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美少女アバターで召喚獣やってます  作者: バッド
2章 アカデミー

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21話 マナはアカデミーに登校する

 鍵音の住むボロアパートに朝っぱらから悲鳴が響いた。


「さ、三百円しかなーい! 昨今の物価高だと、おにぎり一つ買って終わりです! お、お釣りはどうしたんですか? 小銭たくさん貰ったと思うんですが?」


 特に命の危険とかではない。ある意味生命維持に必要な物が失われたので、命の危険と言えば、命の危機だが。


 なにをと言われれば、二百万円の大金が泡と消えて、残ったのは財布に最初から入っていた三百円だけだからだ。財布が温かくなったとホクホク顔で寝た鍵音は起きてびっくりした。ドッキリかと札束を探したが、見つかるのは蕎麦の入っていたと思わしき段ボール箱のみであった。狂乱するのも無理がないと言えよう。


「お釣りは恵まれない者に寄付をという箱がありましたので、全て入れました、マスター」


 そして、マナ・フラウロスはコテンと小首を傾げると無邪気な笑みで、なにか変なことをしましたかと問い返すのであった。だって召喚獣だからね。召喚獣のマナはなにをしたのかわからないのだ。召喚獣って、とっても素敵な立場だと思う。


「ううっ、良い子すぎる! 本当に大悪魔なの? 怒れない、そんなこと言われたら怒れない! ここはあたあたあたまを撫でてあげます。ご褒美だよ」


 なにかを耐えるみたいに顔を引き攣らせて、鍵音はマナの頭へと手を伸ばすと、恐る恐るといった感じで撫でてきた。マナのどんな絹糸よりも滑らかな触り心地に、女の子がしてはいけないトロけた顔となる。どちらのご褒美かわからない。


「ふへぇ……マナの髪っていつまでも触ってられる。良い匂いもして凄いよ、天国で暖かい日差しのもと、なんの悩みもなく日光浴をして昼寝しているような感じがしゅる〜」

 

 頭を撫でていたはずの鍵音は自分の頭をマナに擦り付けて、ウットリとし始めた。このままだと顔面崩壊し、身体が蕩けてスライムになるかもしれない。そして、少し気持ち悪い。


 しかし、一応理性は残っていたのだろう。名残り惜しげにしながら離れると、わたわたと壁際に掛けられているハンガーに吊るされておる制服に着替え始める。


「うぅっ、このまま抱きしめていたいけど、学校があるんです。ほら、マナも着替えてくださいです」


「? 私もですか、マスター?」


 明らかに学校の制服だ。それを召喚獣が着る理由がわからない。ちなみに昨日の服のままだ。


「もちろんです。えぇと、魔力による召喚獣の維持が必要なければ、一緒に連れて行くのが普通です。召喚獣と一緒に登校するとか、夢でした。その夢が今叶いますね! ほ、ほら、私の予備の制服を着てください」


「なるほど。ですが、マスターと背格好が違いますので、特に胸辺りがブカブカになるかと」


 マナのスタイルは黄金比に従った完璧なるものだ。胸周りから腰周り、手足の長さまで美の化身として計算されたスタイルなのである。しかし、鍵音はマナよりも小柄なのに、無駄に胸が大きい。小柄で巨乳なのが本屋鍵音だ。


「たたしかに。むーーー。むぅ~、それなら学校にいる間はダサジャージで」


 迷っているふりをして、その瞳に狡猾さを見せる鍵音に気づく。なんかジャージを着てほしい模様。だけど、マナの美少女っぷりを万人に見せないのは世界の損失だと思うんだ。


「昨日買っていただいた服のうちの一着に着替えますね、マスター」


「ううっ、とっても嫌な予感がします。制服の中に普通の服で通う美少女。日常生活の中の非日常。普段はそれほど価値のないコーヒー牛乳が給食に出てくると、宝石のような価値を持つように。しかもマナは元々宝石のような価値の美少女なのに………守らなきゃ、守らないと………強くならないと!」


 というわけで、活発的なカジュアル系で揃えると、鍵音は不満そうに唇を尖らせながら落胆するのであった。その呟きは聞こえないことにしておきます。というか、そんなくだらないことで強さを求める子なのかな?


           ◇


「マナは学校って、どんなところか知っていますか?」


「はい、マスター。拙いながらも知っております」


 てこてこと学校に向かう途中で鍵音が問いかけてくるが、むふんとサムズアップして微笑み返す。事前にマナの世界の古代文献『彼女レンタルします』『天国先生ぬーぼー』『RiToVEるダークネス』『キャラメイクでルックスYを選んでしまいました』を読んできたからバッチリだ。学生から妖怪、宇宙人、幼女まで、全ての敵を倒せるよ。一般常識は万全といえよう。まぁ、9割は面白い漫画だったからなんだけどね。


 学校への道は多様なる生命に溢れている。アスファルトの道路、鉄筋コンクリートのビルや家屋。こちらの世界の人間には味気ない世界に見えるかもしれない。だが、生命を視覚化できて魂の存在を感知できる俺には、生命の力を全身で感じられる。


 朝の陽射しの中で、多くの人々が行き交う様子は不思議だ。疲れた顔で歩くスーツ姿のおっさんや制服を着て学校に向かう人、マラソンをしている人など、老若男女様々な人たちがいるのだ。


 皆は明日が訪れると信じて疑わない緊張感のない顔だ。魔物との戦争が既に始まっているなどとまるで思ってない。数百年単位で敵が戦略を練っているなど夢にも思っていないのだろう。無理もない、事実マナの世界も三百年経過して、ようやく敵に知性があり、静かに侵略されていることに気づいたのだ。その時には人類は取り返しがつかなかった。


(この世界はまだまだ侵攻のための橋頭堡が築かれている最中。それは敵の強さのレベルから分かる。このレベルならまだ100年は大丈夫かな?)


