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美少女アバターで召喚獣やってます  作者: バッド
2章 アカデミー

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35/41

35話 鍵音はAクラスとなる

 中期テストは終了した。


 そして、本屋鍵音は最下位クラスから最高のAクラスへと上がった。


 快挙である。紛れもない快挙である。


 成り上がり物の小説や漫画でよくあるパターン。転生者が憑依したり、時間を回帰してきたり、悪役令息が幼女になったり、肝は弱くて苛められっ子だった主人公が突然強くなって、皆に注目されるのだ。


 本屋鍵音はそのパターンに入った。


「おいおい、あいつそんなに強かったのか!?」


「信じられない。不正とかじゃないのよね?」


「あぁ、間違いない。真面目な話だ」


 今、鍵音はアカデミーの体育館にいる。これは中期テストで想定外の成績を出した生徒を表彰するためだ。多くの生徒たちが壇上に立つ生徒を注視して大騒ぎだった。学園長が表彰するのを今か今かと待っている状態です。


「いややゆ、わたわたわた」


『鍵音語訳:いやぁ~、私なにかやっちゃいました?』


 少し照れながら、テンプレセリフを口にして壇上で表彰される本屋鍵音。やんややんやと生徒たちに褒められて、承認欲求メーターがグングンとうなぎのぼりで、成り上がり逆転劇の始まり━━。


 のはずだった。


「中期テストにて、未知のSランク魔物を討伐せし生徒、歴代で個体最高得点を取得した物部守屋、前へ!」


 本屋鍵音ではなかった。表彰されるのは物部守屋でした。


 学園長は病気で伏しているらしく、教頭が表彰をしている。


「ふっ。遂に歴代最高得点を取るなんて、私に相応しい成果を見せてしまったようだな。すまないな、皆。能ある鷹は爪を隠すというやつだ」


 車椅子に座っているので立ってはいなかったが。


「車椅子で失礼する。記憶にないが、私の秘奥『魔力凶化マジカルバーサク』の影響で立つのも難しいのだよ。全治一ヶ月らしい。フフフッ」


「俺っちたちも車椅子っす」


「気づいたら倒れてた。全身筋肉痛」


 取り巻きたちも同様に車椅子だった。どうやら自分の限界を超えた魔法を使った副作用らしい。身体がボロボロになってしまったそうな。しかも記憶にないらしい。


 魔法版『凶化バーサク』も物理版『凶化バーサク』と同じく理性が飛ぶ変わりにパワーアップできるらしいが、あの精密極まる奇跡のような魔法陣結合を理性が飛んだのに使用できるか極めて疑わしい。きっと物部家の秘奥だから教えたくないのだろうと鍵音は予想している。


「くくく。最近蘇我家に押され気味だったが、これは追いつくどころか、追い抜いたかもなぁ?」


 憎まれ口を叩く物部守屋だが、動くのは口だけで身体はピクリとも動かない。なぜにそんな状態で表彰されに来たのかとその自己顕示欲には驚くが、かなりの重傷なのは間違いなさそう。


「物部は勇敢にも鬼たちに殺されそうな生徒たちを守るため、敢然と立ち向かった。しかもSランクの鬼である。そして見事討伐し、特別ボーナスとして個体最高得点一万点を取得した! これはアカデミー創立以来の快挙であり、紛れもなく偉業であると言えよう」


 先生、百点満点で一万点は多すぎだと思います……。


「総合得点一万百点。生徒たちを助けたことも加味して、ここに表彰する。惜しむらくは総合得点では2位だったが、これからも精進して欲しい」


「はーはっは! 物部家が貴族筆頭となるのも時間の問題……ん? 2位?」


 高笑いをする物部守屋だが違和感を感じて、首を傾げる。当然だろう、なにせ鬼のSランクを倒したのだ。トップの得点間違いなし。蘇我家を上回ると予想していたのでしょう。


 疑問顔の物部守屋だが、その疑問は教頭の言葉にてすぐに氷解する。


「総合得点1位は、Aランク鬼将オーガジェネラル138体、Bランク鬼3764体を倒し、514400点を取得した蘇我ルカ率いるパーティーだ! 4人パーティーであったため、4分割し、153600点となるが、これはアカデミー最高の総合得点である! しかも、これら鬼たちは武装して集合しており、モンスタースタンピードの可能性が極めて高かった! 物部が討伐した鬼の王が率いていたのだろう!」


 教頭の言葉にわぁっと歓声が上がる。鍵音自身驚いている。一匹倒すのにも死にそうになったのに、マナは数千匹倒したの!?


 教頭の言葉にアカデミー三大美少女の一人、蘇我ルカが壇上へと他の3人と共にあがるが、微笑みながら手を振る姿はアイドルのようだ。当然だろう、これもまた紛れもなく偉業である。


(というか、百点満点の仕様は? なにこの点数のインフレ?)


