羽織って外に出る。
(少し風にあたるだけ。)
風に当たって頭が冷えたら寝付けるかもしれないという短絡的な考えだ。
「リリー嬢?」
誰もいないと思ったところに声をかけられて驚く。
「ライアン様、どうされたのですか?」
「すみません驚かせてしまいましたね。少し寝付けなくて、月を見ていました。リリー嬢は?」
「私も寝付けなくて。」
一応上着を羽織って出て来てよかった。
「そちらに行っても?」
こくりと頷くとそっとライアン様が近づいて、少し間をあけてとまる。
「こんな時間だと、悪い事をしているような気になってワクワクしますね。」
(小さい頃はよく抜け出して夜の庭を見てたわ。すごく怒られたけど。)
「意外とお転婆なのですね。私もよく月を見に来ます。違う世界に来たみたいな気分になって。」
「わかります!自分だけ別の世界にいるような気がして。」
ふふふと静かに笑い合う。
彼の薄水色の髪が月に照らされて、本当に妖精の使いのように思える。
「姉様に知られたら怒られそうだ。」
「リリアが?こんな時間にお外に出たら危ないわって言われそうです。」
「ふふ、リリー嬢を独り占めするなって怒るんですよ。」
リリアがいつも手紙で私がいかに可愛いかを事細かに報告してくるのだ、と楽しそうに笑う。
「私もライアン様のお話をよく聞いているのでとても身近に感じていました。」
「魔法使いになる!って言って練習を1週間も経たずに辞めた事とか?」
「そうですね、それも聞きました。」
「もっと良いところを報告してくれたらいいのに。姉様らしい。」
「そうですね。リリアと一緒にいるととても楽しいです。」
答え合わせをするように、色んな話をした。
こちらを向いて優しく微笑んでくれる彼の瞳がくすぐったくて心地いい。
ここだけ世界が切り取られたような気がする。
「そろそろ帰らないと、風邪を引いてしまいますね。眠れそうですか?」
「はい。おやすみなさいライアン様。良い夢を。」
「リリー嬢も、良い夢を。おやすみ。」
どこか夢心地でベッドに入って久しぶりに幸せな気持ちで眠りについた。
ライアン様も素敵な夢を見ていると嬉しい。




