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あなたの知らない私  作者: 仲村 嘉高
婚約破棄
5/22

04:王宮に着きました




 約束の日。

 私は両親と一緒に王宮の応接室へと向かっていました。

 案内の人が前に立ち、後ろには王宮の警備兵が二人、我が家の護衛が三人付いて来ています。


 兵士五人より、お父様の方が体格が良いのは気付かなかった事にしましょう。

 別にうちのラウタサロ家は武闘派では無いはずなのですが、護衛が護衛にならないと隊長が嘆いていた事は、私の胸の中に仕舞っておきます。


 幸いな事に、私は儚げな見かけのお母様似です。お父様も美丈夫だと褒められる容姿ですが、やはり令嬢としてはお母様似で良かったです。

 因みに中身はお母様の方が遥かに男前です。

 領地内で妻と子供に暴力を奮っていた男がいたのですが、問答無用で身ぐるみを剥いで、遠くの森に捨てさせました。


 そして驚く事に、身ぐるみを剥ぐところまでは、お母様本人がされたそうなのです。

 その時に「こんな粗末なモノしか持ってないくせに、よく今まで男として生きてこられたわね、みっともない」と、その男の心を抉り、踏み付けて物理的にも傷付けたそうです。

 何を踏み付けたのかは、何度聞いても侍女は教えてくれませんでした。



「おぉ! これはタピオラ卿!」

 後ろから声を掛けられ、足を止めました。

 このような日に、よく笑顔で声を掛けてこられたと感心してしまいます。

 しかも王宮内で()呼びですか。

 私と同じ考えのお父様が、にこりともせずに振り返りました。


「これはこれは、シルニオ()()。まさかここで声を掛けられるとは思いませんでしたよ」

 お父様の嫌味に、さすがにシルニオ侯爵の笑顔が引き攣ります。

 そう。シルニオ侯爵一家は、本日、我が家と婚約破棄の話し合いをする為に王宮へ来たのです。


「王家が気を遣って待合室を別に用意してくださっているのに、そのお心遣いを無駄にする行為ですわね」

 お母様は嫌味どころか、完全に攻撃しています。

 さすがです。

 私は我が家の護衛三人に囲まれて、あちらからは姿が見えないようにされました。

 私からも見えませんが。



「い、いやぁ、これから話し合いをするのだし、まだ婚約が解消すると決まったわけでは無いだろう?」

 シルニオ侯爵の声が上擦っているので、先程よりも笑顔が引き攣っているかもしれませんね。見えませんが。


「おい! メルディ! 隠れてないできちんと挨拶しないか!」

 婚約者であるアルマス様に名前()()()()()を呼ばれて、驚きました。

 まさか、10年以上婚約者だったのに、今更名前を間違えられるとは思いませんでした。

 それはうちの両親も同じだったようで、絶句しています。


「メルちゃん、居るのでしょう? おばさんに挨拶してちょうだい」

 シルニオ侯爵夫人が私に顔を出すように言いました。

 お母様の言った事を、微塵も理解していないようです。

 このような方だったかしら?

 そして息子の非礼を詫びない事から、彼女も私の名前を間違えて覚えているようです。


「うちにはメルディなどという娘はおりません。失礼しますわね」

 お母様がスッパリと会話を切り、お父様の腕を取って歩き出しました。

 私も後に続きます。

 私が護衛に囲まれているので、最後は王宮の警備兵が殿(しんがり)になりました。先程までは、身軽に動けるうちの護衛が周りを警戒していたのですが、私を守る事に専念したようです。




「申し訳ありませんでした」

 部屋に入った途端、案内の方に頭を下げられました。それに付随して、警備兵の二人も頭を下げます。

「この時間には既に、サンニッカ家は待合室に居るはずだったのですが……」

 サンニッカ家とは、シルニオ侯爵の家名です。どうやら彼等は遅刻して来たらしいですね。


 (たま)にいるのですよね。

 時間通りに行くと舐められる、と勘違いしている方が。

 遅刻してこそ、高位貴族! など、信用を失うだけですのに。

 しかも今回は王宮で、王家と猊下の立ち会いによる婚約破棄の話し合いです。

 遅刻をすれば、それだけ王家や教会、うちへの心象は悪くなります。

 特に教会は規律に厳しい所です。


 まさか自分達が有責側で、慰謝料を請求される立場だと理解していないのでしょうか?

 まさか、まさかですよね。

 先程も「解消すると決まったわけでは無い」とか、おかしな発言をしていました。

 そもそも解消ではなく、破棄ですよ。




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