 思わず半眼になって、鍵音は残る3人が壇上に上がってくる。名前は知らないが、2人の女子生徒は顔を蒼白にしており、なにか恐ろしいものでも見たかのように魂が抜けたように足取りが覚束ない。


 そして、最後の一人はもちろんマナのはずなのだが━━。


「きゃー! 可愛い! なに、あの子?」


「うわぁ、なでてみたい! こっち向いて〜」


「まるで妖精みたい! 写真撮影は許可されていたっけ?」


 ルカを上回る歓声が上がった。それはマナの絶世の美貌を見れば当たり前だとは思うのですけど……。


「幼女よ、ぱっちりお目々の幼女よ!」


「お手々を振ったわ! 頑張ってお手々を振ってるわ!」


「抱っこしたい。抱っこ権はどこに売ってるの?」


 ポテポテと歩くマナはなぜか幼女になっていた。


 背丈は一メートルにも満たず、青みがかかった艷やかな髪や美しい瞳は変わらないが、サイズが変わっていた。まるでお人形さんのように可愛らしく、小さな手足を懸命に動かして歩くだけで、記念として撮っておきたい可愛さだ。ちんまりとした小柄な身体でふんふんと鼻息荒く、紛れもなく幼女である。


「なんで私のマナが幼女になってるのー!!!」


 歓声の中で、鍵音は叫んじゃうのでした。


          ◇


 表彰は終わって、帰宅した。表彰の内容は幼女マナのインパクトに埋まっておぼろげにしか覚えていない。


『おのれっ! 卑怯だぞ、なんだその点数は!? このテストは百点満点だぞっ!』


『やだぁ〜。物部ちゃんも百点満点なのに、一万点加算されてるじゃん。お互いにマジ頑張ったよね』


『うぉのののれぇぇ! 蘇我ルカ、これで終わったと思うなよ! まだ最初のテストにしかすぎんのだからな、あででで』


『怒ると身体に悪いよぉ。気をつけてね』


 と言った物部守屋と蘇我ルカの言い合いがあったり


『本屋鍵音は見事ソロでの鬼討伐をした! 追加点数を合わせて二百点とする。おめでとう、君は明日からAクラスだ』


『あ、はい』


 と、鍵音も表彰された。本来ならば百点満点で二百点!? とか生徒たちが驚き騒然となるパターンだが、10万点とか一万点とかよくわからない点数を叩き出した人たちがいたために、誰も驚かなかった。というか、影が薄くて誰も気づかなかった可能性が高い。


 世の理不尽さを噛みしめて、ようやく家に帰ったのだが、それよりも何よりも聞きたいことがある!


「マナ! なんで、さっきは幼女になってたの!?」


 ペチペチと畳を叩いて、目の前に座り、お茶を飲むマナへと尋問だ。今のマナは元の美少女召喚獣に戻っているが見過ごせない。ちなみに怪我はマナにすぐに治してもらった。


 倒した鬼の数とか、そういう重要なことを聞かないといけないのだが、鍵音の頭は幼女で一杯になっていた。そう表現すると怪しい性癖の持ち主かと誤解されるかもしれない。


「マスター。今回のテストにて一番注意したのがマスターをお守りすることです」


 お茶のペットボトルをちゃぶ台に置くと、マナが鍵音を見つめてくるので、その青い瞳に少し照れてしまう。


「あ、私の守りを考えてくれたんだ。見捨てられたかと思ってたよ」


 オヤツを掲げて進むルカにフラフラとついて行ったマナに絶望したが、どうやら守ってくれたらしい。


「はい。そのため、私はフェイクソウル、いえ、使い魔をマスターのお側に向かわせることとしました。ただ、今の私は本来の力を出せない状態。なので、節約できる部分をエネルギーとして使い魔を作り出したのです。宇宙の帝王の最終段階みたいな変身と一緒です」


「えっと、マナの体を構成するエネルギーを使って、使い魔を作ったってことかな? それで幼女になったんだ。なるほど、宇宙の帝王も幼女に変身したらスーパー野菜人に勝てたかもです」


 マナの話に納得する。だから幼女になってたんだ。言うなれば、マナ・フラウロス節約モードかな?


