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ライアン視点
学園の方まで早めに出てきたのに、結局彼女とは一度しか顔を合わせる機会がないままに入園を迎えた。
あまりしつこくしては良くないという気持ちと、彼女に近づきたいという気持ちが合わさってうまく動くことができない。
自分はもっと器用な方だと思っていた。
あの日彼女と一緒にいた男は幼馴染だと調べはついていた。
執拗だと思いながらもどういった関係であるかが気になって調べる以外に選択肢が無かった。
(余裕が全くないな…)
一度近づけたらなんとかなると考えていた、自分の容姿に甘えていたのだと思い知らされる。
(幼馴染とはいえ一度婚約の話も出ていたというのも気にかかる。)
今日は彼女に挨拶だけでも出来たらとわざわざ寮から外に出向いたが、早々にご令嬢達に囲まれてしまった。
「ライアン様、おはようございます。ご一緒に教室まで行きませんか?」
「お久しぶりですライアン様。制服姿も素敵です、同じ学園に通えて嬉しいですわ。」
今は余裕がないのにと思いつつも無碍には出来ない、挨拶を交わしつつ今は急いでいると伝えていると彼女が学園に入ってくるのが見えた。
久しぶりに見る制服の彼女もとても清楚で可愛らしい。
皆同じ服を着ているというのにリリー嬢が着ると違って見えるのは特別に思っているからだろう。
やっと同じ制服を着ることができた。2歳の歳の差をこれほど歯痒く思うとは。
(あまり元気がないような気がする。)
そっと彼女を観察していると足早に過ぎ去ってしまい、やっと会えたのにと気落ちしながらも教室に戻った。
どうやって彼女と接点を持てるかと考えあぐねていると姉様が直接寮まで訪ねてきた。
「リリーのことなんだけど…彼のことが忘れられないみたい。」
泣いていたのだと聞いて苦しくなる、自分ならそんな顔をさせないのに。
そんなに彼が好きなのだろうか?どんな奴なのだろう?
「ライアン顔が怖いわ。
気持ちはとても分かるけどリリーを追い詰めたり怖がらせるのはだめよ。」
「分かってる…」
「綺麗な顔が台無しね、いつも穏やかな顔をしているから余計怖いわ。
正直彼とライアンを比べてもライアンのほうがリリーに合っていると思うのだけれど、こればかりはね。」
「リリー嬢は、…彼と話したの?」
「顔を合わせる事はしていないわ、教室の前で…泣いていたの…」
「そう。」
彼女の気持ちを尊重したいし、守りたい。
ただ他のやつを思って泣いていたという事実は考えていたよりずっと重くのしかかった。
「俺は彼女を泣かせたりしないよ。待ってて姉様。」
彼女の気持ちを何より優先しようと思っていた、でも。
(そんなに泣くほど辛い恋なら、俺が終わらせてもいいじゃないか。)




