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美少女アバターで召喚獣やってます  作者: バッド
3章 ノアの方舟

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45話 マナと霜の巨人ヨトゥン

 霜の巨人ヨトゥン。元の世界でも強敵の一人だった。魂のみの戦闘は世界を凍てつかせて、永遠に溶けない永久凍土を作ったものだ。


「このヨトゥンを相手にするとは命知らずよ。かかってこい!」


 だが、マナの目の前で氷の剣を振り回し荒ぶる巨人から感じる力は微々たるものだった。


(ラッキーです。どうやら敵も能力の封印を破る事はできない模様。ですが魂の本質は変わらない。食べれば、かなりの力を回復できるでしょう)


 この世界で出会った雑魚の魔物とは魂の格が違う。次元が違うというやつだ。


(能力が封印されても、封印された状態でこの世界の人間モドキは倒せると考えたのでしょう。そして、封印されてもこの世界に来るという危険を許容できるメリットもあったと推測します。して、なにがあるのか楽しみですね)


 この世界なら無敵と言える力を持つ。マナがいなければとの前提条件がつくが。これはチャンスだ。強敵を殺して自分は回復でき、あちらの世界のティターンの戦力を削ぐ事もできる。一石二鳥というやつ。


「ふぬおぉぉぉ!」


『氷殿』


 ヨトゥンが咆哮すると、ヨトゥンを中心に周囲へと冷気が広がっていく。木々は凍りつき邪悪樹すらもその根っこを凍らせて、霜がおりて動きを鈍くする。


 ヨトゥンが自分の得意とする地形へと変えたのだ。突然攻めてきた邪悪樹を警戒して、油断を見せずに用心深く行動したのだ。見かけは鈍そうだが、頭の回転は早い。


「な、なんだありゃ! あんな巨体の化け物が存在するのかよ。どうやって倒せばいいんだ、あんなヤツ!」


 和光がヨトゥンを見て目を剥き恐れを見せて後退りする。他の面々も絶望の顔でオロオロと動揺していた。確かに恐れるのはわかる。それだけの巨体だからだ。アリと象どころではない。小島と惑星くらいの差がある。


「怯むなっ! あれほどの巨体なら、攻撃をかわすのは至難の業。我らの攻撃は当て放題ということだ。ならば、奴の準備が整う前に最大火力で倒すのみ!」


 恐れを見せずに透はヨトゥンへの対応を決めていた。日本刀を上段の構えにすると、全魔力を注ぎ始める。


 空気が震え、日本刀の剣身が光となり伸びていく。その長さは十メートルはあり、巨木のようだが、重さはないようで、苦も無く透は日本刀を持ち続けておる。


「食らうが良い、魔物よ。この世界は我らのものだとしれっ!」


『超越断罪撃』


 脚を魔力で強化すると、透はヨトゥンへと跳躍する。最強と名乗るだけあって、その跳躍により数十メートルは跳び上がり、ヨトゥンの膝に足をつけると、爆発させるかのように足元を突風により弾けさせてヨトゥンの身体を登っていく。


「けっ、たしかにあの図体じゃ俺たちの動きについていけねーか。よし、お前ら、俺達も続くぞ。あれだけの大きさなら素材もたっぷり採れるはずだ!」


 透が登っていく姿を見て、和光が部下に声をかけて、真っ先に後に続く。人を肉盾にしてダンジョンを攻略する卑怯者だと思っていたが、意外なことにやる時はやる男らしい。部下たちも慌てて、ヨトゥンの身体を踏み台に登っていく。その様子から彼らはこの世界でAランクと呼ばれる実力者なのだろうと推測する。


「はァァァ! 我が全てを断罪する!」


 登っていく中で、透が断罪剣を振り回し、ヨトゥンの身体を切り裂いてゆく。ヨトゥンの肉体はオリハルコンのように硬いはずだが、豆腐のようにスパスパと切り裂き、鮮血が周囲へと舞っていく。ヨトゥンは透の攻撃にまったく反応できずに棒立ちだ。


「はっ、本当に木偶の坊じゃねぇか。こりゃ、ラッキーだったな! 勇者の再来とも言われた俺の奥義を受けてみなっ!」


『光輪剣』


 勇者とはなんぞやと思いましたが、和光の使用した技で理解しました。見栄えの良い白金に輝く光の剣を生み出すと、和光は剣を振るう。剣身から光輪が飛んでいき、ヨトゥンの肉体に深く突き刺さる。輪切りにするほどの威力ではないが、それでもそこそこ強力だ。


