17
学園に来てすぐ休みをとってから2日ほど経った。
どうしようもない事を考えて1日が終わる。
(今ならあまり人の居ない時間だし、少し外に出てもいいかもしれないわ。)
思いついたらそれが良いと思えて身だしなみを整えてから外に出る。
ぐぅ。
(!)
控えめに主張したお腹にそういえばご飯も食べずに過ごしてしまったのだと気がついた。
(まだ時間はあるし、食堂でご飯をいただいてからにしましょう。…お腹がなったりしたら恥ずかしいわ。)
寮から食堂に行くのに近道をしようといつもは通らない学園の中庭を通る。
「リリー嬢?」
横から声をかけられて驚く。
「ライアン様!」
「お久しぶりです、学園に入ってからお会いできなかったので嬉しいです。こんな所でどうされたのですか?」
ニコニコと可愛らしい笑顔を向けられて嬉しいと思ってしまう。
制服姿が大人びて見える。
「こんにちは、今日は学園を休んでいたので食堂に行こうかと思ってましたの。制服とてもお似合いです。」
「ありがとうございます、リリー嬢もとても可愛らしいですね。毎日見られる方が羨ましい。食堂に行くのでしたらご一緒してもよろしいですか?」
彼に微笑まれて気落ちしていたのが嘘のように喜びに包まれる。
「はい。」
断る理由もないし、と心の中で言い訳をしながら食堂まで歩いた。
終始笑顔で話しかけてくれる彼に悩みが全て吹き飛んでしまいそうだ。
(久しぶりにお会いしたからか、ライアン様が何倍にも眩しいわ。)
彼の前だと緊張してご飯の味もよく分からなかったがおしゃべりはとても楽しい。
「リリー嬢、お願いがあるのですが聞いてくれますか?」
「はい?」
2人とも食べ終わって食後の紅茶を飲んでいるところに真剣な表情をした彼と目が合う。
「今度一緒に買い物に出かけませんか?女性に好まれるものがよく分からなくて、選んで欲しいのです。」
「えっ。」
彼は、何を言っているんだろう?
女性への贈り物?それを私が選ぶのだろうか?
彼を好ましく思っている私にそれを頼むの?
「リリー嬢?大丈夫ですか?」
急に表情が変わった私に彼が心配そうな顔をする。
胸の奥の方が痛いのに涙も出ない。
最初から女性への贈り物を選んでほしくて話しかけてきたのだろうか?
書店に誘ってくれたのも、場慣れするつもりで?
「お断りします。」
いままでにない程冷たい声が出た。
彼の目を見ながら答えたからか、彼がひどく驚いたような
悲しいような表情に変わったのが分かる。
「そう…ですか。すみません。」
何の為の謝罪だろうか?
他の女性への贈り物を選ばせようとしたこと?
気を持たせて突き放したことを彼は理解しているのだろうか。
逆恨みだと分かっていても
怒りにも等しい感情が暴れていうことをきかない。
優しい彼を傷つけてしまいたくて口を開く。
「ライアン様は初恋の女性がいるのですよね。」
驚いて目を見開く彼に加虐心が刺激されて更に言葉を重ねる。
「どんな女性なのですか?リリアのように綺麗な方?それとも可愛らしくて守りたくなるような年下の方ですか?」
はしたない、と分かりながらも止まらない。
いつのまにか赤くなった彼に苛立ちを覚える。
「最近失恋したばかりで、是非今後の参考にさせて頂きたいのです。男性はどのような方が好みなのでしょうか?
どのような所に惹かれましたの?」
「……一目惚れなのですが、笑った顔がとても可愛らしいと思ったのがきっかけです。
ありきたりですよね、でもその人だけ特別に見えたのです。
話すと更に可愛らしくて上品で、自分も特別に写りたいと考えたりして。」
ふ、と笑いながら彼が続ける。
「他の人と一緒にいると不安になったり、羨ましいと思ったり。
少しでも近づきたくて声をかけてしまうんです。」
そこまで言い切るなんて、私のことなんて最初から少しも意識にないのかと清々しさすらある。
好きな人を想って話す彼の表情を見て考えるより先に言葉がでた。
「好きです、ライアン様。」
「は?」
この瞳が私以外を映して欲しくないと強く思う。
私だけを見てほしい…
「ライアン様をお慕いしています、結婚を考えたお付き合いを考えてくれませんか?」
彼に選んで欲しくて言い募る。
「私ではだめですか?ライアン様。」
「いや、その…ダメではない。私も……リリー嬢のことを好ましく思っている。
私とお付き合いをして頂けますか?」
彼の返答に驚いて見つめ返す。
「ライアン様、初恋の方はよろしいのですか?」
「ああ、そうでしたね。誰に聞いたのですか?姉様?
私の初恋はリリー嬢ですよ。」
「私?ですか?」
「はい、姉様と笑い合うあなたに一目惚れしました。
ふんわりと柔らかい貴方の髪も、つい目を奪われるその瞳も愛おしく思います。
あなたの笑顔を横でずっと見ていたい。
控えめなあなたも、少し大胆になるところも、恋に悩むあなたも好きだ。
つらいことも共に乗り越えていきたい。
あなたの1番そばにいる許可をいただけますか、リリー嬢。」
私の好きな柔らかなグレーの瞳がこちらを見つめる。
瞳が愛おしいものを見るように細められ、彼の言葉が本当なんだと実感がわく。
「はい、私もライアン様の1番近くに居たいです。」