 本格的に攻めてくるのは生身の肉体に依存せず、魔力構成体で肉体を作った魔物が頻繁に現れ始めてからだ。そして、そいつらは昨日のヘカトンケイルヘイズたちを使い捨てにすることが出来る戦力と個体の強さを持つ。


 昨日のヘカトンケイルヘイズをこの世界の人たちは誰も知らないようであり、なおかつSランク? 聞く限り最強レベルのイレギュラーなモンスターだとか騒いでいた。ということは、まだまだ偵察も初期。人類側が魔物側の思惑に気づいているか? そして、危険な技術を開発していないかをヘカトンケイルヘイズは調査していたのだろう。『魂解放ソウルリリース』を使わないで余裕なことだ。


(でも、ソウルアバターの匂いを嗅いで、慌てて本気になって逃げ出したというところか。雑魚とはいえ、偵察特化の魔物だから、同じ建物に入ったソウルアバターを敏感に察知したんだろうなぁ。まぁ、もう偽装したから感知はされないだろうけど)


 マナ・フラウロスは『情報魔法』の使い手だ。たとえ、その身に宿る力が1%でも、自身の力を隠蔽することなど造作もない。


 数十年単位で余裕があるのならば、ゆっくりとこの世界を調べれば良い。マナは少しだけ緊張を緩めて吐息をつく。


 その様子をなんか真っ赤な顔で鍵音が見つめていた。マナが目を向けると、わたわたと慌て始める不思議少女である。こればかりはよくわからないな。


「ふわぁふわぁ、なんか凄いいろいろ色鉛筆!」


「色鉛筆?」


「ううん! なんでもないです。学校、学校の話ですよね。今から行くのは世界樹帝国学園というハンターのアカデミー。足立区が80年前に魔物のスタンピードで滅亡した後に作られたんです。理由としてはハンター用の学校なので広い敷地が必要となったため。計1000人のマンモス学校だからね。戦闘用のグラウンドとかも必要でしたから」


「あぁ、だからここらへんは家屋が少ないんですね」


 歩いて行くと周囲の様子が変わっていた。高層ビルや家屋が目に見えて少なくなり、森林に囲まれたグラウンドとか、無骨な四角い建物が多くなってきたのだ。話に聞く内容だと、ここらへんは魔物に襲われて更地になったに違いない。


 それに段々と制服を着た少年少女の姿が多くなってきた。皆、登校するのだろう。


「更地にする手間が省けて良いと思います。よく考えられておりますね」


「そう言われると血も涙もない計画に聞こえるんだけど……まぁ、そういうこと。世界樹帝国学園は日本帝国でも最高の学園なんです。そんじょそこらの怪しいハンター専門学校とはレベルが違うんです」


「へぇ〜、そうなんですか。マスターは素晴らしい学園に通って……帝国? 貴族制なのですか?」


 あれ? 古代文献によると日本は民主主義のはず? 王権制度なの?


「ん? 帝国だよ。お国は皇帝陛下のもの。貴族院は華族のみ。参議院は国民投票での選挙制ですけど、参議院は国民の不満を解消するための形式上のものだから……。まぁ、マナには政治のことは関係ないです」


 へぇ~。民主主義ではないのか。まぁ、民主主義も結局は企業が政治家を操って支配していたから、民主主義も貴族制もあまり変わりはないか。


 役に立つかは分からないけど、この国の政治を一応インプットしておく。


「それよりも見て! 世界樹帝国学園がなんで日本最高の学園と呼ばれてるか、それがあの世界樹のお陰なの!」


 胸を張って、得意げに鍵音が前方を指差す。そこには学舎が連なって建っているのがよく見える。


 ━━そして、高層ビルに近い高さの大樹も。一見するとモミの木に見えるが、その大きさが違う。足元には5階建ての学舎が広い敷地に建てられていることから、そのスケールがとんでもなく大きいことがわかる。


「魔物のスタンピード後に残っていたものなんです。あれが周囲の魔力濃度を高めているから、人類は他の地域よりもはるかに訓練の成果が出るんです。皆は哀れなる人類への神様からの贈り物って呼んでます。葉っぱとか枝もポーションや杖などの素材に使えますし、素晴らしい木なんですよ。世界でも世界樹がある国は数ヶ国なんですから!」


 ニコニコと説明をしてくれる鍵音。太陽の日差しを受けて、燦々と育つ世界樹の枝葉は、木漏れ日の元、学舎を優しく包むように聳え立ち、たしかに優しさを感じる植物だった。


「そうなのですか。私も世界樹を見るのは初めてです。素晴らしく壮大な大樹ですね、マスター」


「えへへ、そうですよね? 私も世界樹は神様の贈り物だと思います。私もいつか世界樹の枝を利用した杖を買いたいと思ってます」


「素晴らしい夢だと思いますよ、マスター」


 てれてれと照れる鍵音へ微笑みながら思う。


 ━━━俺の世界では特定外来植物になっているけどね。


これからは基本、4日おきと投稿となります

ルックスYが2025年9月24日より始まります!マガポケでーす!!!でで~ん!

皆読んでいただけると嬉しいです!

お願いします。

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― 新着の感想 ―
民主主義からダンジョン崩壊で帝政になったっぽいので参(加だけはさせてやる)議院かも知れない
参議院と衆議院が逆ですよ。 貴族だけなら貴族院(太平洋戦争後、参議院に)。 民衆から投票によって選ばれるのが衆議院なので。
まぁゲームでもダンジョンや魔王城のドロップ品を何の疑いもなく使っちゃうもんな。 ゲームなら救済措置でもリアルならブービートラップだよな。
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