壊れたもの
話は魔人について、これからの方針についてだった。
やはり各地で魔人の脅威があり、マルクエン達には可能であれば、まだ街に居て欲しいと言われた。
それを了承し、四人は仮の宿を案内された。
部屋が空いていなく、四つベッドが置かれている部屋で我慢してくれとの事だ。
四人は部屋のソファや椅子に座っていたが、会話が無い。
「なぁ、ラミッタ」
最初に沈黙を破ったのはマルクエンだった。
「さっきの戦いで、私は冷静さを失うお前を見た。あんな事は私との戦いでも見たことが無い」
「なによ、私だって怒ることぐらいあるわよ」
紅茶を啜りながらラミッタは目も合わさずに言う。
「確か『居場所を奪うやつは許さない』って言っていたな」
「なんでそんな事覚えているのよ。ド変態卑猥野郎」
少し恥ずかしそうに、言葉尻をすぼめてラミッタは言った。
「ラミッタ、私はお前について何も知らないことばかりだ。もし大丈夫なら聞かせて貰えないか? あそこまで怒った理由を」
「私の過去なんて聞いてもつまらないわよ」
「それでも知りたいんだ」
シヘンとケイはそのやり取りを黙って見ていた。
「私の過去、結構複雑よ、話したらお涙頂戴、同情頂戴って感じに聞こえて嫌なんだけど」
そしてまた沈黙。しばらくしてラミッタが話し始める。
「わかったわよ。少しだけ話すわ」
観念したのか、ラミッタは過去を少し語ることにした。
「私ね、赤ん坊の頃、孤児院の前に捨てられていたの。大量の金貨と一緒にね」
「そうだったのか……」
マルクエンは真剣な眼差しでラミッタを見つめる。
「それでさ、私は孤児院で問題児に育ったの。これでも昔から喧嘩は強くて年上の男も泣かしていたわ」
「ラミッタらしいな」
フフッとマルクエンは微笑んだ。
「食事もオモチャも、奪おうとする奴は許さなかった。馬鹿にしてくる奴もね。私は小さい頃から自分を守るために戦っていたわ」
ふうーっとラミッタは息を吐く。
「その内、孤児院の先生にも疎まれて、私は13歳の頃に出ていったわ」
「そこからはいろんな街を放浪してたわ。お金は盗賊や女だからって襲おうとする輩を返り討ちにして奪ったわ」