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第27話 超巨大竜の覚醒

 クレスト大陸から遥か東方、絶海の孤島にその国はあった。国と言っても人口は3万人程。小さな島国は、漁業や農業を主体とした慎ましやかな文明を築いていた。だが、その穏やかな国は、ここ10日ほど、頻発する地震に悩まされていた。


 今日も小規模な地震が続き、首長パロアルトは押し寄せる市民たちからの質問攻めにあっていた。


「この地震の原因はまだつかめていないのだ。鋭意調査しているからしばし待て」

「そんなこと言って、本当に調べているのか?」

「神殿の司祭が陣頭指揮を執って調べておる」


 こんな島国で地震が頻発すれば、今の時代の人間であれば、まず海底火山などの活動を疑うであろう。だが、この時代の人々にそんな知識は無い。


 それよりもこの国には奇妙な伝説が伝えられていた。曰く、島の地下深く、竜が眠っており、その竜が寝返りを打つと地震が起こるのだと言う。調査に当たるのが、神殿の司祭と言うのも、そうした伝説に基づく行動だった。


 そんな調査で真相などわかるはずも無いのだが、人々はいったん納得して家路に付こうとした。だが、その時、ひときわ大きな地震が襲ってきて、周囲は騒然となる。その揺れがいったん収まったかに思えた時、一人の男が沖合を恐る恐る指さした。


「何だ、あれは?」


 その指さす先、遥か沖合に、そびえ立つ一本の黒い柱があった。いや、それは、本当に柱なのだろうか。どこか生物的にも見える、その柱は、天にも届こうかという巨大さだった。それは暫くゆらゆらと揺れていたが、次にはいきなり海面に倒れこんだ。その勢いで、水しぶきが数百メートルもの高さまで上がる。もはや津波や高潮すら超えるその水しぶきに、人々が唖然とした次の瞬間だった。


 地面がものすごい勢いで持ち上がった。いや、もの凄いと言うレベルでは無い。数秒のうちに数千メートルの高さにまで持ちあがったのだ。その加速Gで、多くの人々や建物が押しつぶされた。生き残った人々も決して無事では済まされなかった。例え、その加速を生き延びたとしても、その次の地面の動きにはとても耐えられなかっただろう。


 大地が身震いしたのだ。まるで犬が濡れた体から水を振り払うかのように。人間などひとたまりも無かった。街どころか地面そのものが引き剥がされ、数千メートル下の海面に叩きつけられた。この島に住んでいた3万の人々が一瞬にして命を失ったのである。


 一方、地面を、街を、人を振り払った島は、本来の姿を現しつつあった。薄皮のような地面の下に隠れていた表面を覆う巨大な鱗は黒曜石の輝き。島の片側から現れたのは長大な首。先に海に倒れた柱は長大な尾。もはや観測する者は誰もいないが、もしも見る人がいたとしたら、信じられただろうか。島の地下に竜がいたのでは無い。島そのものが竜だったなどと。


 頭の先から尾の先まで、全長、実に35キロメートル。空前絶後の超巨大竜、アースガルドがついに目を覚ましたのである。


 アースガルドはその金色の瞳を開くと、遥か西方を見据え、咆哮した。近くに人がいたならば、その音圧だけで圧死したかもしれない、それ程までの大気の暴流。幸か不幸か、周辺全ての人々が死に絶えていたために、新たに犠牲となる人はいなかったけれど。


 その巨大な背がメリメリと音を立てて引きはがれていく。現れたのは、漆黒の6枚の翼。成層圏にも達する巨大な翼をはためかせ、アースガルドが天空に浮上した。目指すは遥か西方、クレスト大陸。セラフィールとの長年の決着をつける。そのために、アースガルドは移動を始めたのだった。



次回は第7章第28話「忘れないで」。

注意! 主要キャラ死亡回となります。そうした展開が苦手な方はご注意ください。

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