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【完結】失恋から始まる恋とその行方  作者: いるるん


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ライアン視点


彼女を好きになったきっかけは一目惚れだった。

まだ話した事もない相手に好意を抱く事があるだなんて思ってもいなかった。


ふわりと揺れる柔らかそうな髪が目を引いて、姉と楽しげに話す横顔が誰よりも輝いて見える。

派手な容姿ではないのにそれもまた好ましいと感じる。

どんな声の方なのだろう、こちらを見てほしい。

強い気持ちが自分の中にある事に驚きつつも、どうにか彼女と話す機会を得られないかと考えを巡らせた。

(姉様がお気に入りの、フォードウェル子爵家のご令嬢か。)

ご子息がよく、妹がとても可愛いのだと自慢していたのを思い出す。仲のいいご兄弟だったはずだ。


姉からもとても可愛い友人が出来たのだと頻繁に手紙が来ていた。

姉様がそこまで気にいる相手が気になって学園の近くを通ったついでに馬車を乗りつけた。

約束もしていなかったので見つけられたのは偶然だ、まさかこんなに可愛らしい方がいるなんて。




両親の遺伝子が良かったようで容姿に恵まれて育ったせいか、女性から好意を寄せられるのは日常的だったし美しい方だなと思う人と少し出掛けた経験もある。

それでも特別そこに時間を割きたいと思うほどにはなれず、家のためになる婚姻をすればいいかと考えていたのに。


どうしても彼女と仲良くなりたい、何を考えているのか

何が好きで何が苦手なのか


(婚約者か、好いた相手はいるのだろうか。)


心が伴っていないのなら家の力でなんとかなるだろう。

もし想いをよせる相手がいたのなら…


(それでも諦めるつもりも、負けるつもりない。)


可愛らしい彼女の笑った顔に癒されてから早々と家に帰った。


(姉様にお願いしてみよう、きっと喜んで協力してくれるはず。)


手紙を早馬で出してもらう様に頼む。生まれて初めて感じる強い想いに世界が違って見えた。


—————


彼女と一緒に遊びに来られないか、と何度か手紙を出したが

「誘っても遠慮して来てくれないのよ。」と連絡が来るたびに気落ちしていたが、どういうわけか休暇を早めてこちらに向かっているらしい。


(初めて彼女の瞳に映る事ができる。)


女性受けの良い容姿である自覚はあったが、彼女の好みである保証はない。

はやる気持ちを抑えながら家の門が見える窓辺で本を片手に待つ。

持っているだけで内容なんて入ってくるわけがない。

馬車が門まで着くのを確認すると家令の連絡も待たずに庭に向かった。


「自慢の庭師が整えてくれているのよ、すてきでしょ。季節の変わり目が1番すきなの。」


「今もとても華やかで素敵。あとでゆっくり見てまわっても?」


「気に入って頂けて嬉しいです。」


声もとても好みだなと頬が緩むのを抑えながら、優しく見えるように笑顔を作って声をかける。

宝石のように深い色の瞳がこちらを向いた。

少しピンクに染まった頬とそこに散るそばかすが愛らしい。

ふんわりとしたウェーブの髪と品のある所作がどこかの姫君のような神聖さを纏っていた。


惚れた欲目を差し引いても彼女を好ましく思っている人間がいるであろうことは予想がつく。

(早めに距離を縮めたいが。)あまり急ぐと怖がらせてしまう、ゆっくりと私を知ってもらおう。

落ち着くまでは適切な距離をと害のない2歳年下の男らしく振る舞った。

もう少し、もう少し。

はやく自分だけを見てほしい。


両親も仲が睦まじいというよりは、父から母への愛が重そうだと幼少期にも思ったがそういう家系なのかもしれない。


(姉様もリリー嬢に執着しているし、奪い合いになりそうだな。)


————-


やっと落ち着いて2人で話す機会が訪れて、一緒に書店に行く約束を取り付けた。

ライアン様、と彼女の口から聞くたびに嬉しくてうっかり想いを告げないようにと当たり障りのない会話にとどめる。

まだ時間はある、ゆっくりと私を知ってもらえたらいい。


事前に用意しておくように伝えたクローバーのネックレスを手渡すと、喜んで受け取ってくれてホッとする。

身につけるものだと断られてしまうかもと考えて栞にもなるようにデザインしてもらった。

いつか彼女の白い首に自分が着けたい。

声に出すのも憚られる様な想いにまで膨れ上がった恋心が暴走しないように必死だった。

声も、笑顔も、瞬きする仕草すら好ましい。

好きになると全てが愛おしく思えるのだということに気がついてからは想いが止まらない。

月明かりに照らされた彼女は儚い妖精のようで、夢を見ているようだった。

彼女も穏やかな笑顔をよく見せてくれる様になった、このまま距離を縮めたい。


姉様とお揃いのドレスを作ったのだと照れた姿は刺激が強すぎて、上手く褒めることも出来ないひどい有様だった。


(綺麗だが…あまり肩を出すデザインは誰にも見せたくない。)


出来たら自分の色を纏って欲しい、薄いブルーのドレスを着た彼女もきっととても美しい。


—————-


急に実家に帰ると言われた時は焦ったが、それよりも名前を呼んでもらえないことが悲しかった。

強引に距離を詰めてしまったかもしれないと考えた。

無防備そうなのになかなか捕まえられない、一方通行の想いが溢れて心が苦しい。


学園を口実に実家から出ると偶然に彼女を見つけること出来た。

隣に知らない男がいたが。

妙に距離が近く親しげな様子と、何より彼女の雰囲気の違いに驚いた。


いっそ、この男の為に変わったのかと聞いてしまいたかった。

彼女を怖がらせたくないと必死に気持ちを切り替える。

思うように縮まらない距離に気が早る。


(どうして、こんなに大事に思っているのに。)


初めて知る苦しく孤独を抱えるようなもどかしさの中で、それでも彼女に選ばれたいと強く思う。

こんなに苦しいのが恋なのだろうか?


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