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第13話 目指せ、内政無双?

 フェルナシアでの用事を済ませた俺はセリアを残し、レオニードに戻ってきた。帰る前には、フェルナシアの街の人たちとの再会もあった。彼らは、愛する姫様の婚約をわが子のことのごとく喜んでくれ、涙を流してくれる者もいた。セリアの優しさを育んでくれた街の人々には感謝しか無い。


 さて、この後、セリアは結婚に向けて準備を進めることになる。俺の方も準備があるが、こういう事は女性の方がいろいろと大変なのだ。しかも上級貴族同士の結婚。準備に1年前後かかることも珍しくない。それを何とか急がせて、半年後には結婚式を挙げようと考えている。後、半年。待ち望んだセリアとの結婚まで、あと少しだ。






 そう言うことで、レオニードに戻った俺は、カテリナと対面している。セリアがいなくなって、安心して浮気をしている───訳では当然無い。カテリナには俺の留守中に領地内の税制をまとめてもらうようにお願いしていたのだ。目指せ、内政無双である。


 領地経営で重要なのは言うまでも無く税。重税をかければ反乱などが起こるリスクが高まるし、反乱が起こらないまでも領民が他領に逃げて立ち行かなくなる。かと言って、ただ軽くすればいいというものでは無い。大砲など新技術の開発や海軍の整備などに莫大な資金を必要とする。その資金の捻出が必要であった。


「事前にお渡しした報告書には目を通していただいていると思いますが、どうされますか? 一つ一つチェックしていきますか?」

「止めとくよ。全部変えるつもりなんか無い」


 カテリナからは領内で課されている10以上の税について詳細な報告が上がってきていた。正直、前世の知識がある俺からすると、どうかと思えるような税もあったけど、時代背景やら考えると、仕方が無いと思える。やたら複雑な税制なんか持ち込んでも執行できないし。社会が成熟してないのに制度だけ入れてもうまく行かないと言うのは税だって同じだ。


「こないだ串焼き屋の親父と話したこと覚えてる? 街門での物品税と広場への出店料を領主と商業ギルドに二重に払うってことを問題に挙げてたじゃない」

「そうでしたね」

「まず簡単な方からだけど、出店料については領主への支払いは廃止しよう」

「領主への支払いだけですか?」

「ああ、商業ギルドを敵に回すつもりは無い。彼らの既得権を侵すつもりは無いよ」

「でも、税収が減った分はどうするんですか?」

「そこが、次の物品税とも絡んでくるんだけど、売上税を導入するつもりなんだ」

「売上税ですか?」

「そう。街門での物品税も廃止して、街中での売り上げ全てに薄く広く税をかける。重税感無いように税率は相当低く抑える必要あるけどね」

「でも、売り上げの把握はどうするんですか?」

「そこで商業ギルドの出番なんだよ。この街で商売をするには商業ギルドへの登録が不可欠なんだ。彼らに徴税業務を委託する。商業ギルドにとっても領主のお墨付きで商人たちへの監督権限を強化できるし、ウィンウィンの関係だよ」

「なるほど」


 実際にはそうそう簡単では無いだろうから段階的に導入する必要があるだろうけどね。でも、この改革だけはやり切る。街門で少量の物品に高率の税をかけるより、広く低率の税をかけるこの方法の方が、街をまたいだ取引を活性化できるし、結果的に税収は増えるはずなんだ


「それでは数日中に商業ギルドとの打ち合わせをセットします」

「ありがとう、カテリナ。助かるよ」


 てきぱきと仕事を進めていくカテリナを見ながら罪悪感を感じずにはいられない。エーリックからの宿題について、何も解決できていない。そんな不甲斐無さに自己嫌悪を感じてしまうが、グダグダしていても始まらない。考えるべきことはまだまだある。


「もう一つ、塩田についても改革しようと思ってるんだ」

「塩田ですか?」

「そう。塩については、専売制を導入しようと思う」


 視察の時に調べたが、現在の塩田は領主から土地を借りる形で複数の事業者が参入している。開発も無秩序で、買い付けの商人に買い叩かれたり、逆に値段が高騰して領民が困るという事態もあるようだ。


 これを領主直営の専売公社が製造・販売をすることによって、商人に対する価格交渉力を上げ、かつ、価格の変動を抑えることができる。同時に塩の販売はかなりの収入をもたらすだろう。


 とりあえずはこんなところか。内政無双とか意気込んだ割に、しょぼ過ぎてしょうも無いけど。しかし、たとえこれだけであっても、新任の領主が、いきなり制度をいじって、結果が混乱となるのか、税収増となるのか、まだわからない。内政無双の道は遠く、険しい。


次回は第4章第14話「目指せ、現代知識無双?」。お楽しみに。

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