1
(特別な物もなにも持っていないのに、なんで選んで貰えるかもしれないなんて思っていたの?)
飛び抜けて可愛い容姿ではない自覚はあった。
それでもよくお茶会をする友人に
「素敵なドレスね、リリーに似合ってとても可愛らしいわ。」などと言って微笑んでもらえるからそこそこの容姿なんだと勘違いしていた。
分かっていたら期待なんてしなかったのに。
ずっと好きだった彼を思い切って次に参加する予定のパーティーに誘ってみたけれど
「ごめん、エスコートする相手はもう決まってるんだ。」
ちょっと困った様な顔でお断りさせれてしまった。
思い出すと居ても立っても居られなくて消えてしまいたくなる。
たまに目が合うから、期待してしまった。
偶然を装って話しかけると柔らかな笑顔が返ってきて、もしかしてと考えてしまった。
楽しそうに笑う彼の笑顔を見るとドキドキして心が好きだと訴えてくる。
もう自然に話しかけることは出来ないだろう。(寂しい。悔しい。受け入れたくない。)
片思いでも彼が生き甲斐だったのだ。明日からどう生きたらいいのか分からない。
必死に会話を紡いだけれど、なんと言ったのか覚えてもいない。早く1人になりたかった。
一度断られて冷静になると、たまに彼が可愛らしい女の子と話しかけていることにやっと気がついた。
控えめな明るい栗色の髪は天然なのだろう、サラサラで痛みなど見えない。
瑞々しく透き通った肌は何もしていなくても美しく、バランスよく配置されたパーツも一つ一つが洗練されている。
何故あの子がいる世界で自分が選ばれると思ったのかと呆れるほどの容姿に嫉妬すら覚えない。
(ファエト•アリアーナ子爵令嬢、そういえば去年ご入学されたのよね)
初めての恋に夢中で全く意識に入っていなかった。
すごく可愛らしい子が入学したと周りがザワついていた気がする。
「アリアーナ嬢。」
(可愛い方は名前まで可愛らしいのね)
そういえば私のことはあまり名前で呼んではくれなかった。
惨めだ。
嫉妬を通り越してウジウジしている自分がみっともない。消えてしまいたい。
大好きだった、初恋だった。
2年前に初めて会った時から彼の柔らかい雰囲気と、優しい声色、話し方すべてが好きだった。
毎日彼に会えると思うと甘いお菓子も我慢できたし、少しでも綺麗でありたいと密かな努力も辛くなかった。
聡明な彼に少しでも近づきたくて苦手な分野の勉強も頑張った。
(どうして私には何もないのかしら。)
良くないと分かりつつもネガティブな思考の渦に飲み込まれていく。
容姿が駄目なら、魔法。
魔法も全くと言えるほどに才能がない。
魔法は才能だ。私も癒し魔法が使えたらと夢見たことはあった。
結果は水魔法が少し使えるだけ、緊急の際の飲み水に困らなくていいよ、と兄に優しく励まされたのを思い出す。
魔法が駄目なら座学、社交。
座学は必死に勉強して中の上、これを失うと何もないので良い家庭教師の先生をつけてもらって必死に努力している。
社交は貴族令嬢なのに全く向いていないという残念さ加減だ。
どう思われているのかと考えるだけで気分が悪くなってしまって、仲の良い一部の友人とお茶会をするのが精一杯だ。
もう少し前向きに自分中心で考えるといいのよ、と明るく笑う美しい母に似ていないのは何故だろう。
兄は母譲りの美しい外見で既に婚約者と仲睦まじく、寄ってくる令嬢を追い払うのが大変そうだ。
父譲りの読書家、といえば聞こえはいいがただ1人で現実逃避するのが好きなだけである。
いつもは考えないはずの事まで考えてしまう。
「リリー?」
気がつくと友人のリリアが側にいた。
名前が似ているわね、と話しかけてくれたのがきっかけで仲良くなったのだ。
リリアの顔を見ると、力がぬけて目から涙が溢れて止まらなくなった。
何故、どうして。
私も選ばれたかった。
涙と一緒に何もかも流れて消えてしまったらいいのに。
初めて息をするのも苦しくなるほどに泣いた。
好きな気持ちは負けないのに、どうして私じゃなかったんだろう。




