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失恋から始まる恋とその行方  作者: いるるん


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ぼんやりする頭でのそのそと起き上がり、侍女に頼んで今日は髪を結い上げて貰った。

「いつもより濃いめにお化粧をしてもらえる?」

鏡越しに何か言いたげな侍女と目が合うが、

「大人っぽくして欲しいの。」と重ねた。


服も背伸びをして体のラインが少し出るタイプを選んだ。

好みのアールグレイにミルクを入れて来客を待つ。


「リリー様、アベル・モルジット子爵令息がお見えです。」

「ありがとう。」

(思っていたより早かったわ。)

などと失礼なことを思いながら玄関ホールに出る。

「久しぶりだねリリー。」

「もっと遅いかと思ったわ、今日は寝坊しなかったのね。」

「リリーにお誘いを受けて寝坊なんかするわけないだろ。そわそわして眠れなかったくらいなのに。」

「ふふ、毎日私と会うと思えば寝坊しなくなりそうね。」

軽口を言いながら身長の伸びた彼を見上げる。

最後に会ったのは1年ほど前だっただろうか、1つ違いで幼馴染のアベルとは小さい頃はよく遊んでいたが学園に入ってからは会う機会も減っていた。


「今日は随分大人っぽくしたんだな。いつも可愛いけど、今日も似合ってる。好きな相手でも出来たのか?」

「そうね、いたかもしれないわ。でも今は他のことに忙しくて、手紙を出したでしょ。」

同じ子爵家のアベルとは婚姻の話しも出ていたらしいが、今は恋愛結婚にも理解を示す貴族が増えてきている。

本人達の望むように、と立ち消えになったと後で聞かされて彼との未来も選択肢にあったのかもしれないと一時期は複雑な思いだった。


(兄と妹のほうがしっくりくるもの。)

体格もよく、気さくで話しやすいアベルはご令嬢になかなか人気があるらしいと聞いている。

その中からきっと未来のお嫁さんになる方が選ばれるのだろう。

「アベルは話しやすいから、相談に乗って欲しいの。とりあえず息抜きにどこかに行って話さない?」

「それなら近くに珍しい紅茶が出るカフェが出来たから行かないか?」

彼より情報に疎くて大丈夫なのかと不安になりつつ珍しい紅茶が美味しかったらお土産に買って帰ろうと考えながらアベルに近づく。

「どうぞ。」

自然にエスコートしてくれるアベルは紳士的だ。

いっそ彼が結婚してくれたらと、考えてしまう。

(愛人がいても気にしないけど、アベルだって想う人がいるかもしれないし)最終手段で無理だろうか?


—————-


新しいカフェは外装が異国風になっていて丸い形のランプが至る所に吊り下がっていて面白い。

「お花があまりないのね。」

「ランプが可愛らしいってご令嬢に評判らしいよ。リリーは花が好きだからね。」

アベルが笑顔を見せると近くの席のご令嬢がざわつく。

がっちりとした体つきになかなかの美丈夫なのだ、羨ましい。

「ランプもとても可愛いわ。色違いのランプも素敵だし。」

「それで、魔法についての相談って?」

「リリアのご実家にお邪魔したお話はしたでしょう。ベルコット様が火魔法を他の用途にも使えないかって考えていらして、私の水魔法も他に使い道が見つかればと思ったの。

アベルは騎士科で高威力の魔法を見る機会もあるから、相談できないかなと思って。」

「魔法の新しい使い道か、」

気難しい顔でブツブツと言いながら悩み始めてしまった。

(どんな悩みでも真剣に考えてくれるからつい頼ってしまうのよね。)

小さい頃からアベルに頼んだら何とかなるかな、と相談する癖がついてしまっている気がする。

「家の書庫の魔法に関連する書物にはひと通り目を通したのだけど、目新しい発見は無かったわ。」

冷めないくちに、と紅茶を口に運ぶ。少し癖のある香りだがしつこくなく好みの味だ。

「新しい発見があるかは分からないが、騎士科に新しく入ったやつが重度の魔法好きでね。いつも研究ばかりしているから体を鍛えるようにって無理に騎士科に入れられたらしいんだ。話だけでも聞いてみる?」

「そんな方がいるの!是非お会いしてみたいわ!」

流石アベル、困った時のアベルだ。


「少し変わったやつだけど、純粋な魔法好きなだけだし。次の休みに都合がつくか話してみるよ。」

アベルが変わっている、と表現するなら相当の変わりものかもしれない。

大抵の事は笑って済ませるのが彼だ。

「ありがとう、お願いするわ。」

「ここはケーキも美味しいって聞いてたんだ、リリーは昔からチョコケーキが好きだよね。」

「モンブランだって好きよ。」

私だって違うケーキも食べる時もあるのだ、たまに。

「あげないぞ。」

「子供じゃないもの。」

「よく欲しいって言われたからな。」

「とっても小さい頃の話でしょう。」

これだから幼馴染は侮れない。


—————


「リリー嬢?」

カフェから出るとここにいるはずのない人の声がした。


「ベルコット様?」

王子様のような彼は人目を集めていて、通りすがる人もチラリと一瞥するほど目立っている。

「なぜこちらに?」

「学園への入学が近いので、必要なものを早めに用意しておこうと思いまして。そちらは?」

「アベル・モルジットと申します。」

アベルが騎士の礼をとる。いつもと雰囲気が変わって大人びて見える。

「ライアン・ベルコットです。とても仲がよろしいように見えますが、リリー嬢の婚約者の方ですか?」

「ベルコット様、」

「リリー嬢、ライアンと。」

「私はこの後予定があるので、お先に失礼致します。」

無理やり会話に割り込んだアベルが、目配せをして帰ってしまう。

間違った気遣いをされている気がする。

「リリー嬢は普段からそのようなドレスを着るのですか?少し大人っぽすぎるような気がします。それとも彼の趣味で?」

「いえ、特には。」

(大人っぽいドレスは似合わないと?私だってたまには綺麗なドレスを着たいわ。)

すごく失礼な態度をとっているのは分かるが、彼もなかなかひどい事を言っているような気がする。


「とりあえずもう少し人通りの少ないところに移動しませんか?」

「はい。」





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