(見たところ、透さんの『断罪』能力は敵の弱点属性に自動で攻撃を変換する能力。その能力に膨大な魔力を込めて攻撃しているため、最強と呼ばれるだけの火力を生み出しているのでしょう。たしかに便利で強力な固有スキルと言えます)


 炎属性ならば氷の剣に。氷属性ならば、炎の剣に。闇属性であれば光の剣に。全ての攻撃が特効となるのだ。便利極まりない。


 ハンターたちが巨人に群がり、その肉体を切り裂いていく。このまま攻撃を続けていけば勝てる可能性があると期待を持たせる猛攻だ。ハンターたちもそう考えているのだろうか。


 ━━だが、それは間違いだ。ヨトゥンは私たちソウルアバターと幾度となく戦っている。なのに生き残っている。それが意味するところは、ヨトゥンは強い、ということなのだ。


「これでおしまいだぁ~! この葛城透の正義の一撃にて滅びるが良いぞっ!」


 遂に肩まで登った透がトドメとばかりに、ヨトゥンの頭上へと跳躍すると、頭を叩き斬ろうと断罪剣に力を込める。


 振り下ろされた断罪の剣はヨトゥンの頭を唐竹割りにして、半ばまで切り裂いた。


「やったか! この葛城透が巨人を討ち取ったり!」


 勝利を確信し、透が雄叫びを上げる。たしかにヨトゥンの頭は切り裂かれて、皆は絶命したと確信しただろう。巨人は無限の体力を持っているがヴァンパイアのように超回復能力は持っていないからだ。


 ━━だがこの世界の基準では。


 マナの生きる世界では違う。


「ふはははっ、群がる羽虫が。随分と喜ぶではないか。それこそがこの世界の人間たちの限界でもあるが」


 頭を割られて、脳漿を見せているにもかかわらず、二つに割れた頭でヨトゥンは平然と嗤う。その様子に、透も和光も目を剥いて驚きを示す。死んだと思っていた敵が平然としているのだ。驚くのも無理はない。


 無理はないが、それこそがヨトゥンの能力なのだ。


「貴様、さては巨人に見せかけたアンデッドだな! この周囲に広がっているハンターのゾンビ、哀れなる彼らを作りしリッチか? それともアンデッドナイトか?」


 すぐに立ち直った透が厳しい目つきで詰問する。うん、そうですね、死者を操っているのは邪悪樹ですが、ここはヨトゥンということにしておきましょう。というか、明らかに巨人なのに、スケルトンの親玉みたいなリッチとか、鎧を着込んだゾンビのアンデッドナイトは外見からして無理だと思います。


「馬鹿をいえ! こいつ、どう見ても巨人だろ。なにかおかしいぞ、一旦距離を取れ!」


 頭がスカスカな透とは違い、和光はすぐに後ろへと下がる。部下も指示を聞いて後方へと距離を取り始めて、よく鍛えられたハンターたちだ。高ランクのハンターらしく、100メートルは距離を取り、和光たちは陣形を組み直すと、防御結界を展開して、どんな攻撃にも対応できるようにするのだった。未知の敵への対応手段としては中々考えられています。


 対して、透は下がらなかった。再び刀を振りかぶると、断罪を放つべく魔力を収束させていく。 


「恐れるなっ! ハッタリだ、こやつは大ダメージを受けたから時間稼ぎにブラフを仕掛けようとしているのだ」


 たしかに透の判断も正しいパターンがあります。再生に時間のかかる魔物は口八丁でこちらを疑心暗鬼にして時間稼ぎをして再生することもあるのだ。未知の敵に対して、和光も透もその判断は間違っていないと言えるだろう。

 

 彼らが脆弱でなければ。そして敵が魂と魔力のみで構成している肉体を持つ、真の魔物でなければ。


「ふははははは。愚かな人間たちよ。この我は『霜の巨人ヨトゥン』。その名を魂に刻み、我が食べる際のスパイスになるが良い!」


「戯言をっ! この葛城透の最高にして最強の技を受けてみよっ!」


『超越断罪剣』


 再びの透の最強技が炸裂する。エネルギーを収束させて形成した剣身がヨトゥンの裂かれた頭の中へと再度振り下ろされる。


 先程と同じ。であるならば、今度こそ頭だけではなく胴体をも切り裂くはずであった。透は勝利を確信した笑みを浮かべ━━信じられないとばかりに顔を引き攣らせる。


 ━━エネルギーを収束させ、敵の弱点属性となるはずの剣身は止まっていた。敵の肉体を一ミリも傷つけることはできずに、ガリガリと音を立てて表面で止まっていた。


「な、なぜだ!? このぼ、僕の必殺技がっ!?」


 本当は我ではなく、僕と呼ぶのが素の姿なのだろう。透が口元を戦慄かせて叫ぶ。それだけ自身の固有スキルに自信があったのだ。だが、私もヨトゥンもあの程度の固有スキルなど腐る程見てる。