「はい。なので、ここで私の使い魔たちを紹介致します。私の誇る3匹です」


 コクリと頷くと、マナの身体が光って、その身体が小さくなっていく。そして3つの光が徐々に獣の姿に変わっていく。


「こ、これは!?」


 鍵音の目の前で、光の中から小さな獣が飛び出てくる。


「大艦巨砲主義はウサギの浪漫。常に正々堂々と敵を最大火力で倒すウサギ。その名もテテうさ!」


 肉球を見せて、ピシリと腕を掲げて可愛くポーズ。つぶらな赤い瞳に白い毛皮のもふもふ溢れる動物、80センチくらいの体躯のウサギだった。


「次はマモの出番まきゅ! 守りは警戒から探知、迎撃までお任せあれ。お酒を片手に大活躍。マーモットのマモまきゅ!」


 テテと同じくらいの茶色の毛皮のでかいリスがコロンと床に寝そべって、自己紹介をしてくる。まったくやる気のないおっさんに見えるけどマーモットであるらしい。


「最後はあたちでつね! 幻から隠蔽、プログラムからクラッキングまで、なんでもござれ。妖狐の千鶴でつ。ピヨピヨでつ」


 最後は狐らしいが……。


「え? 幼女? 妖狐?」


「狐しゃんでつ! ピヨピヨピヨピヨ。ほらね?」


 思わず問い返す鍵音に、パタパタと手を振って、ふんすと胸を張って答えるのは、楽しそうに輝かす瞳にもちもちお肌。髪を二つおさげにしているちっこい巫女服を着た幼女だった。


「妖狐らしさないですよ!?」


「あ、狐の着ぐるみ着りゅの忘れたでつ。んと……これで良い?」


 自身を見て、やっちゃったとほっぺを押さえてテレテレと体をくねらせる幼女は懐から狐耳のヘアバンドをつけて、鍵音を見てくる。


「えっと……うん、狐でした。よく見ると狐でした。コンコンって語尾を使うどころか、ピヨピヨと鳴いてるけど妖狐でした」


 違うと言ったら泣きそうなので、頷く鍵音である。幼女を泣かすことなど、鍵音には無理だった。


「我ら、マナ・フラウロスの使い魔三人称うさ!」


「三人称って使い方合ってるまきゅ?」


「あたち、お菓子ってゆーの食べたいでつ」


 センターで、両手を上に掲げてポーズを取るテテ。たぶん他の2人が左右でポーズを取るのだろうが、マモは床に寝そべってあくびをしてるし、千鶴は両手をパタパタと振って狐の真似をしてるので、まったく息が合ってなかった。というか、それ以前の問題だった。


 パンと柏手を打つと、マナがニコリと微笑む。


「この子たちの固有スキルは『憑依』です。アストラル体となり敵に憑依して操ることを得意とします。なので単体では弱いのですが、『憑依』した相手の力を使えるので、私の力の弱まった今ではコストパフォーマンスの良い配下と言えるでしょう」


「『憑依』? 人を操ることができるの?」


 思い当たることがあるけど、とりあえず確かめておく。もしも予想が当たっていたら謝らないといけない人がいるかもしれないからだ。


「はい。操った者のフルパワーを出させたら、肉体の寿命が100日程減りますが問題ないでしょう」


「へー。それは凄いね。恐怖する新聞かな?」


 思い当たることなかった。気の所為だった。そういうことにした。ふ、フルパワーを出させなければ寿命も減らないらしいし?


「わははは、早く次の任務をしたいうさ! 限界最大火力で戦ううさよ!」


「面倒くさいから最大魔法を使えばいいまきゅね」


「あたちはサボらないから、常に一生懸命でつよ!」


 3人とも、フルパワーでしか戦わないようなセリフだけど思い当たることないから気の所為、気の所為。


「それじゃ三人ともよろしくお願いします。私には憑依禁止でよろしくです」


 なので、3人に笑顔で伝えておくのでした。


 それにAクラスになったのだ。後は危険なこともマナに頼れば良いだろう。他力本願と言うなかれ。召喚獣に頼る主人公はこんなものなんです。


「大丈夫、大丈夫。これからは順風満帆の成り上がりになります」


「それはおめでとうございます、本屋様。そんな本屋様にお嬢様からプレゼントです」


「ひぇぇっ! チシャさん、いつの間に!? あっと、プレゼント? え、手紙?」


 から笑いをする鍵音にいつの間にか隣にいたメイドさんが手紙を差し出してくるので、困惑して受け取る。というか勝手に家に入らないで欲しいよ……。


「えっと……なになに?」


『鍵音ちゃんへ。氷のワンド壊れちゃったね。大丈夫、お友だちだから、無利子、無期限払いで良いよ? だから氷のワンドの弁償として1億5800万円を支払ってください。よろしくお願いします』


「ひ、ひぇ〜〜〜〜〜〜〜! 忘れてたー!」

 

 手紙の内容に絶叫する本屋鍵音であった。


 どうやら成り上がりの道は険しそうな予感がします。


          ◇


「師匠。どうやら見てはいけないものを見てしまったようですね? デッド・オア・アライブって、私は好きな言葉なんです」

ルックスY。マガポケで連載中です。見てみて〜。

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― 新着の感想 ―
 あら〜。使い魔達はどっかで見かけたのばっかり。  これをただのキャラの使い回しと判断するか、他作品世界との繋がりがあると判断するかで悩みますわー。
スターシステムで草
こ、これは、ますます頑張って過去作熟読しないといけないまきゅ。 とりあえず、物部君たち引き立て役ごくろうさん。前話では、ちょっちカッコ良さそうだったのに。
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