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【完結】失恋から始まる恋とその行方  作者: いるるん


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光を感じて意識が浮上する。外から賑やかに鳥の声が聞こえ、陽の光で照らされた部屋の天井を眺めた。


(久しぶりにとてもよく眠れたわ。深く眠れたみたいでとてもすっきりしてる。)


もぞもぞと動いて体制を変えつつ昨日考えついたことをまた引っ張り出してみる。


お守り、占い、魔法のない世界。

新しく知った情報は今まであった当たり前に考えていた日常をひっくり返す破壊力をもっていた。

そこにあって当たり前であるささやかな魔法、誰もがもっているものをさらに違う形で使うという新しい試み。


(一番驚いたのは魔法のない世界だけど。)


行儀悪く寝転がっていたベッドを離れ魔法のノートを取り出す。

思いついた考えを簡単にまとめていった。


魔法は誰にでもあるものではない、とても貴重なものである

癒し魔法が使えない世界ではどういった方法がメインで治療が行われているのか

お守りを作るのはこの国でも可能か、否か


(さすがに占いは無理なのでは、と思うけれどそれも興味深いのよね。)


新しいものをこの国に持ち込むのは簡単ではないが、やってみる価値はあるのではないかと思う。

何より自分自身がとても興味を持ってしまった。


トントン・・

「お嬢様、そろそろ学園の準備のお時間です。」

残りは帰ってからよく考えようと気持ちを切り替えて、身支度を整えてからダイニングに向かう。

随分と学園から遠ざかっていたように感じる。


「おはようリリー、よく眠れたかい?」


「お父様、おはようございます。お久しぶりですわ、今日はとてもよい目覚めでしたの。」


リリアの家から帰って以来会えていなかった父が仕事を一区切りつけて戻ってきてくれていた。

学園が始まるとまた寮生活になってしまうのを考えて顔を出してくれたのだろう。

昔から多忙な父ではあるが、なるべく顔を見に来てくれているのであまり寂しさを感じたことはない。


「前回会った時よりも顔色が良さそうだ。今日から学園だろう、問題はないか?」


「はい、やりたい事も見つけましたの。考えをまとめたら今度のお休みに聞いていただけますか?」


初めての提案に少し驚いたような顔をした父が目を細めて笑う。


「リリーがそのようなことを言うのは初めてだな。予定をあけておこう。」


「あなた、リリーを独占するのはずるいわ。」


美しい母がソワソワとしていたかと思えばそっと近づいてくる気配に幸せを感じる。


「リリー、そのお話しは私もまぜてもらえるのかしら?」


「はい、お母様にも聞いていただけたら心強いです。」


うちはかなり仲の良い家族だと思うし、それをとても嬉しく思っている。

考えを告げたら家族と会う時間も減ってしまうなと思うと心苦しいが新しい事への興味の方が強くあった。


軽めの朝食を済ませて馬車で学園へ向かう。

移動中も考える事は魔法のこと、そしてリリアとライアン様のことだ。

(リリアにはとても助けて貰ったわ。今後の事もリリアには相談したいし。)


学園に着く頃には考えも尽きてきて眠くなるほどリラックス出来ていた。

なんとなくこの道で正しいのではないかという根拠のない自信がある。


「いってらっしゃいませ、お嬢様。」


「ありがとう、いってくるわ。」


学園の門で馬車を降りる。

新入生たちは昨日から学園に入っているはずだ。

運良く居ないだろうなとは思いながらもリリアとライアン様を探してしまう。


目立ちすぎないよう周りを観察していると見知った水色が目に入った。

(ライアン様?リリアを探しに来たのかしら)

偶然にも同じタイミングで外にいたらしいライアン様が見覚えのある上位貴族のご令嬢達に囲まれているのを見つけて胸が痛む。


(早めに諦めないと駄目ね。)

遠くから見るライアン様はいつも通り美しい。

水色の髪色を見てとても好きだなと改めて思う。優しく笑う笑顔を思い出して切ない。

同じ学園の制服を着ているという事実が嬉しい。

彼を見ると色々な想いが溢れてくる。


やはり彼はとても人気のようで、困ったようにご令嬢に応える姿は想定済みのはずだ。


ずっと遠い世界に離されてしまったような気がするけど、元々が近すぎたのだと考え直す。


彼がこちらに視線を向けたような気がしたがとても距離があるので見間違いだろう、自分の教室へ足早に向かう。

すれ違いに何人かの顔見知りと挨拶を軽く交わした。


押し込めていた彼と一緒にいた時間が全て過去のものになっていく気がしてジワリと涙が滲む。

(考えないように、しないと。)

彼は初恋の彼女と話せたのだろうか、この学園にいるご令嬢だろうかと悪い方向に考えがいく。

考えないようにしようと思うと余計に重たいものが体にのしかかるようだ。


「リリー?」


ぼんやりと歩いていても体は覚えているようでしっかりと教室の近くまで来ることが出来ていた。

優しい声色に涙が溢れる。


「リリア…」


「リリー、今日は一緒に寮に帰りましょう。」

優しく抱きしめてくれるリリアにそっと頷いて寮に向かう。

自分がここまで弱いとは思わなかった。朝まではとても気分が良かったのが嘘みたいだ。

新しい事にも挑戦したいと考えていたのに。

(恋をしても苦しいだけだわ…)


つい数週間前と同じようにリリアと寮への道を歩く。

「リリー、無理しなくて大丈夫よ。私はずっとそばにいるから。」


同じ年の彼女に頭を撫でて、涙をハンカチで拭ってもらう。

彼女が居てくれて良かったと心から思う。大切な友人がそばにいてくれる幸せに感謝した。




「彼が忘れられない?」


久しぶりに戻った自分の部屋で2人寄り添いながら話す。

リリアから見たらまだ失恋を引きずっているように見えるだろう。

(まさかライアン様に想いを寄せているなんて言えないわ。)


事実とは違うことを彼女に伝えるのは心苦しいが、ライアン様への想いを口にしてもリリアが苦しむだけだと思う。


「少し思い出してしまって。朝はもう大丈夫だと思えたの、でも…」


「そうよね…まだ日が浅いもの。

無理しなくても大丈夫よ。出席日数も足りているしのんびりするのも悪くないわ。」

ぎゅっと抱きしめて貰うと少し気持ちが和らぐ。

一緒に居ると彼女が少しお姉さんになるのは弟がいるからだろうか。


「リリア、いい匂い。」


「ふふふ、リリーもとてもいい匂いよ。」


彼女と相談して落ち着くまで学園はお休みすることにした。

ライアン様のことを過去にするのは時間がかかりそうだが、あんなに好きだった彼のことも過去になったのだ。

きっと次に進める。


まだ諦めたくないと思う気持ちを無視していたら

いつかこの気持ちもどこかに消えてくれるだろうか。


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