「ふははは、簡単な情報解析を付与して弱点属性にする固有スキルであろう? そんな固有スキルがこのヨトゥンに効くものかよっ。貴様らの力を知るべく、わざと受けてやったのだ」

 

 ヨトゥンが可笑しそうに嗤うがそのとおりです。私たちは反魔法障壁、簡単に言えばセキュリテイを常時自身にかけている。それは探知や呪いをかけられないための常識である。初歩的な情報解析など、そのセキュリテイを突破できるわけがない。そして、固有スキルを封じられた断罪剣は少し威力があるだけのエネルギーブレードでしかないのだ。


「そ、そんな。この僕の断罪が魔物に効かないワケがないっ! うわぁぁっ!」


 現実が理解できないのか、透は狂ったように日本刀を振るが火花が散るだけで、ヨトゥンの身体には傷一つつけることはできていない。


「さて、お前らの力は理解した。誰も彼も我には敵わないということがな。ならば用無しだ、このヨトゥンの『霜の巨人』と呼ばれる力を見せよう」


「おい、お前ら! 最大魔法障壁だ! 敵さん、なにかやるつも━━」


 嫌な予感がしたのだろう。和光は部下へと命じるが、遅すぎる判断である。


『ダイヤモンドダスト』


 ヨトゥンの身体が白く透き通ると、その全身が爆発した。肉体は小指ほどの大きさの石礫と変わり、辺りへと四散する。しかし、その石礫は単なる石礫ではない。触れた物を一瞬で凍らせて、その硬度で打ち砕く恐るべき絶対零度の力を兼ね備えるダイヤモンドであった。


 冷気の霧が爆煙のように辺りへと散らばっていき、覆い尽くす。そうして、冷気の霧が風にて吹き散らされると、その後には地獄が残っていた。


 地面は氷の欠片でびっしりと埋め尽くされて、冷気により温度は零下へと変わっている。聳え立っていた木々はどこにもなく、また透たちの姿もなかった。


 一瞬のうちに凍りつき、破砕されてしまったのだ。彼らは地面に転がる氷の破片と変わっていた。


「ふははは、ヨトゥンの力を見た者は死あるのみ。後には死体すら残らぬわ!」


 ダイヤモンドダストと変わった肉体が集まっていくと、再び肉体へと戻りヨトゥンはカラカラと嗤う。


「ヨトゥン。その正体は最高の硬度を持つ霜の金剛石の集合体。厄介なことに一粒一粒の霜の金剛石に魂を分与しているため、倒そうとしても一粒でも逃せば、復活してしまう高位の魔物ですね」


「むっ!? まだ生き残っておるものがいたのか? 信じられん……貴様、何者だっ!」


 想定外のことにヨトゥンが声を荒らげて、誰何してくるので、冷気の霧の中からマナは出てくると、ふふっと笑う。その姿は幼女からいつもの姿へと戻っていた。


「私の名前はマナ・フラロウス。ここでヨトゥンを倒せるチャンスが来るとは望外の喜びです」


 私はにっこりと微笑み、ヨトゥンと対峙するのであった。

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― 新着の感想 ―
 ヨトゥンの強さは単体の強靭さでは無く“群体”としての不死性にあった(´⊙ω⊙`)一見巨大な体躯の巨人でコレはTRPGの初心者プレイヤー程度の戦闘経験しかなかったなら誤認してしまうのは確実なズルっこさ…
ヨトゥン、透たち取り込んじゃったの? 「う、おぽんぽん痛い」とかならない?
霜の巨人ヨトゥン 本来の力をほぼ封印されているにも関わらず、この世界の最強戦力を歯牙にもかけずに蹴散らす強さ。マナたちは真の力を発揮したヨトゥンとガチで殴り合っていたのですね。 「怪獣サイズの巨人が見…
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